ここは、はやてお姉ちゃんの執務室です。
でも、いるのはリインフォースツヴァイお姉ちゃんだけです。
「はやて指令は？ リインフォースお姉ちゃん」
「はやてちゃんは今さっき、海鳴市へ出かけましたよぉ」
「え？ なんで？」
「フッケバインが海鳴市を襲ったことの事後処理ですよぉ」
「そっか、はやてお姉ちゃんは忙しいんだ」
「そうですよぉ。それで、はやてちゃんにどんなご用件ですかぁ」
「えと、一杯要件はあるんだけど、まずはリリィさんのことからかな」
「リインが纏めてはやてちゃんに伝えますから、リインに話してくださいぃ」
要約して、リリィさんと銀十字から聞いた話を伝えます。
「つまり、悪魔の力と呼ばれるものを、冬美さんが手に入れたんですねぇ」
「そうだよ、リインフォースお姉ちゃん」
「分かりましたぁ。では、早速はやてちゃんのデバイスに話の内容を送りますよぉ。
時間が出来たら、はやてちゃんから連絡があると思いますぅ」
「うん、ありがとう、リインフォースお姉ちゃん」
「はいですぅ」
「いや、そこで話を終わらせるなよ。
これからあたしらはどうすればいいんだ？」
「それについてはぁ、はやてちゃんからちゃんと聞いてますよぉ」
「それを先に教えてくれよ」
「冬美ちゃん、それは無茶だよ。最初に話があるって言ったは私たちなんだから」
「それもそうかゲッコウ。で、はやてさんの指示って、なんなんだ？」
リインフォースお姉ちゃんは、書類を引っ張り出します。
「セキュリティ上、データにはしてないんですよぉ。
全部はやてちゃんの手書きですぅ」
「それで、なんて書いてあるの？」
「ヴィヴィオちゃんとぉ、エミーちゃん達はぁ、これから無人世界に行ってもらってぇ
フッケバインに対するおとりになってもらいますぅ」
「あたしらは」
「本局で待機してもらえれば安全ですよぉ」
「そういう訳にいかんだろ。あたしら３人一組でないと、フッケバインはつれないと思うぜ。
ていうか、露骨に罠って見えたら、フッケバインも食いつかないだろ」
「そうですけどぉ、魔法も使えない人を連れて行くのは危険ですよぉ」
「あの、危険は分かってます。だけど、魔法が使えたら安全ってことにもならないと思います。
相手は、魔法の通用しない殺戮者集団なんですよね」
「それはそうですけどぉ。はやてちゃんの指示じゃそうなってるんですよぉ」
「事情が変わったんだから、指示も変えてもらってくれよ。
たちまち、あたしはなんか力が宿ったらしいんんだよな。
それがどんなものか試さなきゃならないし」
「試すならリインが相手しますよぉ」
「どんな風に？」
「こんな風にですぅ」
そう言うと、リインフォースお姉ちゃんはいきなり魔力弾を放ちます。
とっさに冬美ちゃんはかわします。
「よけたら意味ないですよぉ」
「誰だって急に魔法弾が来たらよけるってば」
「普通は反応仕切れないと思う、冬美ちゃん」
「ヴィヴィオは反応できると思うぜ」
「ヴィヴィオちゃんには出来ても、私には無理だと思う」
「そりゃ、ゲッコウは鍛えてないからな。あたしらはそれ相応に鍛えてるんだぜ」
「えぇとぉ。こんどは魔力弾をよけずに受け止めてくださいぃ」
「分かった、受け止めればいいんだな」
そう言うと、リインフォースお姉ちゃんは、さっきより強力な魔法弾を放ちます。
「手加減しすぎだろ、リインフォースさん」
「手加減なしでやりましたよぉ。どうやら、魔法が効かないのは、本当みたいですねぇ」
「そうなのか、気がつかなかった」
「シールドもバリアもなしで受け止めてますぅ。これなら、魔法は通用しないと思いますぅ」
「けど、冬美ちゃん、相手は魔法なんて使わないよ。大丈夫？」
「わかるかよ。けど、ただここでじっとして、ヴィヴィオ達が危険な目にさらされるのは見たくない。
あたしに力が宿ったなら、それを使ってあたしは一緒に戦う」
「どれくらい強いか……」
「相手してくれるって言ったよな」
「はいですぅ」
「じゃ、試しに戦ってみてくれよ」
「リインだって見た目ほど弱くはないですよぉ。
はやてちゃん抜きでも戦えるように訓練してますからぁ。
それに、魔力は中和出来ても、魔法で生み出された実体弾は有効ですからぁ」
「理屈はいいってば。あたしは頭悪いから聞かされてもわかんねーよ。
とにかく、戦ってみるだけだ」
「はいですぅ」
そう言うと、冬美ちゃんは身構えます。
言い忘れましたが、リインフォースお姉ちゃんは、今普通の子供ぐらいの大きさになってます。
妖精サイズになるのは、はやてお姉ちゃんの負担を減らす必要があるときだけです。
「行くぜ」
「はいですぅ」
そう言うと、リインフォースお姉ちゃんは、氷で出来たつぶてを大量に作り出します。
これはかわしきれないでしょう。
「そっちがそうなら……」
「いけぇ」
リインフォースお姉ちゃんが、氷のつぶてを放ちます。
包み込むように冬美ちゃんを氷のつぶてが襲います。
「ええぇ」
リインフォースお姉ちゃんが驚きの声を上げます。
包み込むように放った氷のつぶての範囲の外側へ
冬美ちゃんは走って出たんです。
「反転ですよぉ」
氷のつぶてが一点に集中する前に、リインフォースお姉ちゃんは、つぶての
運動ベクトルを反転させ、自分の周りへ集めようとします。
「遅いっ！」
しかし、冬美ちゃんはその前にリインフォースお姉ちゃんの懐に飛び込みます。
そして、素早くリインフォースお姉ちゃんを組落とします。
「完全に極まっただろ」
「ギブですよぉ」
完全にスリーパーホールドが極まりました。
これじゃリインフォースお姉ちゃんには耐えるすべがありません。
「思った以上でしたぁ、リインじゃ歯が立たないですぅ」
「これでも川崎流の師範代だからな」
「分かりましたぁ、そこらを含めてはやてちゃんに伝えますぅ」
はやてお姉ちゃんからの連絡がどうなるか、それはまた次のお話です。