私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
今、私達は海鳴公園を迂回して冬美ちゃんの道場へ向かってます。
海鳴公園では、旦那って呼ばれてる危ないお兄さんと、マティっていう軽いのりのお兄さんに襲われましたが
何故か助けてくれたフッケバインの二人と、なのはママのおかげで無事に逃げることが出来ました。
今、なのはママは、フッケバインの二人と、マティを狙撃した謎の狙撃手を捕まえるために海鳴公園です。
「3人相手になのはおばさん一人で大丈夫なのかな。まあ、あたしらが行ったらかえって危ないのかもしれないけどさ」
「大丈夫だよなのはママなら。あの程度の相手3人いたって勝負出来るよ」
「3人で止まればな……」
「冬美ちゃんは心配性だよ、なのはママなら大丈夫」
「だといいけどよ」
「たとえ、大丈夫じゃなかったとしても、応援に行けるの、ヴィヴィオちゃんと冬美ちゃんだけだよね」
「ま、そうなんだが」
「待てよ、お前ら」
道ばたで、ヴィヴィオ達よりちょっとだけ背の高いお姉さんが呼び止めます。
「お前らって、あたしらのことか」
冬美ちゃんが一歩前へ出ます。
町中でセーラー服を着てるのは普通かもしれませんが、刀を腰に下げてるのは
間違い無く普通ではありません。
刀に手を掛けてるならなおさらです。
「ああ、そうだよ。
あたしはグレンデル一家の特攻クインってんだ。
野暮用があってよ、ちょっとついてきてもらおうか」
「断る」
冬美ちゃんは即答です。
「町中で手荒なまねはしたくねえが、そう木で鼻をくくった返事じゃしょうがねえよな」
冬美ちゃんが身構えます。
ヴィヴィオも、月光ちゃんをかばえる位置へ移動します。
「なっ！」
冬美ちゃんが声を上げます。
冬美ちゃんの腕が浅く切られてます。
「一分の見切りでかわしたつもりなのに……」
「伊達に特攻は名乗ってねえ。殺すつもりなら殺せてたが
指示は生け捕りにしろだ。殺されたく無ければ付いてこい」
「むちゃくちゃな言い分だな。それに、むざむざ殺されるあたしじゃないぜ」
「腕の一本や二本切り落としても、生け捕りには違いないよな。
じゃ、手加減なしで行くぜ」
「来てみろよ」
一分の見切り、それは、相手の攻撃を見切ってぎりぎりの間合いでかわすこと。
しかし、それで切られてるということは、見切れてないということです。
それなら、クインの言うとおり、冬美ちゃんを殺そうと思えば、殺せるのかもしれません。
でも、冬美ちゃんはあくまで強気です。
何をするつもりなのでしょう。
「なっ！」
次は、クインが声を上げる番でした。
冬美ちゃんは、ディバイダーでクインの刀を受け止めたのです。
でも、クインの刀はすでに腰に戻ってます。
どうやら、居合いがクインの技のようです。
「引いてダメなら押してみなってな」
「そうか、そっちも感染者だったよな」
「も？ ……お前もエクリプスウィルスに感染してるっていうのか」
「まあな。けど、無駄話はこれまでだ」
ここは、町中です。
刀を持って暴れれば、当然警察に通報されます。
クインはともかく、冬美ちゃんは分かってるはずなのですけど。
「冬美ちゃん、ディバイダーなんか使ったら、警察に言い訳できなくなるよ」
「それもそうか」
「警察？」
「管理局みたいなものだよ」
「管理外世界にも、固有の治安維持組織はあるよな。
まあいい、次で決めてやる」
「いいだろう。今のでお前の攻撃は見切った」
「ほざけ」
冬美ちゃんはもうディバイダーを装備してはいません。
素手でやるつもりのようです。
けど、浅いとは言え、切られてる冬美ちゃんが素手で何をやるのでしょう。
止血も出来てないのに。
きんっ。
金属と金属がぶつかり合う音がします。
クインは刀を腰に収めますが、冬美ちゃんはディバイダーで
クインの刀をはじいたあと、一瞬間合いをあけると見せかけて
クインの足下に飛び込みます。
「やろう！」
クインの足をとって、冬美ちゃんはクインを転がします。
それから、素早く背後をとってクインを締め上げます。
「あーあ、血で服が汚れちまった。こいつはもうダメかもな」
「冬美ちゃん、そういうのんきな話をしてる場合じゃないよ。
今、ヴィヴィオが止血の魔法を使うからね。
ライチェントゥークス、魔法使用許可を」
「分かりました、我が主」
「すまんな、ヴィヴィオ」
「お礼はいいよ。それより、クイン」
「ちぃ……」
「あんま無茶な抵抗はすんなよ、クイン。
あたしも手荒なまねはしたくねえ。
じき警察がくる、そしたら身柄を引き渡してやるよ」
クインは、冬美ちゃんの絞めから逃れようとしますが、冬美ちゃんはがっちり押さえ込んでます。
サイレンの音が聞こえてきました。どうやら、警察が来たようです。
「え？」
私も、冬美ちゃんも、月光ちゃんも、狐につままれたような目をします。
突然、クインの姿が消えたんです。
「何が起きたんだ、一体……」
「わかんない、転送魔法は感じなかったよ」
「君たち、何をやってるんだ。どうした、その怪我は」
「ええと、何から説明していいか……」
警察官から説明を求められても、何を説明していいかわかりません。
こういうときこそ、なのはママが居てくれたらと思います。
はやてお姉ちゃんなら、もっと適任かもしれませんけど。