私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。
今、私達は冬美ちゃん月光ちゃんと一緒に海鳴市の警察署で事情聴取を受けてる最中です。
刀を持った危ないお姉さんに襲われた時の話をしてる最中です。
警察官さんは、謎の止血とか、危ないお姉さん〜クインって名乗ってました〜が
どこへ消えてしまったのかに興味があるようです。
ヴィヴィオはどこまで話していいのか分かりません。
魔法について警察官さんに言っても信じてもらえないでしょうし
クインが消えたのは、魔法とも言いがたい気がするんです。
「それで、刀を持った相手につっこんで行ったのか」
「ああ、そうだよ」
「逃げようと思わなかったのかい？」
「逃げ切れる気がしなかったから」
今は、冬美ちゃんと警察官さんが会話してます。
警察官さんも調書を作らないといけないので、根掘り葉掘り聞いてきます。
「それで、金属音がしたっていうけど……」
「気のせいじゃないですかね」
さすがに、冬美ちゃんもディバイダーの事について話す気にはなれないようです。
第一、そんなものが体の一部だなんてこと、信じてもらえるはずがありません。
「そうか……まあいい、それについてはまた別の話として
どうやって止血したのかね」
「一応、格闘については心得がありますから」
「それじゃ説明にならないだろう」
「動脈を切られたわけじゃないんで」
「それも説明になってないな」
「失礼します」
「あ、なのはママだ」
「失礼ですが、どちらさんですか」
「私、こちらの高町ヴィヴィオの母親で、高町なのはって言います」
「保護者の方ですか。ですが、今は見ての通り事情聴取の最中なので……」
「そのことで、少しお話があるんですが」
「どんな話でしょう」
「単刀直入に申しますが、時空管理局について聞いたことはないでしょうか」
「海鳴市勤務になった時におおざっぱには。
異世界の警察機構ですよね」
「ええ、おおざっぱにはそんな感じです。
異世界の人が海鳴市に来ることがあるので
時空管理局とこちらの警察の方とはつながりがあるんです」
「それと、今度の事件とどんな関係があるんですか」
「事件を起こした相手が、異世界の住人だということです」
「異世界の住人？」
「ええ、そうです」
「なぜそんなことが分かるんですか」
「申し遅れました。私、時空管理局で戦技教導官をやってます。
それで、異世界の住人の事についても、知ってますから」
「戦技教導官？」
「おおまかにいうと、格闘技の講師ですね」
「ああ、そういうお仕事ですか」
「ええ、そうです。それで、この件については、時空管理局の方で
詳しく調べたいとおもうのですが」
「ですが、事件が起きたのは海鳴市です」
「分かってます。ですが、申し上げにくいのですが
魔法を使ってくる相手には、管理局の局員でないと、対処が難しいのではないかと」
「魔法？ そんなものがあるんですか」
「ええ、あります。詳しくは説明する時間がありませんけど」
「にわかには信じがたい話ですね」
「ですが、事実です。ありのままを調書には書いて下さい」
「ありのままって言われても……」
「これも言いにくいことなんですけど、署長さんでしたら、魔法についても
ある程度詳しいお話をきいておられるので、ありのままを書いても
分かってもらえると思います」
「分かりました。一応聞いてみましょう」
内線電話で警察官さんは事情を聞いて居るみたいです。
けど、本当にここの署長さんが魔法のこととかについて知ってるのでしょうか。
「……いま、署長に話を聞いた。
魔法については事実みたいだから、そのまま調書を作れば良い、ということだ。
だったら、ありのままに書いておこう」
「お願いします」
魔法で止血したこととか、クインが消えたこととかは
全部魔法的力ということで書いてくれました。
金属音については話せることではないので、黙っておきましたけど。
「では、内容を読んで間違いがなければ署名を」
「分かりました」
ヴィヴィオ達が調書に署名して話は終わりです。
「では、失礼します」
なのはママに連れられて、ヴィヴィオ達は警察署を出ます。
「なのはママ、あの逃げた連中はどうなったの？」
「逃げ切られちゃった。ごめんね、ヴィヴィオ」
「謝ってもらうことでもないよなのはママ。そんなに逃げ足の速い連中だったの？」
「そうだね」
「そういえば、フィフスって呼ばれてた女の子はどうなったの？」
「その子にも逃げられちゃった。どうやら、飛空艇フッケバインが軌道上で待機してたみたい」
「スナイパーの方は？」
「スナイパーは姿も見えなかったよ。あっちも逃げる算段をして襲ってきたみたいだね」
「結局襲われ損なのかな」
「どうなのかな、それははやてちゃんに報告してからだね」
なのはママは少し落胆してるみたいです。
でも、なのはママから逃げ切るなんて、どんな化け物達なんでしょうか。
「フッケバインのメンバーは、転送で逃げたのが分かってるよ」
「そうなんだ。だけど、クインって名乗ったお姉さんはどうやって逃げたのか分からないんだよ。
転送魔法を使ったようにもないみたいなんだけど」
「いずれにせよ、もう海鳴市は危険だね。一旦本局に行かないと」
「本局だって安全とは言えなかったよ」
「だけど、ここと違って、普通の人を巻き込む可能性は少ないよ」
「それはそうだね、なのはママ」
ヴィヴィオ達はまた本局へ逆戻りです。
お菓子作りのお勉強が出来ないのでちょっとつまんないです。
けど、クインみたいな相手が、無差別に人を襲ったら大変です。
それに……
「そういえば、最初にヴィヴィオ達を襲ってきたお兄さん達はどうなったの？」
「海鳴市警察で司法解剖したあと、管理局に遺体が引き渡されることになってるよ」
「死体は確保出来たんだ」
「そうだね、ヴィヴィオ。それだけが収穫かな」
「それで、本局にはいつ行くことになるの」
「最短の便で行くことになるね。私も同行するから」
「分かった」
「はー、また連絡しないといけないのか」
「冬美ちゃん、ごめんね」
「いえ、なのはおばさんの責任じゃありませんから」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「フッケバインっていつごろ捕まるんでしょうか」
「月光ちゃん、管理局だって手をこまねいてるわけじゃないよ。
はやてちゃん達が今情報を集めてるし、管理世界だったら
襲ってるのが、ヴァンデインコーポレーションの研究所に集中してるって分かったからね。
そこをうまくやれば、違法研究もフッケバインも一網打尽だよ」
「だといいんですけど」
「あんまり大きなことは言えないかな、なのはさんも相手を逃がしてるからね」
「いえ、そういうつもりじゃありません」
月光ちゃんは慌てて否定します。
それはともかく、こんどこそヴィヴィオ達は本局に釘付けになりそうです。
それが何を引き起こすか、それはまた次のお話です。