私の名前は高町ヴィヴィオ。ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。

正式な名前はやたら長いけど、ここ、海鳴市で暮らしている分には、戸籍上の名前も

高町ヴィヴィオだよ。みんなが私を呼ぶときはヴィヴィオなんだ。

 

「前置きが長すぎるぞヴィヴィオ。もっと簡潔に出来ないのかよ」

「えー、けど、私が誰か説明しないと、何の話かわからないよ冬美ちゃん」

「あたしらはみんな知ってるっての、てか、誰に説明してるんだよ」

「それは秘密」

「ヴィヴィオちゃん、エミーちゃんから手紙が来たんでしょ、ねえ、早く読んでよ」

「せかさないでってば月光ちゃん、今から開けるんだから」

「なんでエミーの奴は手書きの手紙を送るんだろうな。

　ヴィヴィオはビデオレターなんだから、エミーもビデオレターを

　送ってくれればいいのに」

「けど、今回は写真が入ってるよ」

「え、写真？ヴィヴィオちゃん、早く見せて」

「うん、いいよ」

「…エミーの奴、格闘を始めたのか、後ろの方、見慣れない人が写ってるな」

「えとえとえと、エミーちゃんが格闘をやってるのは前からだよ。

　後ろに写ってるのは、コロナちゃんにリオちゃんにノーヴェお姉ちゃんだね」

「コロナとリオは、エミーの向こうでの友達か。ノーヴェって奴は

　なんか出来そうな気がするな」

「冬美ちゃん、写真を見ただけでわかるの」

「そりゃあたしは格闘家なんだからさ。姿勢とか目つきとかで

　強いか弱いかぐらいは判断つくって」

「それってすごくない？ヴィヴィオはあんまりそういうのわかんないよ」

「ヴィヴィオだって、パティシエとしての腕前は、なんとなく雰囲気から

　わかるだろうし、ゲッコウだって、ピアニストの腕前は大体

　そいつから発せられるオーラでわかるだろ、それと一緒」

「わたしは、ピアニストの上手い下手はまだわかんないかな。

　冬美ちゃんが頭抜けてるんだと思うよ」

「おだててもなんにもでねぇからな」

「学校の様子を写した写真も来てるね」

「ほら、ヴィヴィオ、写真と手紙はなにか関連あるんだろ。

　ヴィヴィオは先に読んでるんだろうし、写真も先に見てるだろうから

　あたしらが写真見てるうちに、手紙を読んでくれよ」

「写真は見たけど、手紙を読むのは初めてだよ、冬美ちゃん」

「あーわかったわかった。けど、エミーの近況を知りたいのは

　ヴィヴィオだって一緒なんだろ」

「それはもちろんだよ」

「ねえ、ヴィヴィオちゃん、早く読んでよ」

「うん、私も早く読みたいから、今から読むね」

 

　拝啓。

　皆様の世界では、今は夏休みの真っ最中でしょうか。

　暑い中、体調を崩されてはいませんか。

 

　私の方は、サンクト・ヒルデの夏休みの真っ最中です。

　夏休みといっても、それなりに宿題もありますし

　聖王としての修行の毎日は、学校が休みでも代わりはありません。

　毎日が、充実した忙しさの中で過ぎていきます。

 

　サンクト・ヒルデでは、友達が二人出来ました。

　コロナさんに、リオさん。二人と出会ったのは無限書庫です。

　無限書庫は、現在一般の方にも限定的に解放されています。

　機密指定されてない情報でしたら、司書が調べることができます。

　お二人に出会ったのも、私が司書としてユーノ司書長の代理を

　しているときでした。

　お二人とも、ストライクアーツの愛好者ということもあり

　親しくさせていただいてます。

　ストライクアーツについては、ノーヴェさんから手ほどきを受けてます。

　デバイスを用いた戦い方については、シスターシャッハから陸戦魔導師の

　戦い方を、ロッテさん、アリアさんから空戦のやり方を学んでいますが

　デバイスを用いない、純粋な肉体での戦いについては、ノーヴェさんを

　師匠としています。

 

　最近は、ストライクアーツにとらわれず、第９７管理外世界の

　格闘技も取り入れた戦い方をノーヴェさんに試しています。

　ノーヴェさんからは、ストライクアーツの基本を極めるようにと

　ご指導いただいているのですが、私は、ストライクアーツも

　進化するべきだと考えております。その点、私は不肖の弟子ですね。

　コロナさん、リオさんは、今のところ、１０歳相当として

　平均的な実力の認定を受けてます。二人とも、格闘家を

　目指しているのではなく、素養として学んでおられるので

　平均的な実力で問題はないのだと語ってます。

　私も、素養として学んでいるのですから、平均的で

　良いのかもしれませんが、やはり、やるからには

　誰にも負けたくない気持ちはあります。

 

　誰にも負けたくないで思い出しましたが、最近、こちらでは

　覇王インクヴァルドを名乗るストリートファイターが現れてるようです。

　格闘の実力者に辻試合を挑んで、連戦連勝だと聞いております。

　いつか、私たちの前に現れるかもしれません。

　本当に覇王の流れをくむ、古代ベルカの末裔なのか

　ただ単にインクヴァルドを名乗っているだけなのかも

　判断がつきませんが、ヴィヴィオさんやイクスヴェリアさんが

　あらわれる時代なのですから、覇王インクヴァルドが現れることが

　あっても、驚くべきではないのでしょう。

　ギンガさんからも、注意するようにと言われました。

　私の保護観察はまだ解けたわけではないので、一人で

　どこかに出かけることはありませんから、その点では安心です。

　保護観察とはいえ、ナカジマ家の養女になったノーヴェさん、チンクさん

　ディエチさん、ウェンディさんは、自由に出歩くことが出来ますから

　もしかしたら、一人きりの時に、戦いを挑まれるかもしれません。

　みなさん、相応の実力のある方々ですもの。

 

　夏休み中、時間がありましたら、ミッドチルダにおこしください。

　私から第９７管理外世界を訪れることはできませんが、遠方からの

　友人を歓迎してはならないという規制は、掛けられておりませんから。

　私の覚えた格闘術を、川崎さんに見ていただきたいと思いますし

　私のピアノを、中島さんに聞いていただきたいとも思います。

　もちろん、パパの最高傑作、最愛の娘の高町さんと、手紙ではなく

　あってお話ししたい気持ちは人一倍です。

　同じ遺伝子を分け合った、姉妹ですもの。

 

　お話が長くなってしまいました。

　今日はこれくらいで手紙を終わらせたいと思います。

　噂では、皆さんの世界では、悪性のインフルエンザが流行中だとか。

　くれぐれも、ご自愛くださるようにお願いいたします。

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

 

　　　　　　　　　　　　　　　サンクト・ヒルデ学園　学生寮

　　　　　　　　　　　　　　　ベルカ自治領聖王教会方

　　　　　　　　　　　　　　　　　　エミー＝シュミット＝スカリエッティ。

 

「…だって」

「へえ、エミーの奴、格闘を練習してるのか、一度手合わせしてみたいな」

「エミーちゃん、ピアノの練習もやってるんだ。格闘もしながら

　ピアノも練習するって、すごいね」

「とてもヴィヴィオのお姉さんだとは思えないよね」

「自分で胸張って言うな、てか、ヴィヴィオだってやれば

　エミーみたいにできるんじゃねーのか？」

「ヴィヴィオは立派なパティシエさんになればいいんだよ」

「けど、料理人はまず体力だぜ」

「うん、それがわかってるから、冬美ちゃんの格闘にもつきあってるんだよ」

「ヴィヴィオちゃん、ピアノはやってる？」

「音楽は、…学校の授業だけ」

「だけど、ヴィヴィオちゃん、歌は上手いよ」

「ほんと？お世辞でもうれしいな、月光ちゃん」

「お世辞じゃないよ」

「けど、ヴィヴィオは絶対格闘家向きだって。

　今からでもパティシエさんやめて格闘家になれよ。

　てか、エミーだって格闘家の練習してるんだから

　ヴィヴィオも、もっと格闘家に力入れたらどうだ？」

「えー、でもヴィヴィオは絶対パティシエさんになる〜」

「歌手になってもいいかもね」

「えー、アカリちゃんまで〜」

 

これが、ヴィヴィオ達の日常です。

きっと、エミーちゃんも、コロナちゃんやリオちゃんと

こんな時間を過ごしてるんだって、そう思います。

 

夏休みの宿題はまだ少しのこってるけど、ヴィヴィオは、今日も元気です。

 

 

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