「ヴィヴィオ、大丈夫？ 怪我はない？」
「大丈夫だよなのはママ。相手も手加減したって言ってたし、ヴィヴィオも防御に十分魔力を振ってたから」
「それが不思議なんやな。フッケバインが手加減なんて、一体どういう風の吹き回しや」
「あたしを仲間に引き入れるって言ってた」
「冬美ちゃん、大丈夫だった？」
「ゲッコウ、そんなの見れば分かるだろ、あたしは大丈夫」
「よかった」
ここは、ヴォルフラムの艦内です。
ヴィヴィオ達は、ルーちゃん達にお別れを言って、今本局に帰る最中です。
「それにしても、フッケバインの通信妨害がここまで手の込んだものやとはな。
通信妨害を検知して急行するつもりが、それすら阻止された」
「けど、今度は同じ手は受けないよ」
「そうやなフェイトちゃん。今回の通信妨害については、クリスから情報を受けて
解析中や。本局でも分析を進めることができるやろうし、二度と同じ手はくわへん」
「けど、それはフッケバインも分かってるだろうね」
「分かってるやろなあ……それでも逃げた、ちゅうことは、まだまだ奥の手があると見てかまへんやろな」
「どんな手なんだろう」
「それが分かれば苦労せえへんわ」
なのはママも、フェイトママも、はやてお姉ちゃんも、思案投げ首です。
無理もありません。相手は神出鬼没のフッケバインです。
いつ、どこで急襲を仕掛けてくるか分かったものじゃないんです。
「おとり作戦を逆手に取られるとは思いませんでしたわ。
まだ、リオさんコロナさん達と一緒の時に来て良かったぐらいですね」
「そうだね、エミーちゃん」
「私はこのたびなにか役に立ったのでしょうか。
ゴライアスの上にいただけのような気が……」
「見張りは立派なお仕事だぜ。それに、一番危険でもある。
最初に相手が狙うのは、見張りだからな」
「全然気が付かなくて済まなかった」
「それは無理だよ、誰も気づけないように通信妨害を仕掛けてたんだし」
「ヴィヴィオさん、それにしても相手を倒したんでしょ。すごいなあ」
「全然倒れてないよ、膝をついただけ。そっから逆転されたら元も子もないよ。
タイミング良くエミーちゃんが通信妨害を破ってくれたから、助かったけど」
「通信妨害が破れたおかげで、あたしらも異変に気が付くことが出来た。
ありがとな、エミー」
「御礼なら高町さんに言ってくださいな。私は最初から通信妨害を破ろうと一生懸命でしたし
相手のフォルティスも、破られまいと巧みに妨害をスワップしてました。
高町さんがヴェイロンに膝をつかせてくれたおかげで、通信妨害のスワップが途切れましたわ。
私はそこを捕らえただけです」
「そんなの捕らえられるエミーちゃんがすごいんだよ、やっぱり」
「けど、何か起きなければ、ずっと妨害を受けたままでしたわ」
「ヴィヴィオ、おまえ、無茶しなかったろうな」
「別に無理なオーバードライブはかけてないよ……あのときはまだ」
「まだってことは、やるつもりだったんだな」
「あれ以上戦いが続いてたら、ブラスターモードも必要だったかも、ノーヴェお姉ちゃん」
「なあ、冬美、そんな無茶おまえ教えてるのか？」
「魔法について教えられるわけないですよ、ノーヴェさん。
あたしが教えてるのは格闘の基礎だけ。魔法はなのはおばさんから学んだこと以外は
独学じゃないですかね」
「ブラスターモードって、ライチェントゥークスには組み込まれてないはずだけどな」
「けど、覚えたよ」
「あれは封印」
「えー、使わないと勝てないよぉ」
「使わずに済まさないとだめだよ、特に、若くて体ができあがってないうちはね」
「大人になるまで封印なの？」
「大人になったら、使っていい時と、使ってはいけない時が自分で分かるでしょ。
だから、それまでは封印」
「はーい」
ブラスターモードは封印されてしまいました。
これで、次のフッケバインの襲撃にはどう対処したらいいんでしょうか。
ヴィヴィオには名案が浮かびません。
「それはともかく、冬美ちゃんは当分本局にいてもらわなあかんことになったな」
「どういうことです？」
「フッケバインに狙われてるのが、冬美ちゃん一人っていうのが本当か嘘かはわからへん。
けど、冬美ちゃんが狙われてるのは、間違い無いとみてよさそうや。
それなら、冬美ちゃんを、海鳴市に回して危険を冒す訳にいかんのよ」
「分かります。海鳴市にフッケバインが現れれば、何が起きるかということぐらいは」
「冬美ちゃん、本局で何をするの？」
「あたしに聞かれても」
「普通にお勉強とかすることになるやろな。あと、エクリプスウィルスについての調査にも
つきおうてもらわなあかんかもしれへん」
「モルモット扱いはごめんだな」
「けど、エクリプスウィルスについての情報は、本局にも乏しいんよ。
無限書庫をあされば別かもしれんけど、まだ司書長も他のお仕事で忙しいし
優先順位は次元世界の事件が多すぎて高くないし」
「私たちがなんとかしようよ、ね、エミーちゃん」
「そうですわね、何日かかけて調査する価値はあるのではないかしら。
どうでしょう、八神指令」
「そうやな、ユーノくんにも相談してみるわ」
「私はどうなるんでしょうか」
「あと数日ぐらい、学校休めるか？ 月光ちゃん」
「私も居ていいんですか？」
「それが希望やろ。なんとかするわ」
「ありがとうございます、八神指令」
「私たちは、サンクト・ヒルデに戻らないといけないですよね」
「戻るのか、もうしばらくこっちに居たい気もするけどな」
「リオちゃん、それはさすがに無理だと思うよ。
一週間以上の休学をもうやってるんだから」
「そうだな、それに、また休みには本局に来れるだろうし」
「楽しみにしてるぜ、リオ」
「そうだね、冬美」
「サンクト・ヒルデがフッケバインに襲われないといいのですけど」
「アインハルトさんの心配はもっともやけど、私は心配ないとみてる。
あの状況で、フッケバインが嘘をつかなあかん理由もないはずや。
せやたら、狙いはあくまで冬美ちゃん一人とみて間違い無い」
「冬美ちゃんをどうして仲間にしたいんだろうね」
「それを調べるために無限書庫へ行くのですわ」
「そうだね、エミーちゃん」
鍵はやはり無限書庫ということになりそうです。
そこでの出会いは、さらに話をややこしく導くことになるのですが
それはまた別の話で。