「とーちゃーく」
「…あれだけのことをした後で、よくそんな脳天気でいられるわね、高町さん」
「やってる最中じゃないから問題ないよ。それより、エミーちゃん大丈夫？
　熱とか出てない？」
「普通、怪我を心配しないかしら、高町さん」
「エミーちゃんも普通通りだね」
「そうかもしれないわね」
「それで、ヴィヴィオの砲撃って、結局効果あったの？無かったの？」
「超高圧魔力により小規模次元震発生、エミーが次元震を押さえなければ
　海鳴市にかなりの被害が出ていてもおかしくなかったな」
「クロノおじちゃん。そんなに無茶したかな？」
「アルカンシェルを自分に向かって打ち込むだけで十分すぎるほどの無茶だよ。
　本当にそこまでやらなければならなかったのかい、ヴィヴィオ」
「ユーノパパ、…えと、えと、あの時はヴィヴィオ、ヴィヴィオに出来る
　全力を出すので精一杯で、エミーちゃんの魔力とか、気が回らなかったから」
「あーん、エミーお嬢様～。最後のジュエルシードで次元震を止めずに
　アルハザードへの跳躍を選んでたら、アルハザードに行ける可能性がありましたのに～」
「クアットロ、その可能性はほとんど無かったわ」
「ドゥーエお姉さまのいうとおりだけど、もうドクターの夢がかなう可能性は０よ。
　計画は完璧だったはずなのに～」
「完璧な計画なんてないわ。人知及ぶ限りもっとも成功の可能性が高い計画があるだけ。
　私も、アルカンシェルによって自らに魔力を供給する、などという無茶は想定外だったわ。
　直接アルカンシェルの砲撃を仕掛けてくる場合については、対応してたのですけどね」
「…結局は、我々が未熟だったということだ、…フェイトお嬢様と、フェイトお嬢様が
　育てられた二人の子の連携に、私は、聖王より力を頂いたにも関わらず
　勝つことが出来なかった。それが、私がこのようにとらえられた理由のすべてだ」
「…普通の人間なら、プレッシャーの掛かる状況になれば、普段では考えられない
　ミスをこそ犯すものだ。心とは、弱さをもたらすのではないか」
「セッテ、だが、心とは、強さをもたらすこともある。
　現実に、心という要素抜きで立てたウーノの予測の中に、ヴィヴィオの
　行動は、全く入っていなかったではないか」
「そういう話は後で聞くわ」
「ティア、後っていっても、こいつらどこへ入れとくの？
　アースラもクラウディアも沈没しちゃったし、アースラの乗員に
　クラウディアの乗員を足したら、翠屋とエイミィさんの家じゃとても裁ききれないわよ」
「わたしの家はもう売り払ってもうたからなあ」
「エミーの家があるだろう、両艦の乗員はあれを使えばいい、見た目はそれほど大きくもないが
　地下の研究所は結構な広さがある。つめれば100人ぐらいならなんとかなるだろう」
「ドクター？」
「…ふふふ……くっくっく………はははは……わーはっはっはっはっ…
　わかるかね、評議会の諸君。見たかね、レジアス。
　私がおまえ達を許さなかった理由がわかるかね？
　おまえ達の望んだ戦闘機械にこんな事が出来るかい？
　私の作品は、決して戦うための機械などではない、私は命ある者を作るのだよ。
　心を持った存在を出しているのだよ。君たちの思い通りに動く人形などではないのだ。
　私の思い通りに動く木偶でもないのだ、魂のないゴーレムなどでもない。
　ましてやゾンビなど作ろうと言うのではないのだ。私は、目が見えないものの目を開け
　手のないものに手を与え、歩けない者には足を、そして、力なきものに力を与える
　そういう生み出す科学者なのだよ。
　わかるかね、機動六課の諸君。クラウディア乗員の諸君。
　私の作品をどう呼ぼうと、それは諸君の勝手だ。
　だが、私の作品は、その生まれ方がどうあれ、その能力がどうあれ
　人間なのだよ。人が得たいと願う力を持つ、人間なのだよ。
　いずれ来たるべき人類が手に入れるだろう力を、先行して手に入れている先駆者なのだよ。
　わかるかね？エミー、ヴィヴィオ、…ここが、アルハザードなのだよ。
　私はここまでは来た。この先は君たちが進むといい。
　私はもう十分だ。私が手に入れようとしたものは、既に手に入れた」
「パパ、アルハザードは、次元の狭間の向こうにあるものではないの？
　パパもママもそういって教えてくれた。次元の向こうのアルハザードは存在しないの？」
「…私はそれについて何も知らない。次元の狭間に何か世界があるのは事実だ。
　だが、その世界がアルハザードなのか、それとも時の止まった永遠の静寂の世界なのか
　それともあらゆる生命が存在を許されない永遠の死の世界なのか、それとも
　他の次元世界と何も変わらない、我々にとって当たり前の世界なのか、それもわからないね。
　何しろ、誰も行って帰ってきたものは、いないんだから。
　ふふふ……エミー、おまえには謝らねばなるまいね。
　私の最高傑作、私の本当に愛した娘は…」
「パパ、それは知ってたわ。ママからパパのことを聞いてたときからずっと。
　けど、パパ、それはパパの口から言わないで。
　…わかってても、聞きたくない。
　嘘でいいから、……私に言って。
　パパの最愛の娘は、私…エミー＝シュミットだって」
「エミー、おまえが人を導く聖王になるつもりなら、不愉快な真実から逃げてはいけないよ。
　私の最高傑作、私の本当に愛した娘はヴィヴィオだよ。
　だが、エミー。おまえは聖王になる資格があることを証明したんだよ。
　おまえは、私が目指したアルハザードより、この世界を守ることを選らんだ。
　もし、おまえが聖王になりたいというのなら、おまえの決断が正しいのだよ。
　私のことは忘れなさい、そして、聖王として人を導く力を手に入れなさい。
　エミー、おまえには出来るはずだ。…おまえの瞳にも、ヴィヴィオと同じ光が宿っているのだから」
「…高町さんと同じ光？」
「くっくっく…はははははは…ウーノ、私の夢は終わらない。
　管理局がエミーをどう育てるか楽しみだ。私は監獄の中で諸君がエミーをどう育てるか
　楽しみに見ていることにしよう。
　騎士カリムの予言の力でも与えるかね？それともヴィヴィオと同じような
　魔力を扱う力を…？」
「ははは、ドクタースカリエッティ、まさかあなたほどの科学者が
　騎士カリムの予言なんて信じてたんですか？」
「なんか意外やな」
「…天才って、常識がない人の意味だって、本当のことみたいね」
「ティアもね」
「スバル、何がいいたいわけ？」
「え、ティアも天才だって」
「はあ？そりゃあたしが非常識だって言いたいわけ」
「ひたいひたいてばティア～」
「高町さん、あなたも笑っているみたいだけど、どういう事かしら」
「あのねエミーちゃん。騎士カリムの予言って、書いてるのユーノパパなんだよ」
「我々が古代ベルカ語に翻訳している」
「まあ、作るのは年に一度だから、そんなに苦労はしないけどな」
「予言の元になる情報を集めるのに、一年ぐらいはかかってますけど」
「おかげで、無限書庫にはあまり人員が回せない。
　今まで、騎士カリムの予言のことは、管理局での重要機密だったんだ」
「…だったって、クロノくん。機密をそんな簡単に話しちゃっていいの？」
「プロジェクトFで作られている聖王がスカリエッティの陰謀だと示唆する
　騎士カリムの予言を作って、これで聖王教団の分離を阻止するつもりだったけれど
　無限書庫の司書の中に、聖王教団派が入っていて、彼が暴露してしまった。
　だから、もうこれは秘密じゃないんだ」
「結構ユーノには世話になったんやけどなぁ。
　機動六課作るのにつこうた予言も、ユーノに頼んで作ってもろうたし」
「えー、それほんとう？」
「ああ、クアットロ、本当だよ。評議会と地上本部が、何か秘密の研究を
　しているらしいことは知っていたし、人造魔導師計画や戦闘機人計画の
　存在も、気配ぐらいは伝わってたからね。
　その二つを組み合わせて、ちょっとオーバー気味に演出したんだ。
　まさか、本当にそうなるとは思わなかったよ」
「…その予言を知って事を起こした私は、一体なんだろうね？
　まんまと君たちに乗せられたというわけだ」
「…あなた方が、そんな戯言にのるなんて思っていたら、あんな予言は作りませんでしたよ。
　まさに、藪をつついて蛇を出したわけだ」
「未来はいつでもこんなはずじゃないことから出来ているんですよ」
「だが、こんなはずじゃない事が、いつでも悪いことであるわけではないよ。
　…さて、こんなところで無駄話して時間を潰しているわけにもいかないんだろう。
　さて、それで、我々はどこに監禁されるのかね？我々だけ個人転送で先に送るかね？」
「そのほうがよさそうですね。…フェイト、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル
　スカリエッティと脱獄したナンバーズを、本局に個人転送しよう。
　はやて、本局から交代の船が来るまで、クラウディア乗員の指揮を頼む」
「了解や、クロノ提督」
「私はどうなるのかしら？」
「君は脱獄囚ではない、はやてに身柄は預けておく。いずれ裁判があるから
　そのときに本局に出頭してもらうことになる」
「…パパ、ママ…」
「エミー、お別れだ。なに、裁判ではまた会うこともあるだろうさ、…証人としてね」
「エミー、あなたも、ドクターの愛した娘の一人よ。それじゃ、体には気をつけて」
「エミーお嬢様、お別れです。私の力不足をお詫びします」
「あらら～私のほうがエミーお嬢様にお詫びして欲しいわよ～」
「クアットロ、未練が過ぎる」

「…なんだか、我々が完全に無視されているようだが」
「べつに無視しているわけではありませんよ、クアットロに作られたシグナムさん」
「予定とちがうじゃねーか、まだ消えてねーのかよ」
「独自のリンカーコアが無い、という説明だったが、どうやら違うようだな」
「どういうことかしら～」
「あの陰険メガネが本当のこと言うわけないでしょ。
　いいことでも、わるいことでもね。
　あんたらは、エミーと同じ扱いってこと。
　スバル、エリオ、キャロ、こいつらを、とりあえず
　エイミィさんの家へつれてくわよ。
　こんなこともあろうかと、クロノ提督が、留置場は作ってあるわ」
「さっすがクロノ提督、用意周到なんだ」
「13年前、闇の書事件の時に、ヴォルケンリッターを入れる可能性があったから
　つくってあるだけだけどね」
「…そこに、オリジナルではないとはいえ、ヴォルケンリッターである我々が入る訳か」
「なーんかご都合主義だよな」
「それは言わない約束では～」
「なんにせよ、これで一件落着や、武装隊B分隊はフォワードチームと合同で
　ハラオウン家に銀のヴォルケンリッターを護送。
　ティアナ、全体指揮頼むで。
　A分隊、C分隊D分隊は、エミーの家の確保や。
　私が直接指揮とる。
　E分隊は、クラウディア乗員と、アースラスタッフの護衛。
　グリフィス君、一般乗員の引率頼むで。
　ある意味、一番大変な仕事やし。
　なのはちゃん、ヴィヴィオと一緒に翠屋に帰ってや。
　エミーも一緒にな」
「うん、わかったはやてちゃん。
　さあ、行こう、エミーちゃん」
「…はい、なのはおばさん」
「さてと、あたしは本局に帰るよ。フェイトが心配だからね」
「ああ、お願いするよアルフ、あと、無限書庫の仕事が溜まってないかどうか確認しておいて」
「ああ、それもやっとくよ。どうせすぐ呼び返されるだろうけどね」
「わかってる。けど、僕にもすこしぐらい休みをくれてもいいだろ」
「まあね。半日ぐらい休んでも罰はあたりゃしないさ」
「パパ～一緒にいこ～」
「ああ、一緒に帰ろうか、ヴィヴィオ」

めりかるうぃっしゅ

～無限の欲望の終着駅なの～