私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
今、ヴィヴィオ達は殺人集団フッケバインとの戦いに突入した所です。
「数で勝ってれば勝てるつもりか？ 甘いんだよ」
「数を頼むつもりなら、分身魔法でも使ってるんだよ」
ヴィヴィオは魔法弾を使って、フッケバインのメンバー3人を同時に攻撃します。
ライチェントゥークスに誘導は任せて、ヴィヴィオは相手の動きに備えます。
「銀十字、スタンバイ」
『分かりました、マスター』
「ブランゼル」
『Yes,my master』
「ソルフィーズ」
『O.K.』
「クリス、セットアップ」
この間に、こちらのメンバー全員が戦闘態勢に突入です。
「全員でかかれば……」
「コロナ、待てよ。
相手にもまだメンバーがいるんだ、不意打ちは怖い。
コロナはブランゼルの上にのって、全体を見渡してくれ。
ヴィヴィオはヴェイロンを
エミーはフォルティスを頼む。
リオ、あたしらはサイファーをやるぞ」
「二人がかりならなんとかなるつもりか、甘く見られたな」
「甘くはみてねーよ。甘く見てれば一人で十分って計算する」
「サイファー、気を引き締めてください。相手は一度あなたをはめたことがあるんですよ」
「不覚を取ったのは否定しない」
冬美ちゃんが布陣を決めました。
こういうのは冬美ちゃんが得意です。
たぶん、冬美ちゃんが考えたことなら、それが最良なんだと思います。
「ライチェントゥークス、魔力回収プログラムロード」
「魔法が通用すると思ってるのか？」
「魔法にはこういう使い方もあるんだよっ」
フラッシュムーブは相手も想定しているでしょう。
しかし、想定されていてもやらなきゃならない場面もあります。
フラッシュムーブなら、高速機動中も自分の意志で行動を変化させる事が出来ます。
これを使って接近戦に持ち込むのが私の考えです。
砲撃戦タイプが接近戦に弱い道理もありません。
なのはママはどっちもいけます。
でも、得意なレンジは当然あるはず。
ヴェイロンは射撃が得意なレンジなら、ヴィヴィオは接近戦を挑むまでです。
あれ、ヴェイロンが易々接近を許した？
何を考えてるんでしょうか。
「捕まえたぜ、このガキ」
すごい力です、簡単にはふりほどけません。
どうやら、腕力ではヴィヴィオは魔法を使ってもヴェイロンにはかなわないようです。
「接近戦ならなんとかなるとか、考えが甘いんだよ」
「捕まえればなんとかなるっていうのも同様だよ」
「ここから何が出来るっていうんだよ」
捕まってるのは、打ち込んだ左腕です。
そのまま宙につり上げられます。
ヴェイロンは、左手を振りかぶって殴ろうとしてきます。
振りかぶるとは、ヴィヴィオもずいぶんと甘く見られたものです。
「速戦即決、ディバインバスターっ！」
ディバインバスターは、射撃にも時間がかかり、射撃後の拘束時間も長い大技です。
が、至近距離、捕まってる状態で撃ち込めば回避の余地もないでしょう。
こちらは始めからディバインバスターを撃つつもりで接近してたので発射の準備は
接近中に終わってます。そして、直撃させれば、硬直時間は問題にならな……痛っ。
「ちぃ……魔法だと思って油断した。打撃が来るとは思わなかったぜ」
「うそ、直撃したのに殴ってくるなんて〜っ！」
しゃべりながらも間合いを開きます。
あんな力で捕まえる能力があるのなら、力比べだと勝負になりません。
しかしながら、射撃戦で勝てるんでしょうか？ ディバインバスターの直撃に耐える化け物相手に。
「こねえのか？ じゃあ、こっちのターンだぜ」
ヴェイロンが射撃の態勢に入ります。
なら、こちらにも考えがあります。
その間、エミーちゃんはフォルティスと話をしてるようです。
「あら、あなたは攻撃してこないのですね」
「そう思うなら、あなたからどうぞ」
「ふふ、時が来たらそう致しますわ。
それより、エクリプスウィルスについて、あなた方は何を知っておられるのですか？」
「それを聞いてどうするんです。エクリプスウィルスに一度感染すれば治療法はない。
感染者が出来ることは、せいぜいウィルスとつきあって生きることだけです。
我々がしているのは、それですよ」
「そのために人殺しですか」
「我々は自殺すら許されないのですよ」
「不死者なのですか？」
「絶対に死なない、という訳ではありません。
しかし、我々にはするべき事が残っているのでね」
「何をしようというのです」
「世直しですよ」
「人を殺して回ってまでするべき世直しがあるのですか」
「あるんですよ。我々がやっているのはそれです」
「その、世直しに、冬美さんも巻き込もうというのですね」
「巻き込むも巻き込まないもないんです。感染者には我々と一緒に過ごす以外の選択肢がない」
「管理局の方も、決して無能ではありませんわ」
「無能でないなら、我々をとっくに捕まえてるでしょうね」
「そうかもしれませんわね」
コロナちゃんから声が響きます。
「エミーちゃん、のんびり……」
「いいんだよ、コロナ。それよりあたしらが戦ってる以外んとこの見張りを頼むぜ。
絶対になんか仕込んでるはずだからな」
「我々だけでおまえ達を制圧するのに十分だとは考えないのか？」
「一度はヴィヴィオに煮え湯を飲まされてるだろ。
仕込まないとすれば、脳天気な馬鹿だ」
「なるほどな……だが、我々だけで……」
「リオ、接近戦と射撃戦とどっちが得意だ？」
「どっちもいけるけど、やるなら接近戦かな」
「じゃ、援護する。近づいてぶったたけっ！」
「O.K.冬美」
「近づけば刀のサビだぞ」
「させねえよ」
冬美ちゃんは、銀十字を使ってディバイダーを取り出します。
でも、冬美ちゃんは明らかに接近戦が得意な川崎流の使い手のはずです。
援護射撃とかどうするんでしょうか。
「撃て、銀十字！」
『分かりました、マスター』
銀十字が答えると、無数の魔法弾が冬美ちゃんの回りから放たれます。
ディバイダーは関係ありません。
これが冬美ちゃんの援護射撃なんでしょうか。
「豆鉄砲が」
サイファーは刀で魔法弾を切り伏せて行きます。
器用なものです、四方八方から魔法弾が押し寄せてるというのに。
「炎雷砲っ！」
冬美ちゃんの魔法弾とは違ったリズムで、リオちゃんの砲撃魔法が放たれます。
これをも受けようとサイファーは動きますが、それが
冬美ちゃんの狙いだったようです。
「ファイアー！」
ディバイダーの射撃がサイファーを襲います。
まだ放った魔法弾も生きてます。
さすがのサイファーもかわしきれません。
「リオ、たたみかけるぞ」
「了解っ！」
至近距離へリオちゃんが踏み込みます。
サイファーは刀の間合いに開きなおそうとしますが、リオちゃんの方が一歩早い。
「くっ」
リオちゃんがサイファーの両腕をつかみます。
「捕まえた」
「手が使えなければっ！」
サイファーは、自由がまだきく足でリオちゃんを蹴り飛ばそうとしますが……
「たたみかけるって言ったろ」
冬美ちゃんがディバイダーでの射撃をさらにサイファーにたたき込みます。
サイファーにも、これは有効な打撃を与えてるようです。
「背中は打撃に強いって言うけど、連続攻撃を受けたらどうかな」
リオちゃんは、力ずくでサイファーを冬実ちゃんの側に向けます。
当然冬実ちゃんには背中を向ける格好になります。
そこへめがけて冬実ちゃんの集中射撃。
サイファーの力が落ちるのも……
「リオちゃん！ 後ろから射撃！」
「リオっ！ 逃げろっ！」
とっさに逃げ切れず、リオちゃんは後ろから来たプラズマ弾を受けてしまいます。
一撃で致命傷にならなかったのは、ひとえに、ソルフィーズが第五世代デバイスになっていて
シールドがプラズマ弾にも有効に機能したからに他なりません。
「サイ姉ぇ、何遊んでるんだよ」
「アルか、済まない」
「礼はいいから、サイ姉は下がって休んでろよ。
ここはあたしに交代だ」
「だが……」
「だがもへちまも、サイ姉割と怪我がひどいぜ。
それに、あたしが抜けた分の穴を埋めてもらわないとな」
「……分かった」
そう言うとサイファーは道を走って逃げていきます。
リオちゃんは後を追いたいようですが、まともにプラズマ弾を受けていて
追いかける力が湧きません。
「ごめん、冬美」
「いや、あたしも悪かった、敵に後ろを向けさせた。
つか一旦戻って休めよ。割と怪我がひどいぜ」
「ん、分かった」
サイファーの後を追えなかったリオちゃんは、素直に冬美ちゃんの言うことを聞きます。
「川崎冬美、か。サイ姉を追い詰めるなんて、ずいぶんと使い手みたいだな」
「二人がかりだからな。つか、おまえがフッケバインの切り札なのか？」
「教える馬鹿はいねーよ。
ただ、怪我させないように、ってのは無理っぽいな。
多少荒っぽくなっても、仕方なさそうだぜ」
フッケバインは、ここまで私たちに怪我をさせないように気を遣ってたとアルは言い出しました。
どこまで本当か分かりませんが、ここからは、怪我をさせてでも冬美ちゃんを連れ去るつもりのようです。