めりかるうぃっしゅ えくす
〜無限書庫は情報の宝庫です〜
ここは、管理局本局にある無限書庫。
管理局創設時から本局にある、管理局が所有する最大規模のロストロギア。
いや、むしろ、時空管理局が無限書庫のある場所に設立されたというべきだろう。
それは、無限の情報の宝庫であるが、 ユーノ＝スクライアが司書長に就任するまで
捜査官が行き当たりばったりに 情報を探す、情報のワンダーランドに過ぎなかった。
今でも、ユーノ司書長がいなければ、行き当たりばったりに情報を探すしかない
情報のワンダーランドには間違いない。そして、ユーノ司書長は、自分のための
発掘調査に出かけることも良くある。
情報が常に手に入るとは限らなかったのだ。…新たな司書二人が現れるまで。
『パスワードを確認、ID情報認証、入館を許可します』
「冬美ちゃん、アカリちゃん、ここが無限書庫だよ」
「これが無限書庫…ヴィヴィオの話には聞いてたし、ここに来る前に
注意事項は聞いたつもりだけど、実際に見ると…想像以上にすげぇ…」
「本当に無限に本が詰まってる」
「無限書庫という名称は、無限に情報を集めるからつけられた物で
無限に情報がある、という意味ではありませんわ。
無限書庫自身、ある程度独自に情報を整理し続けていますし
その整理にも一定のパターンは見られますから、慣れた司書の方でしたら
検索魔法に頼らなくても、ある程度の情報は得られるそうです」
「けど、この情報量だろ、どうやったらいいのやら…」
「グレアム提督は、無限書庫をよく利用しておられたそうです」
「グレアム提督って、はやてお姉ちゃんの後見人の、グレアムおじさんの事？」
「その通りです、ヴィヴィオお嬢様」
「エミーちゃんを陛下っていうのはいいけど、お嬢様っていうのは何か変だよ」
「ですが、呼びたいように呼ぶようにおっしゃったのも、お嬢様です」
「…ま、そっか。…それで、何をすればいいの？」
「ランスター執務官からの要請です。
イクスヴェリア、及び、マリアルージュについての情報が必要だそうです」
「それは、どういう理由からかしら」
「連続殺人事件に関わっているとのことです」
「そう、…ある程度絞り込みを掛けた方がよいのですね」
「古代ベルカとも関連があるようなので、検索キーとして使われた方がよいかもしれません」
「だけど、こういう検索は、先入観なしに粗っぽく検索してから
絞り込む方が、かえって必要情報を見つけやすい物だよ。
ねえ、エミーちゃん。ヴィヴィオがまずは粗っぽくイクスとマリアについて調べるから
エミーちゃんは、その情報をさらに絞り込んでみてくれない？」
「ええ、わかりましたわ。高町さんは、細かい情報の検索は苦手ですけど
広範囲に粗い検索を行うのは、私より上手ですもの」
「デバイスの支援もうけられるからだけどね、行くよ、ライチェントゥークス」
『わかりました我が主。最大限魔力を我が主に送れるようにいたします』
「検索キーワードイクス・イクスヴェリア・マリアルージュの並列。
内部検索順序データ記録日時降順、補助整列キーワード事件の時間系列降順。
全力全開検索魔法発動！」
「うわ…」
「…ヴィヴィオの回りを本が舞ってる…」
「無限書庫のデータは、魔道プログラムが書物化した状態で保存されております。
皆さんの目には書物が舞っているように見えるでしょうが、実際には
高次元データベースに記録されている情報が、検索キーワードによって
書物の形式にソートされ、それがさらに魔法の力によって絞り込まれているのです」
「オットーさんもそういう検索魔法が使えるんですか？」
「無限書庫自身のデータ整理機能によってソートされている情報でしたらある程度までは。
ですが、無限書庫の生のデータをソートして情報を取り出す高度な魔法が
使えるのは、ユーノ司書長と、聖王の能力を持つヴィヴィオお嬢様、そして
エミー陛下の３人だけです」
「こんな膨大な情報の宝庫に司書が３人しかいないのかよ」
「…もっと司書はいるのですけれども、私と同じように、情報の表面をなぞることしか
出来ないのです」
「…ヴィヴィオちゃんの回りを舞う本の動きが止まった…」
「…あーつかれたぁ。お腹へったぁ…」
「ふふ。終わりましたら、後で私がキャラメルミルクをごちそういたしますわ」
「エミーちゃんもキャラメルミルクが作れるの？」
「ふふ、本局にもコックさんぐらいはいるものですわ」
「あ、そっか。…なのはママのでないのなら、キャラメルミルクにはこだわらないよ」
「では、何か別な物を用意してくださいね、オットー」
「かしこまりました、エミー陛下」
「さて、…では、この中から、必要と思われる情報をピックアップいたしましょう。
………高町さんの検索が的確なおかげで、必要な情報の拾い出しは
すぐにできましたわ。…さて、オットー、まずは何から知る必要がありますか？」
「イクスヴェリアとは何であるか？をお願いします」
「わかりました。イクスヴェリアとは何か、について検索……
……『イクスヴェリア・あるいはイクス。古代ベルカ時代末期に活躍した
ベルカ王族の一人。聖王に反旗を翻しゲリラ戦で聖王を苦しめた。後
聖王の配下となり眠りにつく』
…この程度の要約でよろしいでしょうか」
「イクスヴェリアの能力について」
「イクスヴェリアの能力…検索してみましょう…
『イクスヴェリア・別名、冥王。死者の王であるが故に冥王と呼ばれる。
自らの体内にイクスヴェリア因子を持ち、その因子によって死者を支配する』
…これだけでは意味がとれませんね」
「…では、ひとまず冥王イクスヴェリアについて調べるのを止めて
マリアルージュについて、マリアルージュとは何かをお願いします」
「マリアルージュについて…『マリアルージュ：冥王イクスヴェリアの兵士。
亡者の群れ』…これぐらいですか」
「もう少し詳しく」
「…もう少し詳しく…『マリアルージュ、イクスヴェリア因子によって作り出される
死者の兵士。その戦闘能力はエース級魔導師に匹敵する場合もある。きほんてきに
その能力は素体に依存するが、一般に素体よりも魔法力は増大する。
生前の記憶は保持していないと考えられるが、生前の技能については
継承しているという説もある、情報欠落により詳細不明』…
イクスヴェリアについてより、マリアルージュについての情報の方が
少ないようですわね」
「エミーちゃん、それってヴィヴィオの探し方が悪かったの？
もう一回、マリアルージュについて検索魔法使った方がいい？」
「どうでしょうね、オットー？」
「それを判断すべきなのは、私ではなく、ランスター執務官です。
まずは、ランスター執務官に、以上の情報を送り、判断を仰ぎます」
「そうですか、では、私たちは一旦本局の食堂に向かってよろしいですか？」
「ええ、それはかまいません、エミー陛下」
「高町さん、では、私たちを本局の食堂まで案内してくれませんか」
「あれ？エミーちゃんも、食堂の場所ぐらいわかるんじゃないの？」
「一応は、まだ私の保護観察は解けておりませんから」
「…そっか。だれかがついてないといけないんだ。冬美ちゃん、月光ちゃん
食堂にいこうよ。早くいこ、ヴィヴィオお腹ぺこぺこなんだ」
「ったく、ヴィヴィオは食いしん坊だな」
「だけど、ヴィヴィオちゃん、大きな仕事をしたんだよ」
「…やっぱ、絶対ヴィヴィオはパティシエより向いてる仕事あると思うな」
「冬美ちゃんだって、格闘家以外に何か才能が見つかっても、格闘家を目指すでしょ。
ヴィヴィオだって同じことだよぉ」
『冬美さんは、向いていることも拳法家であると思われますが…』
「物のたとえだよライチェントゥークス、それより早く食堂〜おやつおやつおやつ〜」
「ヴィヴィオちゃん、食堂は逃げないよ」
「わかってるけどお腹すいたんだもん」
そう、食堂は逃げません。
ですけれど、事件は無限書庫で起きているわけではありません。
ヴィヴィオとエミーちゃんが調べた情報が、ティアナお姉ちゃんの
所へ届けられてる最中、クラナガンではとんでもないことがおきてました。
そのとんでもないことは、また別のお話です。