私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
今、私達はピンチなのかチャンスなのか分からない状況にあります。
旦那と軽いお兄さん対フッケバインメンバーの二人の戦いが始まりそうになってます。
私達はどっちに味方していいのか分かりません。
「どっちに味方しなくてもいいってよ。
とりあえずお前らは逃げろ」
「逃げていいの？」
「足手まといなんだよ」
「ま、どっちもこっちの味方じゃなさそうだし
お言葉に甘えて逃げるのがいいかな」
「冬美ちゃんがそういうなら、逃げるが勝ちだね」
「話は決まったな」
「逃がさないんだな」
「おめーの相手はあたしなんだよ」
とりあえず、今のところ、フッケンバインは敵ではなさそうです。
旦那と軽いお兄さんは、間違い無く敵です。
でも、フッケバインもどこまで敵ではない状態を維持してくれるは分かりません。
「なにぼんやりしてるんだよヴィヴィオ、逃げるぞ」
「逃げるって、どっちへ」
「こっちだ、……なんとなくだけどな」
翠屋の方向へ冬美ちゃんは逃げようとします。
確かに、なのはママに近づく方向に逃げるのが吉でしょう。
「マティ、こいつらは俺が引き受ける。
あのガキども逃がすなよ」
「逃げさせるのがあたしの仕事なんだよ」
「逃げるのは得意なんだな」
そう言うと、マティと呼ばれた軽いお兄さんは、姿を消します。
え？ 姿を消すって……
「ヴィヴィオも得意だろ、高速機動したようには見えないから、ステルスだな」
「あ、そか。ならこっちにも考えがあるよ。
とりあえず全速待避だよ、冬美ちゃん」
「始めからそのつもりっ。
ヴィヴィオ、遅れるなよ」
「分かってるよ」
冬美ちゃんが先頭、ヴィヴィオがしんがりになって月光ちゃんを守りながら逃げます。
「普通の人間を襲えばいいんだな」
ステルスから復帰して軽いお兄さんが現れます。
月光ちゃんをまずさらうつもりみたいです。
でも、それは想定通りです。
そして、登場するタイミングも完全に把握する方法がありました。
「ディバインバスター！」
直撃させました。向こうが完全に油断してるんだから
当たるのは当然です。
「なんで分かったのか分からないんだな」
「卑怯者のやることはすぐに分かるんだよ」
そればかりではありません、ライチェントゥークスは音響分析能力を高められています。
だから、あの軽いお兄さんの足音も拾うことが出来るんです。
「褒め言葉だと受け取っておくんだな」
「えー、直撃させたのに……」
「よくやったぜちんちくりん。あとはあたしにまかせな。
ステルスパターンは把握した、もう隠れても発見できる」
「ヴィヴィオはちんちくりんじゃないよお」
「そんなケンカしてる場合じゃないだろ。
さっさと逃げるぞ」
「うん、分かった」
逃げまくりです。とはいえ、なのはママが来るまで逃げまくるのは、正しい選択だと思います。
「逃がさないって言ったんだな」
「プラズマケイン！」
アルがプラズマを直撃させます。
でも、ディバインバスターが直撃して平気だった相手に
プラズマが効くんでしょうか。
「効くわけない……」
「……プラズマは見せ球なんだよ！
本命のバインドもちゃんとかかったな。
こいつは物理拘束だ、感染者だって逃げられやしないぜ」
「関節を外して逃げ……」
「あまいんだよ」
「くっ。縛りがかたくなってきやがった」
「関節を外してるから、痛みも二倍以上だろ」
「くっ……」
軽いお兄さんの顔が苦痛でゆがみます。
とはいえ、旦那はなにをやってるんでしょう。
『旦那に締め上げられてるみたいです』
「ライチェントゥークス？」
「まさか、ヴェイにぃが簡単にやられるなんて」
「リアクトした旦那は無敵なんだよ」
「けど、ヴェイにぃだって無敵だぜ」
「助けに行かなくていいのかよ」
「ヴェイにぃなら心配要らねえ」
「大丈夫かよ。まあ、ヴィヴィオの渾身の一撃食らって、膝付いただけの化け物だ。
無敵っていうのもあながち嘘じゃないかもな」
『状況変化、締め上げられてたはずのヴェイロンが
旦那の頭を吹き飛ばしました。少なくとも、ヴェイロンはそう言ってます』
「頭を吹き飛ばしたって……」
「ああああ、ヴェイにぃに手加減なんて言葉なかったんだった」
「まさか、旦那が……」
軽いお兄さんががくっと崩れ落ちます。
どうやら、心が折れてしまったようです。
やがて、ヴェイロンと、小さな女の子がやってきます。
「アル、こっちは片付けた。そっちはどうだ」
「生け捕りにした。ヴェイにぃの方は」
「すまん。ちょっと力を入れすぎた」
「情報を聞き出すっていうのはどうなったんだよ」
「代わりにこいつをつれて来た」
「ああ、リアクトプラグか」
「で、お前には聞きたい事がある」
「答える義務はないんだな」
「じゃ今すぐ死ね」
そう言うと、ヴェイロンは縛られてるマティなるお兄さんの頭に
アイアンクローを加えます。
なんていう力でしょう。あのまま力を加えていけば頭蓋骨が割れると思われます。
「た、助けてくれ、答える。答えるから……」
「最初からそう言えばいい」
「ヴェイにぃ、そう言わなかったらそのまま頭を握りつぶすつもりだったろ」
「本気が伝わらなければ意味がない」
たぶん、ヴェイロンにとって、人を殺すのも蚊を叩くのも、同じようなものなのでしょう。
「で、お前らのクライアントは誰なんだ」
「俺らに指示を出して……」
「伏せろ！」
声を出したのは冬美ちゃんです。
それに応じて、とっさに伏せることが出来たのは、ヴィヴィオ達とフッケバインのメンバー。
マティと呼ばれる軽いのりのお兄さんは、縛られてるので伏せるわけにいきません。
そして、狙撃手の狙いは、マティだったようです。
「どっちだ？」
「こっちっ！」
「行くぞ」
「この子は一緒に連れて行くぜ」
「足手まといにするなよ」
「大丈夫だぜ」
アルとヴェイロンは、女の子をつれて走り出しました。
「あたしらは逃げるぜ。争いごとに首をつっこんでもいいことにならねえ」
「うん、分かったよ、冬美ちゃん」
なのはママの救援を待つ。それが最初から私達の作戦でした。
危険に身をさらす必要は全然ありません。
「ごめん、遅くなった。みんな無事？」
「無事だよ、なのはママ」
「無事でよかった」
「あ、なのはママ、あっちにヴェイロン達が向かったよ」
「なのはおばさん、あっちに狙撃手もいるみたい。
ヴェイロン達はそれを追ってるんだ」
「ありがとう、冬美ちゃん。じゃ、おばさんはヴェイロン達を追ってくるから
みんなは安全な所へ逃げてね」
「うん、なのはおばさん」
「なのはママ、ひとまずヴィヴィオ達は遠回りして、冬美ちゃんの道場へ行ってくるね」
「うん、気をつけてね」
「なのはママもね」
なのはママは、狙撃手とヴェイロン達を追って行きました。
ヴィヴィオ達は転進です。
「大丈夫かな、なのはおばさん」
「なのはママなら大丈夫だよ。あの程度楽勝楽勝」
「だといいけど……」
「なのはママは教導隊のホープなんだよ。
あの程度の相手なら大丈夫」
「まあ、あたしらが行っても足を引っ張るだけだろうな」
「うん、だから道場に行こう」
ヴィヴィオは楽観してました。
なのはママなら一人でも大丈夫、そう思ってたんです。