「結局本局から逃げられたのかよ。警備体制どうなってるんだ？」
「逃げたとは限らないんだよ」
「だけど、捕まえ切れなかったよね」
「その通りだけど、情報は集まってるみたい」
ここは、時空管理局の本局です。
私達は今、本局で、クイン達の襲撃を受けた事にかんする事情聴取を受けた後です。
「すいません、私のせいでこんな事に巻き込んでしまって」
「決断したのは自分の自己責任ですよ、リリィさん。
けど、守るために強くなりたいって思ったのに、やっぱり守られる立場なのは変わってないですね」
「そうですね」
「こんどから、リリィさんも医務部門で検査とかされることになりましたね」
「ええ、そういうお話でした」
「なんか、巻き込んだのはこっちな気もします」
「そんなことはありません。決断したのは自己責任です」
「そう深刻にならなくても大丈夫だよ。管理局だって何もしてないわけじゃないから
そろそろなにか証拠もつかんでる頃だって」
「ヴィヴィオは楽観敵だな。未だに誰一人捕まってないんだぜ」
「逃げ足が速いだけだよ。ヴィヴィオ達で追い返せるなら、なのはママ達ならすぐに逮捕だって」
「だから、なのはおばさんが居ない時を狙ってきてるんだろ」
「不思議ですよね。どうしてなのはおばさんたちが居ない時が分かるんでしょう」
「それは不思議だよね」
「情報漏れしてるんだろ、管理局じゃ良くあることってはやておばさんも言ってたし」
「良くあったら困るんだけど……」
「良くあるからそれだけ監査室が頑張らないとね」
こんな会話をしていると、アコース査察官が通りがかりました。
「通りがかったんじゃなくて、君たちと話をしに来たんだよ。
管理局の情報漏れは良くあることだから、各部局はある程度独立して動けるようになってる。
はやて達も独自の作戦を立てていて、そろそろ決行するそうだからね。
僕は参加しないけど、はやて達は全員参加で意気込んでるよ」
「どんな作戦なんですか」
「それは秘密になってる。っていうか、そういうことをぺらぺらしゃべる所から、
情報漏れは始まるからね」
「それもそうですね」
「でも、期待して待ってていいよ。はやては相当自信があるみたいだから」
「うん、ありがとう、アコースおじちゃん」
「ははは、おじちゃんか、僕もそんな年なんだね。
まあ、はやて達より年上だから当然か。
じゃあ、僕はもう行くからね」
「はい、お疲れ様です、アコースさん」
アコース査察官は、それだけ情報を教えてくれると、立ち去っていきました。
はやておねえちゃんの作戦発動なら、ヴィヴィオ達はそれなりに安心していいのかもしれません。
「こんどはおとり作戦なんて言わないんだろうな」
「それは分からないよ、おとり作戦が失敗してるから、二度はやらないと思うんだけど」
「だと……」
「こんにちは」
「あ、はやてお姉ちゃんこんにちは」
「こんどもすまんなあ、なんか、いつも危険があるのはヴィヴィオ達や」
「済まないのははやてお姉ちゃんじゃなくて、襲ってくる相手だよ。
それに、アコース査察官から聞いたんだよ。
もうじき事件が終わるんだって」
「あはは、耳が早いなあ。けど、これで事件が終わるかどうかはわからへん。
分かってるのは、解決への糸口がつかめそう、いうことや」
「頑張ってね、はやてお姉ちゃん」
「その件やけどな、私らがいない時に、また襲撃を受けたらかなわんから
ヴィヴィオや冬美ちゃん、リリィさんに、月光ちゃんも、一緒にクラウディアで
待機していて欲しいんよ」
「それはかまわないですけど、そんなに危険なんですか」
「現に危険やったやないか、冬美ちゃん」
「それもそうですね」
「無限書庫のお仕事は大丈夫なんでしょうか」
「それなら他にも司書さんがいるから肩代わりしてくれる。
ユーノくんも引き受けてくれた」
「それなら安心です」
「それで、どんな作戦なんです」
「それはまだ秘密、けど、細工は隆々仕上げをごろうじろや。
こんどこそあいつらに一泡吹かせるで」
「秘密なら仕方ないですね。でも、本局でなにかするわけじゃないんですよね」
「そっちはアコース査察官に任せてる。
私らは、本局の外担当なんよ」
「やっぱり、本局の中も調べる必要があるんですね」
「やっぱり、っていう所を見ると、月光ちゃんも本局になにかありそうだとは思うてたんやな。
その通りや。この作戦と平行して、情報漏れを封じなあかん。
もっとも、ヴァンデイン派のメンバーは大体の見当はついてるからな」
「じゃあ、作戦もそこですか」
「秘密や、かまかけられてもしゃべらへんよ」
「それで、出港はいつなの、はやてお姉ちゃん」
「今からや。なのはちゃんフェイトちゃんが、みんなの準備はしてくれてる。
あとは、クラウディアに乗るだけや」
「分かったよ、はやてお姉ちゃん」
というわけで、私達はクラウディアに乗り込むことになりました。
はやてお姉ちゃんの説明では、ヴィヴィオ達は単に保護のために
クラウディアに乗ってるだけで、何かをしなきゃならないわけじゃないそうです。
仕事はお勉強だけです。っていうか、通信教育も無線封鎖で受けられないので
清祥小学校の勉強に遅れないためには、自分で勉強しなければなりません。
「あー、なんか授業聞いてるよりかったりー」
「冬美ちゃん。そんなにぼやくものじゃないよ」
「みんなのために働きたい、っていっても、むしろ私達が何かすると邪魔になりそうですし
ここでお勉強してるのが一番かも」
「ゲッコウが言うのもあってるんだけど、体動かしてないとどうしてもなまるからな」
「お勉強が終わったらお菓子作り〜」
「桃子おばさんとも連絡禁止だぞ」
「独習だよ」
「厨房貸してくれるのか？」
「わかんない、はやてお姉ちゃんの説明では、２，３日はかかるから、貸してくれるようにお願いしてみようかな」
「作戦って、なんなんでしょうか」
「わかんないけど、はやてお姉ちゃんが自信をもってるんだから、なにかすごいことなんだよ」
「一網打尽に全部解決するといいんだけどな」
「それは無理だと思うよ」
「無理か……あー、一時は海鳴市に帰れたのになあ」
「襲ってくる馬鹿が悪いんだよ」
「分かってるって」
そんなこんなで、クラウディアは次元の海を航行していきます。
管理局の逆襲だってはやてお姉ちゃんは言ってましたけど
どんな逆襲なんでしょう。
ヴィヴィオ達は、どのみち待機でしょうけど。