「ヴィヴィオ、いい子にしてた？ 冬美ちゃん、月光ちゃん、ヴィヴィオが迷惑かけてなかった？
あら、こちらの方はどなた？」
「ヴィヴィオはいい子にしてたよ。で、この人がリリィさん。リリィ＝シュトロゼック。
無限書庫の司書さんだよ。一週間前に着任したんだって」
「そうなの。初めまして、リリィさん。私は高町なのはです」
「あなたが高町なのはさんですか、噂は聞いております」
「ありがとう。そうそう、もうすぐエミーちゃん達がフェイトちゃんと一緒に来るからね」
「エミーちゃん達到着なんだ」
「そうだよ、ヴィヴィオ」
「到着したら、第五世代デバイスにみんなのデバイスを改造して、それからどうするんだろう」
「それははやてちゃんに聞いてみないとね、冬美ちゃん」
なのはママも、エミーちゃん達をどうこうする権限はないので仕方ないです。
あれ？ なんでなのはママだけ一足先にはやて指令の執務室に来たんだろう。
フェイトママも一緒に来ておかしくないよね。エミーちゃん達だけなんだったら。
「お待たせ、なのは、ヴィヴィオ、冬美さん、月光さん」
「フェイトママお帰り〜」
「フェイトちゃん、みんなのデバイスはマリエルに預けた？」
「預けたよ、なのは」
「みんなのって、……エミーちゃん達って言うには、人数が多いような……」
「話をしたのは、リオさんと、コロナさんと、アインハルトさんだけですわ」
「あ、あの……私は、ミカヤさんに挨拶しただけなんですけど……」
「すまんな、私が皆に連絡をしたせいで、人数がふくれあがった」
「断られなかったってことは、つまり、出入りは人数が多い方がいいって事だろ」
「小さい子達だけでは、危険だと思ってついて来ただけですわ。
それに、第五世代デバイスというものにも、興味がありますもの」
「つか、タカピーお嬢はついて来て良かったのか？ 一応は心配する人がいるんだろ」
「一応だけ余計ですわ。それに、ジークが行きたいと言ってました」
「チャンプも来るの？」
「せやから、チャンプはやめてや。年が改まればまた振り出しなんよ」
「けど、みんなの目標には違いないですよ」
「ミウラちゃん、こんにちは」
「こんにちは、ヴィヴィオさん」
「こうなると、シスターシャンテやオットー達がいないのがむしろ不思議だよね」
「シスターシャンテとオットー達は、シスターシャッハの許可が出なかった。
シスターシャッハも一緒ならまた別だったんだろうけど、それだと予定が狂う」
「予定って？」
「ヴィヴィオははやてから聞いてない？」
「うん、まだ何も聞かされてないよ」
「第五世代デバイスを全員分用意出来たら、すぐに、フッケバインが襲ってきても
一般人には影響のない場所へヴィヴィオ達だけ移動。
私たちはヴォルフラムで待機して、フッケバインが現れたらすぐに駆けつける。
そういう予定なんだ」
「それと、みんなが来てるっていうのは、どういうことなの？」
「危ない相手なんだろ。人数は多い方が安全だ」
「数を頼まなければですわ」
「そりゃ分かってる。けど、少人数よりは大人数の方が安全だろ」
「これは試合じゃない。相手がどんな手段を使ってくるか分からない。
油断は禁物だ」
「うん、ミカヤさん、それは分かってるよ。
だけど、フッケバインは私たちを付け狙う可能性が高いんだよ。
だから……」
「ヴィヴィオさんだけ危険な目には遭わせません」
「行けばみんな危ないよね」
「どうしたゲッコウ。おまえは心配しなくていい。
ていうか、おまえはさすがに残れよ」
「冬美さんも残られるのでしょう？
デバイスがないと、さすがに危険ですわ」
「いろいろと事情があってよ。あたしもデバイス持ちになったんだよ。
なんか特殊なデバイスらしいんだけど、まあ、デバイスはデバイスだろう」
「実力は十分だとおもいますぅ」
「デバイス持ちになったなら、あたしとガチでやろ」
「そりゃいいな、けど、リオの方がデバイス改造中だろ」
「だから、向こうに行ったら」
「そうだな。すぐにフッケバインが現れるとも限らないし」
冬美ちゃんとリオちゃんは、どちらも実家が道場です。
似たもの同士で、同時に拳法のライバル同士でもあります。
「魔法が通用しない相手ということだが、物理的打撃は通るのだろう？」
「うん、そうだよ。やってみて分かった」
「なら、私の出番でもあるな」
「ミカヤさんに居てもらうと心丈夫ですけど、いいんですか？」
「知り合いが危険にさらされてるというのに、黙ってみている法はあるまい」
「そういえば、ザッフィーは許可出してくれたの、ミウラちゃん」
「ええ、師匠からの許可はもらいました。はやてさんから話は行ってます。
危ないことはするなって言われてますけど、ヴィヴィオさんの手助けなら歓迎です」
「意外だなあ。ザッフィーは危ないことするなっていいそうなのに」
「始めは師匠も反対だったんですけど、ボクがどうしても行きたいって粘ったら
シグナムさんとヴィータさんが師匠を説得してくれました」
「あはは、やっぱりザッフィーは反対だったんだ」
「まだボクは未熟者ですから」
「でも、前回はミウラちゃんに負けたよね」
「１０回やって１回勝てるかどうかの相手に、その１回があっただけですよ」
「本番は一回切りだよ」
前回のインターミッドで、私はミウラちゃんに負けてます。
あれからヴィヴィオは冬美ちゃんの練習につきあわされる量が増えました。
冬美ちゃんはかなり悔しかったみたいです。
ヴィヴィオは、パティシエさんになるので、ミウラちゃんが勝っても別に悔しいわけじゃありません。
だけど、冬美ちゃんの期待は裏切らないようにしたいと思ってます。
「２，３日でデバイスの用意はできる。そしたら、移動だね」
「マリエルさんがそう言ってるの、フェイトママ」
「そうだよ、ヴィヴィオ」
「じゃあ、２，３日はこっちにいないといけないね」
「そうだね、ヴィヴィオ」
「その間に、フッケバインについて分かってることをお勉強だよ、ヴィヴィオ」
「えー、分かってる事ってそんなにたくさんあるの〜」
「管理局だって、フッケバインを捜査してるんだから、情報はあるよ」
「ほどんど何も分かってないんだと思ってた。結構分かってるんだ。
でも、なんで分かってるなら捕まらないの？」
「……あまり大きな声では言えないが、管理局の情報がフッケバインに漏れてるらしいんだ。
それに、相手は魔法が通用しない。管理局では対処が難しかったんだ」
「そういえば、管理局は魔法でないと戦えないっていう制約があったよね。
だけど、管理局以外の組織だったら？」
「時空を超えて移動する相手には、管理局でないと対処出来ないんだよ、ヴィヴィオ」
「あ、そか」
時空管理局は、次元の海を越える犯罪者集団に対処するのもお仕事です。
もちろん、第一の仕事は、世界を滅ぼしかねない危険物、ロストロギアに対処することです。
ですけど、次元の海の治安を守ることも、管理局の大事なお仕事なんです。
「管理局がフッケバインの情報を集めて、それに対処すべく作られたのが、第五世代デバイスだからね。
具体的な能力については、また時間をとって説明するよ」
「説明するんだ」
「そうしないと、フッケバインに対抗できないからね。
相手は冷酷非情の殺戮者集団。子供でも情け容赦なく殺す相手だよ」
「分かってるよなのはママ。だからこそ、ヴィヴィオ達がおとりになるんだよね」
「そうだけど、本当は、なのはママ、やっぱりこういう事はやらせたくないな」
「だけど、フッケバインは、もう海鳴市に現れたんだよ。
もう、ヴィヴィオ達はフッケバインと無関係じゃ居られないんだよ」
「そうだね。……何かあったら、こんどは、なのはママがすぐ行くからね」
「うん、すぐ来てね、なのはママ」
なのはママが後ろに控えてくれているので、こんどは気が楽です。
『気楽に構えていい状況ではないと思いますが、我が主』
「ライチェントゥークス、だけど、海鳴市でフッケバインに初遭遇した時よりは
よっぽど状況はいいよ。人数は多いし、なのはママも控えていてくれるし」
『代わりに、フッケバインも油断してません』
「それもそうだね、子供だと思って甘く見てはくれないよね」
『細心の注意が必要です、我が主』
ライチェントゥークスは、私のデバイスです。
ちょっと心配性ですが、大切な相棒です。
『心配性というか、我が主が楽天家にすぎるんです』
「それは相対的なものだよ、ライチェントゥークス」
「ヴィヴィオって、なのはさんが居るときには極端に楽天的で、居なくなると妙に悲観的になるよな」
「やっぱり、ママがいるのと居ないのじゃ、気持ちの余裕が違ってくるんだよ」
「あの、私たちが来て、足手まといにならないでしょうか」
「コロナちゃんなら大丈夫だよ。それに、もし何かあったら、ヴィヴィオが守るからね」
「やっぱり、守られる側なんですね」
「私と戦ったときから、コロナさんはさらに技量を上げられました。
守られる側、なんていうことはないと思います」
「ありがとうございます、アインハルトさん」
「まあ、ゲッコウは残るんだし、腕に覚えのある奴だけ行くんだよな」
「私だけのけ者になったような気がする」
「月光ちゃんが一人になるのもかわいそうだよ。ねえ、なのはママ、一緒に行くことにしていい？」
「一緒にはさすがに危ないかな。月光ちゃん、なのはと一緒にヴォルフラムで待機するんじゃダメかな。
大丈夫、しばらくすればフッケバインを捕まえて、ヴィヴィオや冬美ちゃんと一緒になれるよ」
「ダメ、っていうことはないです。ただ、ヴィヴィオちゃんも、冬美ちゃんも、遠い人になったような気がして」
「すずかちゃんやアリサちゃんにも、魔法少女になったって打ち明けた時は、そう言われたっけ。
結局管理局のお仕事をするようになったから、確かに遠い人にはなったけど、今でも
二人とも大切な友達だよ。そういう関係じゃダメなのかな」
「ダメっていう事はないです。だけど、自分だけ取り残されたような、そんな気がするんです」
「遠い人っていうか、ヴィヴィオは翠屋を継いでパティシエさんになるんだから、遠くはならないよ」
「うん、そうだったね、ヴィヴィオちゃん」
「だからヴィヴィオは格闘家になれよ、絶対そっちの方が向いてるって」
「これは向き不向きじゃなくて、なるって決めたことなんだよ」
「ヴィヴィオは目標がしっかりしてるね。なのはママは、小学３年の頃、何になるのかって悩んでたよ」
「私は、なのはと出会った頃は、何になるのかさえ考えられなかった」
「私は小学５年生になっても、何になりたいか全然分からないです」
「中学生になってから、３年掛けてゆっくり考えればいいよ、月光ちゃん。
なのはが管理局に入って、ずっとお仕事するって決めたのは、確かに小学生の時だけど
高校にも行かずに管理局で働くことにしたのは、中学時代の話だからね」
「なのはさん、高校は行かなかったんですか？」
「管理局の士官学校に行くことにしたから、高校にも大学にも行ってないよ」
「あ、管理局の学校に通われたんですね」
「そうだね」
そうそう、月光ちゃんは、月光と書いて、アカリって読みます。
知ってる人は知ってるけど、知らない人は知らないよね。
「月光ちゃん、私も格闘はやってるけど、将来格闘家になる予定はないよ。
月光ちゃんも、将来が分からないっていうことは、そんなに気にすることないんじゃないかな」
「コロナちゃんも、将来が分からないの」
「サンクト＝ヒルデの魔法学科を受けてるから、魔道士にはなるつもりだけど
どんな魔道士になるかは、まだ決めてないんだ」
「魔道士にって決めてるだけで立派だと思うよ。
清祥小学校はそういう学校じゃないから」
「どんな学校なの？」
「いろいろ、広くお勉強する場所かな。
特に決まった専門があるわけじゃないんだよ」
「そうなんだ。地球の子供って、勉強する期間が長いとは聞いたことある」
「地球のっていうか、日本の学校がそうなってるかな」
「地球は大きな世界だもんね」
「世界にも大きい小さいがあるのか？」
「知らないのですね。さすがは脳筋番長ですわ」
「脳筋だけ余計だタカピーお嬢。けど、おまえは知ってるのかよ」
「管理世界の番号割りは、管理外世界ですと、おおむね１惑星１世界ですけど
管理世界ですと、１国家１世界なのが普通ですわ。
もちろん、１惑星１国家だったり、複数の惑星を束ねる大連邦なんてのもありますけど
そういう場合は、おおむね、１惑星ごとに１つの管理番号が与えられてるものですわ。
ミッドチルダ連邦からして、国としては複数の惑星を持ってますけれど、
管理世界番号は、古い国家ごとに管理世界番号が与えられているでしょう？」
「そういうのあんま詳しくないんだよな」
「グレアムさんは、第９７管理外世界出身ですけど、なのはちゃんとは違う国の出身なんですよぉ」
「そうだったね、リイン」
「それで、私たちはどこへ行くのなのはママ」
「まだそれは秘密。情報は、移動した後で漏れないとね」
「漏れること前提なんだ」
「先回りされちゃ大変だもの。たぶんここ、っていうのはあるけど
本当にどこへ行くかは、はやてちゃんの決断次第」
「うん、分かった、なのはママ」
ヴィヴィオ達がどこへ行くのか、それは分かりません。
無人世界のどこかなので、サバイバル生活になる可能性もあります。
だけど、それはそれで楽しい体験になるかな。