「リアクトしたか、想定外だぜ」
「想定外はこっちもだ。リアクトしたらどうなるかもわかんねーしな。
けど、そっちがリアクトして強くなるんなら、こっちだってリアクトしたら強くはなるだろうさ」
「どうせ融合型リアクトプラグだ、すぐに調子よく合わせられるとはいかないだろうぜ。
短期決戦で片付けてやる」
「出来るものならやってみろ」
冬美ちゃんは強気に出ます。
リアクトする前から虚勢を張ってた冬美ちゃんです。
どこまでが自信で、どこからが虚勢なのかヴィヴィオには判断が出来ません。
「来いよクイン、短期決戦なんだろ」
「言われなくても」
クインは、刀を逆向きに……つまり、峰打ちから切れる方向へと向け直します。
もしかしたら、冬美ちゃんは危ないのかもしれません。
「本気でくるか、そうでなくちゃな」
「ほざけ！」
金属音が響きます。
「受けた？」
「こんどは見えたぜ。そっちの太刀筋」
「まぐれを威張るんじゃねえ」
「まぐれじゃねえところを見せてやるよ」
冬美ちゃんは突っ込んでいきます。
クインはそれを刀で迎え撃とうとします。
金属を打ち合わせる音が再び響きます。
冬美ちゃんはそのまま突っ込んでいきます。
クインはこれを見て間合いを開こうとします。
「下がるより、前に出る方が早いんだよ！」
確かに、前に出る方が早いのは間違いありません。
そのまま冬美ちゃんはクインを殴ります。
「くっ」
「刀に頼ってる分、格闘は苦手とみたぜ」
「なめるな！」
クインも冬美ちゃんに殴りかかりますが、殴り合いなら冬美ちゃんに一日の長があります。
冬美ちゃんは川崎流格闘術の師範代です。
そうそう殴り合いで遅れはとりません。
「ちぃ……」
「どうした、さっきまでの威勢はどこへ消えた」
殴り合いは、クインが一方的な防戦を行う形へと変わりました。
冬美ちゃんはあくまで離れて殴ろうとします。
しかし、クインも完全なサンドバッグ状態ではありません。
冬美ちゃんの攻撃をガードはしています。
「殴り疲れるのを待つつもりか？」
「やかましい」
クインの言葉に元気がありません。
リアクトした冬美ちゃんに、クインはだるま状態なのかもしれません。
「そろそろ決めるかな」
「出来るものならやってみろ、前みたいには……」
「前みたいにやるつもりはねえよ」
冬美ちゃんは足払いを掛けますが、クインはそれを予測していたかのようにかわします。
「！」
「いけぇ！」
クインはそのタイミングで刀に手を掛けます。
足払いを仕掛けた分、冬美ちゃんの踏み込みは遅れます。
距離が近すぎて、ヴィヴィオは射撃で援護するわけには……
『我が主、新手です』
「新手？」
クインは冬美ちゃんの踏み込みを横っ飛びにかわすと壁を切りつけます。
崩れた壁から銃弾がヴィヴィオに襲いかかります。
『ラウンドシールド』
シールドで銃弾をそらせます。
今、閲覧室に残ってるのはヴィヴィオと月光ちゃん、そして冬美ちゃんとクインだけなので
銃弾を閲覧室の中にそらしても、被害者が出る心配はありません。
「クイン、何やってる」
「リアクトされた、けど、待ってろよ、クイン様が今あいつらを捕まえる」
「無茶言うな、リアクトした感染者相手じゃ分が悪い。
待避するぞ」
「逃げられると思ってるの。っていうか、あなただれ」
「名乗る……」
「マリーヤ、援護しろ」
「マリーヤって言うんだ」
「まあな、……って、クイン、おまえアホか！ 名前がばれたじゃないか」
「どうせクインって名前からあたしらのことはいずればれる。
早いか遅いかの違いだけだ。
それより援護しろ、こんどはうまくやる」
「分かった、ここで決めるか」
そう言うと、クインは冬美ちゃんに抱きつこうとします。
冬美ちゃんはとっさにそれをかわします。
次の瞬間、クインとマリーヤの姿は消えてしまいました。
「え？」
「何が起きたんだ？」
『私にも分かりません。魔法力は感じませんでした』
「……けど、管理局の中にあいつらがいるのは事実だよ。
すぐに警報を出してもらわないと」
『分かりました、我が主』
管理局本局に警報が鳴り響きます。
無限書庫は管理局本局の心臓部、そこを襲撃されたとなると
大事なんです。
「まあ、逃げられんだろうな」
「うん、冬美ちゃん、私もそう思うよ」
「だけど、マリーヤもクインも逃げる算段はしてたみたいだよ。
こうなることも想定してたんじゃないかな」
「じゃ、どうやって逃げるんだよゲッコウ」
「それは分からないけど……」
とにかく、クインとマリーヤを捕まえることが出来れば、クライアントについても分かるでしょう。
捕まえることが出来れば、ですけど、管理局本局で総動員がかかれば大丈夫。
ヴィヴィオはそう思ってたんです。