私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。
だけど、みんなが私のことを呼ぶ時には、ヴィヴィオだよ。
ヴィヴィオ達は、いまなのはママ達と一緒にお茶をしてます。
なのはママとフェイトママは、フッケバイン追跡で忙しいんですけど
今は本局でお仕事なので、その休憩時間にはヴィヴィオ達とお話しする時間もあるんです。
「キャラメルみるく〜」
「お前、お茶してるって言ったよな」
「冬美ちゃん、ものはたとえなんだよ」
「てか、お茶飲んでるのってフェイトおばさんだけだろ。
なのはおばさんはコーヒーだし、あたしはスポーツドリンク、ゲッコウはサイダーだぜ」
「一人でもお茶飲んでるし、コーヒーでもお茶するって言うし」
「分かった分かった、しょーもない突っ込みして悪かったよ」
「あの、何か冬美ちゃんの体について分かったことがあるんですか」
「アカリちゃん、それはまだ何もお医者さんから聞いてないよ。
ただ、フッケバインについては動きが見つかった。
今、ティアナ達がその調査に行ってる」
「動き？ 冬美ちゃんをつれていくとか、そう言うのとは違う動きがあったんですか」
「そうなんだ。ヴァンデインコーポレーションの生物研究所が根こそぎ襲撃を受けた」
「ヴァンデインコーポレーションの生物研究所、って、何をする所なんですか？」
「それは企業秘密で分からないよ。公開されてないからね。
何をしていたのか今ティアナ達がそこらも含めて調査中だけど、難航してるみたい」
「フッケバインがそんなに巧妙な襲撃をしてきたんですか」
「それもあるんだけど、ヴァンデインコーポレーションも捜査には非協力的だからね」
「なのはママ、なんでヴァンデインコーポレーションが非協力的なの？
研究所が襲撃を受けて、それを管理局が調査して、フッケバインをやっつけるんでしょ。
協力した方が得になることしかないと思うんだけど」
「研究所で研究していたことを知られたくないみたい」
「そんな秘密の研究があったことを、なんでフッケバインは知ってるのかな」
「そこら辺も含めて調査しないとね。とにかく、ヴァンデインコーポレーションは
管理局に隠れて何かの研究をしてる、それは間違いない。
ただ、それが何のどんな研究家については情報が少なすぎる」
「ねえ、なのはママ、ヴァンデインコーポレーションって、暗号は得意かな」
「どうしたの、ヴィヴィオ」
「無限書庫で調べたら情報が見つからないかなって」
「管理局に秘密にしたい情報だから、暗号もかなり高度なものを使ってるはず。
無限書庫のデータを解読するのは難しいよ、ヴィヴィオ」
「うー、やっぱりダメか。けど、フッケバインは独自の情報で研究所を見つけ出して襲撃してるんだよね」
「研究所襲撃でデータを手に入れて、そこからさらにデータを取り出す、ということを繰り返してると思われるんだ」
「フェイトママ、じゃあ管理局もヴァンデインコーポレーションに立ち入り調査とか出来ないの？」
「そんな権限は管理局にないよ」
「フッケバインの襲撃だろ。あいつら無差別に人殺ししてるんじゃないのか？」
「フッケバインの行動原理には分からないことが多いからね。
管理外世界では、確かに無差別殺人をやっているようだけど、管理世界で襲撃を受けてるのは
圧倒的にヴァンデインコーポレーションが多いんだ」
「あの、いいですか、なのはおばさん」
「どうしたの、アカリちゃん」
「どうして、襲撃がフッケバインのものだと分かるんですか？
何か印でも残してるんです？」
「猫の子一匹残さない完全な殺戮と、完全な通信封鎖がフッケバインの襲撃の特徴なんだ。
証人になる人物をまるで残さないのが、フッケバインの印みたいなものかな」
「じゃあ、他にも通信妨害をかけて、完全な殺戮をする何かがいれば、フッケバインの影に隠れて
犯罪を出来ることになりますよね」
「理論上はそうだよね。でも、それだけの実力を持っている……！」
「どうしたんですか、なのはおばさん」
「そっか、フッケバインの仕業に見せかけて、自分の目的を達成しようという何かがいるのかもしれないね。
あんな完全殺戮者なんて同時に2グループも3グループもないと思っていたんだけど
もし、誰かがフッケバインにみせかけて、自分の目的を達成しようとしていたら……」
「だけどなのは、そんな誰かって、存在すると言えるの？」
「分からない。だけど、今までフッケバインのものとされてる殺戮について、一つずつ洗い直す必要はあるかもしれない」
「フッケバインって、そんなにいろんな所を襲撃してるんですか？」
「管理世界では、圧倒的に研究所が襲われてるんだ。ヴァンデインコーポレーションだけじゃなくて。
だけど、その中のフッケバインが襲撃している所は特定の研究所だけで、それ以外はおとりだとしたら？」
「なのは、自分で何を言っているかわかってる？ その論理からすると、ヴァンデインコーポレーションが
フッケバイン的な殺戮をしてることになるよ。捜査に非協力的なのは、ヴァンデインコーポレーションだけなんだから」
「フェイトちゃん、じゃあ、きっと、そうなんだよ」
「証拠もなしに疑うものじゃないよ、なのは」
「証拠は探さないと見つからないよ、フェイトちゃん」
「どうやって探すの？」
「……やっぱり、フッケバインを捕まえるしか手はないかもね。
もしくは、ヴァンデインコーポレーションの研究所のどこかで、違法研究がなされてる証拠を見つけるか」
「なのはおばさん、フェイトおばさん、私たちがいないほうがいいですか？」
「冬美ちゃん、それは大丈夫だよ。あくまでこれは推理じゃなくて、茶飲み話だからね」
「証拠もなにもない憶測だからね。だけど、ティアナ達にはその可能性も含めて調査するように連絡した方がいいかも」
「ゲッコウ、瓢箪から駒かもな」
「……なんだか、話が深刻になってしまいましたね、すいません」
「謝ることないよ、月光ちゃん」
「そういえば、あたしらいつまで本局にいなきゃならないのかな。
ヴィヴィオと練習するのも悪くないけど、いい加減には海鳴市に帰って道場の面倒もみないと」
「フッケバインが捕まるまでは、本局にいてもわらわないと困るかな。
やっぱり、フッケバインが勧誘してるのが分かってるんだから、本局のような安全な場所にいてもわらわないと」
「やっぱり、そうですよね。早くフッケバインが捕まらないかな」
「大丈夫、場所さえ分かればなのはママがぱぱっと捕まえてくれるよ」
「その、場所が分かるっていうのが大問題なんだよ、ヴィヴィオ」
「それは分かってるよ、フェイトママ」
「殺人衝動って本当なのかな」
「どうしたの、冬美ちゃん」
「なんでもない。ただ、本当にフッケバインが言うことが当たってたら嫌だなって思っただけ」
「精神的に落ち着かないとかない？」
「別にないです、なのはおばさん」
「なら、その辺も含めてお医者さんに検査してもらえばいいよ。そうすれば安心するでしょ」
「まあ、そうなんですけど」
「なのは、そろそろ時間だよ」
「フェイトちゃん、もうそんな時間？
冬美ちゃん、アカリちゃん、ヴィヴィオのこと、よろしくね。
ヴィヴィオもいい子にしてるんだよ」
「分かりました、なのはおばさん」
「はい、分かりました」
「なのはママってば……」
なのはママとフェイトママの、お茶の時間は終わり、お仕事に戻るときです。
ヴィヴィオ達は通信教育でお勉強の時間。
月光ちゃんのピアノ練習とかもあるし、それに3人でつきあったりするので
ヴィヴィオ達も割と忙しく時間を使ってます。
「フッケバインが研究所を襲撃かあ、襲撃されるって分かってれば防護ぐらいしてるだろうになあ」
「そうだよね。フッケバインがむちゃくちゃ強いってことかな」
「あたしらに撃退されてるんだぜ。そこまでむちゃくちゃ強いってこともないんじゃないかな」
「手加減してるってこと？」
「可能性はあるよな。手加減なしで来たらどういうことになるやら」
「冬美ちゃんは大丈夫だよ。仲間になれって言われてるんでしょ」
「それはそれでいやだろ」
「そうだね、冬美ちゃん」
私たちは、のんびりと会話を楽しむ余裕はありました。
本局に居れば安全、そう思ってたんです。