めりかるうぃっしゅ えくす
〜マリアルージュは死神です〜
「ナカジマ妹、待機してるか？」
「はい、こちらスバル。司令、一体どうしたんですか？」
「警邏隊がマリアルージュらしき存在を見つけた。
すぐランスター執務官と連携して出動してくれ。
ナカジマ姉の方は、回りの避難誘導に回す」
「了解です、司令。場所はマッハキャリバーに転送してください」
「心得た」
ここは、ミッドチルダの首都クラナガンの湾岸警備隊詰め所の一角。
スバルの寮もここにある。今はティアナとスバルの二人で利用中だ。
「…ティアー、朝だよ〜起きて〜」
「うぅ・・うーん」
「ティアって、完璧超人っぽいけど、朝は本気で弱いなぁ」
「…うっさい、何があったってのよ」
「マリアルージュを警邏隊が見つけたって」
がばっ。
「いつ、どこで？」
「今マッハキャリバーにデータが送られてきてる。
すぐにクロスミラージュにも転送するね」
「こうしてはいられないわ、すぐに行かなきゃ。…と、この距離なら
走っていくのはちょっと大変かも。…バイクで行くわ。
スバル、あんたも一緒に乗りなさい」
「バイクって、ティア、持ってたっけ？」
「警邏隊装備のバイクを貸してくれるように司令に掛け合ってあるだけよ。
どれでも出せる奴は使っていいって許可をもらってるわ」
「それじゃ話が早い、すぐにいこう」
「hurry Uｐ」
そういうわけで、スバルとティアナのコンビは、マリアルージュが
現れたという場所へ、最大速度で急行する。
警邏隊のバイクである、緊急車両として最優先で走ることが出来るのだ。
ティアナのバイクの腕を持ってすれば、出動開始から１０分もあれば
楽々目撃地点に到着である。
「スバル、あんたは要救助者の捜索を。あたしは、マリアルージュそのものを探すわ。
ギンガさんに言って、ルネッサをサポートにさせるからって伝えて。
私はルネッサにそう伝えるから」
「了解ティア。マッハキャリバー、ブリッツキャリバーに連絡」
「All right:」
二人の相棒…ティアナの相棒クロスミラージュと、スバルの相棒マッハキャリバーは
早速通信に取りかかる。
その通信官僚も待たず、スバルとティアナは素早く、お互いの背後を
警戒し合いながら、先へと進んでいった。
「イクスヴェリアはどこにいる？」
「知ってるわけ無いだろ。…ていうか、お、おまえは誰なんだ」
「おまえはイクスヴェリアの居所を知っている。おまえが
イクスヴェリアを発見したはずだ」
「は、発見したって他のやつらと一緒だったっ。
あ、あの時の責任者はトレディア氏だったんだから
知ってるとすればトレディアだろ。あ、アイツに聞けばいいんだ。
お、俺は何も知らん。知らないんだ」
「では、トレディア氏はどこにいる」
「わ、わからん」
「ではそれは言い逃れのための嘘なのだな」
「そ、そんなことはない。ほ、本当の事だ。
トレディア氏の事についてなら、ほ、ほら、最後にあった場所を教える。
そこで聞き込みをすれば、な、何かわかるはずだ」
「そうか…トレディア氏について調べればいいのだな」
「そ、そうだと思う。俺たち…発掘メンバーを探すより
よっぽど合理的だぜ」
「…協力に感謝する」
「………」
「…イクスヴェリアの加護あらんことを」
…マリアルージュは、そのまま立ち去った。
おそらくは、トレディア氏について情報を集めようというのだろう。
「た、助かった…の…か…？」
その答えは、すぐには出なかった。
「…こ、こうしちゃいられない。すぐに荷物をまとめて、クラナガンを出るんだ。
マリアルージュに…」
「こちら管理局です。そこにいるあなた、大丈夫ですか？」
「か、管理局だって」
その”管理局”という言葉が、何かの引き金になったようだった。
「う、うわああ、た、助けてくれ」
「どうしたんです？何があったんですか」
「お、俺はまだ死にたくない、死にたくねえよぉ…」
スバルの目には、何もないのに周到狼狽した声を上げる男が目に入った。
「大丈夫です、こちらは管理局です。抵抗しなければ弁明の機会が
与えられますし、犯罪被害者だとすれば、直ちに保護しますから」
「そ、そういうんじゃねえ…う、うわぁあああああああ」
同じ頃、ティアナは、マリアルージュを先回りすることに成功していた。
「ホールドアップ、ゲームは終わりよ」
「誰だ、おまえは」
「ティアナ＝ランスター執務官。無駄な抵抗は止めなさい。
殺人の容疑で、マリアルージュ、あなたを逮捕します」
「出来る物なら…」
「クロスミラージュ、オーバードライブ」
「roger」
クロスミラージュのアンカーガンの変形、魔力ネットがマリアルージュを捕らえた。
そのままマリアルージュはバインドされる。
「！」
「これで、逃げられないわね。マリアルージュ、あなたを、逮捕します」
「ふふふ…マリアルージュは虜囚の辱めを受けない」
「どういうこと？クロスミラージュ、麻痺弾セット」
「無駄なことを…イクスヴェリアのために」
「まさか、人体発火！」
液状化したマリアルージュがバインドネットからあふれ出すと
そのままマリアルージュは自ら炎を上げて燃えだした。
「くっ。クロスミラージュ、消火弾発射。通信回線をひらいて
連絡先は…ギンガさんのブリッツキャリバー！」
「はい、こちらギンガです、ランスター執務官何があったんですか？」
「ギンガさんへ、こちらティアナです。
マリアルージュを一旦捕獲したものの、自爆されました。
今こちらでは火災が発生しています。対応をお願いします」
「了解よ、ランスター執務官。今消火班をそちらにむかわせます。
誘導は、マグナス執務官補佐に委任します。」
「了解。ルネッサ、消化班を率いてこちらへ」
「わかりました、ランスター執務官」
再び、場面は、スバルとマリアルージュの被害者の所に戻る。
「た、助けてくれ…な、何でも話すから、俺を殺さないでくれ」
「管理局は黙秘に対して罰することはしません。
それで、なにがあったんですか？」
「ま、マリアルージュに襲われんだ。
イクスヴェリアは知らないが、イクスヴェリアを
発掘したトレディア氏なら知ってるはずだと答えたら
イクスヴェリアの加護とかいって解放した。
そ、それで俺の知ってることは全部だ。た、助けて…」
「！」
スバルが身構える。
男がナイフを持ち出して来たからだ。
思わず間合いをひらく。
「う、うわ、い、いやだーっ」
そのナイフは、スバルを襲うためのそれではなかった。
彼が取り出したナイフは、そのまま自分ののど笛を掻ききったのだから。
「…い、いやだ、…こ、こんな…」
それが、男の最後の台詞だった。
そして、後には、事態が未だに十分には飲み込めてないスバルが残された。
とはいえ、報告だけは済ませておかなければならない。
「司令、こちらスバルです」
「おう、スバル、どうだ、生存者の確保は順調か？」
「重要参考人と思われる人物と接触、ですが、本人は
死ぬことを恐れていたにも関わらず自害しました」
「…そうか、今俺も現場に向かってるところだ。
他の任務は他の隊員に任せて、一旦おまえは
俺の所に直接報告に来い、以上だ」
「わかりました、司令」
それは、思い出したくもない光景でした。
マリアルージュの自害も、男の自害も。
その、参考人である男の死について…いや、それを見た
スバルと、司令との会話は、また別のお話といたしましょう。