ライチェントゥークス、大丈夫?こんどもちゃんと撮れてる?

大丈夫?ピンぼけとかしてな？音割れは?

 

『心配しなくてもすべて大丈夫ですよ、我が主』

 

ありがとライチェントゥークス。けど、今度は動きのある物を撮るから

慎重にお願いね。

 

『それは、私より、ビデオカメラを構えている月光さんにお願いしてください』

 

あ、そうだね、アカリちゃん、大丈夫？

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオちゃん」

 

ありがと、…さて、と、待たせたね冬美ちゃん。

 

「いいよ、無理いってつきあってもらってるんだから」

 

あ、ちょっとその前にちょっとだけ待って。

 

「あ？まだ何か忘れてることがあるのか?」

「うん、あのね、今から録画するのは、全部エミーちゃんへの

　ビデオレターにするから、エミーちゃんに何が起きてるか

　ちゃんと説明しようと思って」

「なら、ささっと説明を頼むぜ」

「うん、すぐに済ませるから」

 

えとえとええと、何から話していいのかな。

私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。

でも、エミーちゃんはもう知ってるよね。

私の格好を見てびっくりした?私は今、冬美ちゃんの道場にいるんだよ。

今から、冬美ちゃんと、…ちょっと、本気の練習につきあうんだよ。

ヴィヴィオはパティシエさんを目指してるんだけど、パティシエさんには

体力も大事って桃子おばあちゃんが教えてくれたから、体を鍛えるために

冬美ちゃんの稽古にもつきあうことにしたんだよ。

 

ええと…これでわかってもらえたかな、エミーちゃん。

じゃあ、今から組み手の練習をするからね。

 

「いいよ、冬美ちゃん、どこからでも」

「よし、じゃあこっちから遠慮無く行くぜ」

 

冬美ちゃんは静かに間合いを詰めてきます。。

ヴィヴィオは、冬美ちゃんから教わった型通りに構えて

冬美ちゃんの動きを待ちます。

 

冬美ちゃんは、すっと体を落とすと、体を伸ばして突きを放ってきました。

ヴィヴィオはこれを真後ろに飛んでかわします。

冬美ちゃんのほうは、一撃放った後素早く道場の床を蹴って間合いをとりなおします。

 

「ちぇー、これは初めて見せた技なのにな」

「練習でやってるのは見たよ」

「なんだ、見たことあるのか」

「うん、普通の攻撃が届かない間合いから、体を伸ばして一撃入れる技だよね」

「ちょっとギャンブル入ってるけどな。…まあ、仕方ないから正攻法でいくか」

「いいよ、全部受けきってみせる」

「りゃー…はっ、はっ、はっ」

「川崎流奥義、一分の見切りっ」

 

軽く様子見の突きを冬美ちゃんが放ってきます。

これをすれすれでヴィヴィオはかわします。

けど、冬美ちゃんのこの突きは、当てるつもりがないようです。

顔の前に拳が来るのは怖いですけど、これならまだなんとか

普通にかわせます。

 

「普通にって、紙一重でかわしてるじゃねーか。

　さすがヴィヴィオだぜ」

「そろそろこっちのターンっ」

「おっと」

 

サイドスリップから、冬美ちゃんがやったように体を落として

踏み込んだ突きを放ちます。

冬美ちゃんは、体を斜めに入れてヴィヴィオの突きをかわします。

そのまま間合いを詰めて来るっ。

ヴィヴィオは踏み込んだ勢いのまま前転して冬美ちゃんの追撃をかわして

立ち上がります。

 

「とっさに前転か、いい判断してるな」

「少しは冬美ちゃんの練習台になれないと」

「んじゃ、今度はヴィヴィオから濃いよ」

「うん、いいよ」

 

いいよ、といっても、ヴィヴィオはあんまり攻撃は得意じゃありません。

けど、見よう見まねでパンチを出すことぐらいは出来る、と思います。

ヴィヴィオはボクシングのイメージで、間合いを詰めて行きます。

 

「はいっ、はいっ」

「どうした、そんな単調な突きじゃ見切られるぜ」

「わかってるよ〜だから、こうっ」

 

鍛えれば、全身が、バネになる。

ヴィヴィオって体が柔らかいでしょう

蹴りがちゃんと目の高さまで上がるんだよ。

 

けど、冬美ちゃんは体をのけぞらせてかわしました。

ええ〜奇襲のつもりだったのに。

 

冬美ちゃんは、ヴィヴィオの蹴りをかわすと、振り下ろす足を

とろうと手を伸ばしてきます。

ヴィヴィオはそれをかわすために足を縮めて後ろに飛びます。

 

「今の…見えたのか?」

「うん、気配でわかったよ」

「うわぁ…ヴィヴィオちゃんも冬美ちゃんもすごいね」

「あたしは生まれたときからやってるんだから当然。

　けど、ヴィヴィオはパティシエさんの練習しながらだろ。

　よくそんだけ出来るな。やっぱ、お菓子屋さんより

　格闘家めざせよ。そっちのほうが絶対才能あるぜ」

「えー、けど、ヴィヴィオは絶対にパティシエさんになる〜」

「冬美ちゃんもヴィヴィオもいいな。将来なりたいものが決まってるんだ」

「ゲッコウだって、ピアノには通ってるんだろ」

「けど、私程度じゃピアニストなんて全然だから」

「あきらめちゃだめだろ。あたしだって、生まれたときは素人だったんだから」

「生まれたときは素人に決まってるよ」

「けど、基本は同じだろ。何かに向かって練習してれば、たとえ

　それをやることがなくても、何かで役に立つことはあるんじゃないか」

「うん、そうかも、ありがとう冬美ちゃん」

「お礼を言われるようなことはしてねーって。

　それより、ヴィヴィオ、エミーにビデオレターの最中なんだろ。

　あたしとヴィヴィオの模擬戦なんて見てもらっても仕方ないんじゃないか」

「ううん、ヴィヴィオ、エミーちゃんには、普段のヴィヴィオ達の様子を

　見て欲しいんだよ。だから、アカリちゃんにも頼んで

　普段の様子を録画したんだよ」

「あ、そ。…そういえば、これ、まだとってるのか？」

「うん、そうよ、冬美ちゃん」

「そっか、ありがとゲッコウ…こほん。

　エミー、元気してるか？あたしらは、見ての通り３人つるんで

　なんとかやってるぜ。エミーもたまにはこっち来てくれよな。

　裁判の判決がどうなるかわからないけど。

　そうそう、ヴィヴィオもちゃんとしたクッキーが焼けるようになったんだぜ。

　たぶん、このビデオレターにヴィヴィオのお菓子がつくとおもうけど

　焼きたてはまた格別だからさ。

　じゃ、…ゲッコウ、カメラかせよ、こんどはあたしが撮ってやるから」

「う、うん、ありがとう冬美ちゃん」

「よし、構えたぜ、好きなこと話せよ」

「う、うん…」

「月光ちゃん、リラックスして、エミーちゃんが目の前に

　いると思って話せばいいんだから」

「あ、えと…エミーちゃん、元気ですか？

　私たちは…その、…冬美ちゃんが言ったとおり、３人仲良くやってます。

　ピアノも、前お別れ会したときよりは上達したと思ってます。

　次のビデオレターがあったら、今度はヴィヴィオちゃんと

　連弾してる所を送れたらなぁ…って思ってます。

　エミーちゃんに会って話したいこと、いっぱいあります。

　いっぱいあるんだけど…いっぱいありすぎて、何から話していいか

　よくわかりません。

　エミーちゃん、エミーちゃんは、向こうで友達が出来ましたか?

　きっとエミーちゃんの事だから、すてきな友達がたくさん出来たと思います。

　聖王陛下って、なんなのか、私にはわかりませんけれど

　きっと、それになるのは、すごく大変なことなんですよね。

　けど、あきらめないでください。…私には何も出来ませんが

　エミーちゃんのこと、信じてます」

「…ゲッコウ、上出来だぜ」

「じゃ、最後はヴィヴィオ〜」

「おいおい、ヴィヴィオはメインだろ。ヴィヴィオのカメラなんだし」

「士郎おじいちゃんのを借りてきたんだよ。

　えとえとえと、エミーちゃん、私たちの近況は

　アカリちゃん、冬美ちゃんの言ったとおりです。

　ちゃんと、クッキーを入れて送るから、楽しみにしてね。

　それでは、長くなるのもなんなので、これで終わります。

　ライチェントゥークス、大丈夫?途中で録画が切れてるとか無い？」

『大丈夫です、我が主』

 

よかった、ちゃんと録画出来てるんだ。

あとは、帰ってクッキーを焼いて、乾燥剤と一緒に

缶に詰めて、DVDと一緒に送ればいいよね。

 

「あ、最後ですけど、ヴィヴィオは今日も元気です。

　エミーちゃんも、同様でありますように」

 

 

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