めりかるうぃっしゅ
〜これが本当の全力全開なの〜
私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
なんて、ゆっくり自己紹介している暇はありません。
今ヴィヴィオは、エミーちゃんと、本気の勝負の真っ最中です。
エミーちゃんは、ジュエルシードを既に１６個解放して、ナンバーズに
魔力供給をしているにもかかわらず、一時間後に自爆するぐらいまで
オーバードライブを掛けた、アースラの魔力炉から魔力供給を受けてる
ヴィヴィオと同等の魔力を発揮しています。
はっきり言って、大ピンチです。
『ですが、エミーさんの身柄を確保しない限り、スカリエッティは
アルハザードへの扉を開いてしまいます。なんとしても、阻止しなければ』
「わかってるよライチェントゥークス。
ここからが、本当の勝負だね」
「高町さん。あなたに恨みはまったくないけれど、ゆっくり勝負するつもりはないわ。
一気に勝負をつけさせてもらうわ、ジュエルシードXVIIからXX、解放」
「レイジングハート、エクセリオンバスター Ａ．Ｃ．Ｓ…ドライブ」
「Yes,my lord」
「無駄よ。私のところにたどり着く前に、撃ち落とすわ」
「やってみなければわからないっ！」
ヴィヴィオは全力で突撃します。
エミーちゃんみたいな、定点砲撃型魔導師を相手にするときには、実は
作戦とか考えてもあまり意味がありません。
近づいて、シールドを破って、魔力打撃を与える。
他に出来ることがないんです。機動力を使って攪乱するといっても
相手が動かないのだから、こちらが動いてもつかれるだけなんです。
「高町さん。聖王の鎧に頼って突撃するつもり？」
エミーちゃんの砲撃が来ます。
「flash move」
高速機動でかわします。
ですが、ヴィヴィオの目には砲撃と見えたエミーちゃんの魔法弾も
エミーちゃんにとっては、アクセルシュートやプラズマランサーのような
誘導弾の一種にすぎなかったようです。
何発ものエミーちゃんの砲撃が、誘導されてヴィヴィオに襲いかかります。
『我が主、あの魔法弾が直撃すれば、いくら聖王の鎧でも持ちこたえられないかもしれません』
「わかってる。…ブリッツアクション発動！」
エクセリオンバスター A.C.Sは、魔法刃でバリアを突破し、零距離で砲撃を加える魔法です。
定点砲撃型の魔導師相手には絶大な威力を持つはずですが、たどり着く前に
撃ち落とされては意味がありません。
高速機動で…えっ！
「ブリッツアクション解除、ブレイクシュート、フラッシュムーブ。…幻影っ！」
ブリッツアクションが見えてる？
ブリッツアクションの機動を予測して魔法弾を先回りして
エミーちゃんが撃ってきました。
これは、ブリッツアクションが見えてる、ということです。
あらかじめプログラムした動きしか出来ない、ブリッツアクションでは
動きが見えたら終わりです。ブリッツアクションを解除して
魔法弾をエクセリオンバスターで撃ち落とし、フラッシュムーブと幻影を組み合わせて
姿を消します。
「無駄よ、高町さん。見えてるわ…ほら、そこっ！」
「Round Shield」
斜めにシールドを発生させて魔法弾を逸らし、反転しようとするところを
レイジングハートで撃ち落とします。
「…ふふ、まだがんばるのね、高町さん。
さすがは、不屈のエースオブエースの娘ね」
「…響け終焉の笛、ラグナロク！」
「！」
そういえば、ヴィヴィオははやてお姉ちゃんの結界を破壊してました。
けど、結界を維持していなければ、変態博士達は、ここから逃げ出すかもしれません。
はやてお姉ちゃんが攻撃魔法を使っていいんでしょうか？
「武装隊A分隊はエミーの家の制圧を開始や。
B分隊はガジェットを警戒して北方に展開、C分隊は同じく南方展開
D分隊は予備や、わたしの回りへ。
B,C両分隊が展開ししだい、E分隊は私の援護。
アルフ、ユーノ師匠長と共同でなのはちゃんの救出や」
「はやて、武装隊が来たんだね」
「そうや、クラウディア到着や。…まあ、わたしも、結界が破られるまで
きぃつかんかったんやけどな。
本局武装隊、なのはちゃんの教え子達や。魔力値B級いうても、実力は折り紙付きやで。
さあ、JS事件を、ほんまにおわらせような」
「…ふふ、高町なのはの教え子達か。なら、こちらも相応の対応をしなければなるまいね。
ウーノ。ガジェットを全力出撃。迎撃しようじゃないか」
「はい、ドクター」
「ガジェットぐらいに負ける子らやないんよ」
子ら、といっても、はやてお姉ちゃんより年上の人が半分以上です。
なのはママの教え子の武装隊、魔力値B級でも、実力は空戦A級以上揃い。
これが４０人です。戦いが数だというのが本当なら、私がエミーちゃんを押さえられる限り
今度こそ、武装隊とはやておねえちゃんがなのはママを救出してくれます。
「馬鹿なっ！早い」
「落ち着け。相互の見張りを密に、弾幕を張って近づけるな。…その間に、私が狙撃で落とす」
「わかりました、分隊長」
突然海中からわき出たガジェット相手にも、決してあわてません。
普通のガジェットII型より高性能なようですが、なのはママが鍛えた
武装隊員です。すぐに対処法を見つけて反撃です。…あれ？
「馬鹿な！向こうも連携して射撃してくる？…う、うわああああ」
「分隊長っ！」
「こちらはやて、D分隊は直ちにC分隊の退却援護。
C分隊は後退開始。全速力や。
リイン、予定変更や。わたしはまずガジェットを潰す。
誘導たのむで」
「はいっ、わかりましたはやてちゃん」
「セッテ、反撃開始だ。八神はやての行動を抑止」
「わかりました、ドクター」
「クロスミラージュ」
「roger」
セッテがブーメランが魔法弾をはやてお姉ちゃんに向けて放ちます。
その魔法弾にむけて、長距離射撃モードのクロスミラージュを使って
ティアナおねえちゃんが射撃、魔法弾の破壊を始めます。
「…ディアボリック・エミッション！」
南側へディアボリックエミッションで攻撃を加えます。
これで、ガジェットはかなり叩けたはずです。
「C分隊D分隊は、ガジェット破壊確認後南方に再展開。
B分隊状況報告…」
「はやて、A分隊より報告。ガジェットIII型の襲撃により６名負傷。
………A分隊全滅」
「……クロノ提督、クラウディアの転送装置でA分隊の収容頼むわ」
「了解。A分隊収容開始だ。…馬鹿な、ガジェットがこれほどの性能を持ってるはずがない…」
「クロノ提督かね。お久しぶり」
「スカリエッティ」
「これも聖王によって解放されたウーノの能力だよ。
同時に１０００機のガジェットドローンを制御すると同時に
１００００人以上の標的を捕捉しておける。
クラウディアが来たのなら、お遊びはこれまでだ。
歴史の目撃者になれる幸運をかみしめて、ゆっくりと見学しているといい。
エミー。そろそろ出かけるようにしよう」
「はい、お父さま……高町さん。あなたとも、これでお別れね。
アースラからの退艦もおわったようだし、これで、あなたの万が一もなくなるわ」
エミーちゃんが、寂しそうに笑います。
けど、ヴィヴィオの万が一もなくなるって、どういう意味でしょう。
！…ふっと、体から力が抜ける感じがします。
けど、まだ、アースラが自沈するには早すぎます。
一体なにが起きたんでしょうか。
『アースラが破壊されました、我が主』
「えと…それって、もしかして」
『次元跳躍攻撃です、我が主』
「けど、一撃で次元航行戦艦撃沈？シールドも張ってたはずなのに」
『輸送船だからシールドも昔のような強固なものは装備してません、我が主』
「あ、そうなんだ…けど、これで魔力供給停止ってこと？」
「そうよ、高町さん。…これで、１％の可能性もなくなったわね。
そろそろお別れの時だわ。他の機動六課メンバーにも、下がるようにいって欲しいわ。
巻き込まれたら、一緒にアルハザード行きよ」
「………だめだよ、エミーちゃん。
そんな、寂しそうに笑って、お別れの時だなんて言うのなら、行くべきじゃないよ。
……リインフォースお姉ちゃんとは、事情が違うんだよ」
「だけど、あなたには私を止める力はないわ。魔法の力も、言葉の力も。
もう終わりよ」
「まだ終わりじゃない！エミーちゃん、まだ…ヴィヴィオのお話は、始まってもないよ」
「私からのお話は終わりよ」
エミーちゃんが手を一振りすると、ヴィヴィオだけではなく
ヴォルケンリッターのみんなも、フォワードチームのみんなも
それどころかフェイトママまで、全員にバインドが掛かります。
圧倒的な魔力差がないかぎり、こんな器用なまねは出来ないはずです。
ヴィヴィオもこれでは本当に手も足も出ません。
「パパ、そろそろ出かけてもいい？」
「そうだね。…そろそろ、出かけるとしようか。
ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、セッテ。
エミーの回りへ。…ウーノ、アルハザードへの跳躍の最終計算を頼むよ」
「わかりました、ドクター」
「エミー。クラウディアの牽制は頼むよ。
もちろん、機動六課組のバインドも」
「わかってるわ。パパ」
「うふふ〜やっとドクターの夢が叶うわね〜」
「そうね、クアットロ」
「フェイトお嬢様、お元気で。みなさんも、ごきげんよう」
「…自分の甘さがわかっただけでも、おまえ達と戦ったかいがあった」
「エミー。最後が肝心よ。油断のないように」
「わかってるわ。ママ。
高町さん。…そんな顔しないで、見送って欲しいわ。
制御はきちんとするし、アルハザードからいずれ帰ってくるから。
たとえ、１％の可能性を１００％に変える力があったとしても、もはや可能性は…」
…違う。高町さんの瞳は、まだ生きてる。
涙を浮かべていても、それは絶望の涙じゃない。
自分の無力さをかみしめて泣いてるんじゃない。
まだこの状況でも、出来ることを探している。
自分の力で、自分の出来ることを見つめている。
…そう…これが…回りが絶望で真っ黒に塗りつぶされれば塗りつぶされるほど
そこにあるわずかな希望の光がはっきり見える。
そのわずかな光に向かって、すべてを賭けて飛び込むことが出来る。
それが…ストライカー。そしてあなたは…聖王である以上に…高町なのはの娘、高町ヴィヴィオ！
「レイジングハート、カートリッジロード、フルドライブ。
ライチェントゥークス、爆発したアースラよりエネルギー回収、魔法式解析は完了してるね、
バインドブレイク」
「Yes,my load」
『わかりました我が主』
！バインドブレイク、もう魔法式をみやぶってバインドを解除した？
「エミーちゃん。……もし、私の言葉が…言葉だけじゃ胸に響かないっていうのなら
ヴィヴィオの思い、ヴィヴィオが伝えたいことのすべてを、別なやり方でぶつける！」
「…そうね。でも、どんな形で？」
「…ヴィヴィオが、変態顔芸博士の言うとおり、スカリエッティの最高傑作だというのなら
そして、スカリエッティがエミーちゃんのパパだっていうんだったら
ヴィヴィオが、本当に、スカリエッティの言う、聖王の力があるってことを証明する。
こんなはずじゃない未来じゃなくて、こうなるはずの未来をつかみ取る力を
ヴィヴィオが見せる！
本当のヴィヴィオの全力全開で、エミーちゃんを引き留める。
行くよ！ライチェントゥークス！レイジングハート！」
「一体なにを？もう一度バインドすれば何も出来なくなるのに」
バインドなんてさせません。バインドに捕捉されないような高速機動で
バインドを回避します。とりあえずの魔力はレイジングハートのカートリッジで対応です。
そして、次元航行艦はアースラだけじゃないっ！クロノおじちゃんに念話で頼んで
クラウディアのコントロールをヴィヴィオに回してもらいます。
さらに、ライチェントゥークスで動力炉制御開始です。
リミットタイムの設定は６００。そしてアルカンシェル装填開始。
アルカンシェルの装填もオーバードライブで済ませて６０秒以内に発射可能に持ち込みます。
時間を掛けたらエミーちゃんにこちらの動きを見きられます。
総員退艦…クロノおじちゃん、ごめんね。
「クラウディアからの魔力供給で対抗するつもりなのね。
クラウディアはまだ浮いているから撃沈するわけにもいかない。
なるほど、考えたわね。けど、高町さん。私の誘導弾が回避しきれるかしら？」
「仕切れるかどうかじゃない！絶対に避ける！」
「早い！…この速さ…一体どれほどのオーバードライブを？」
「そんなこと、考えたこともないよ！」
そう、そんなこと考えてもいられません。
エミーちゃんを止める魔力を発揮するには、これぐらいの高速が必要なんです。
衝撃波で海が裂けるぐらいの高速が。
『我が主、ですが、これではアルカンシェルの照準が定まりません。
主に直撃するようにしなければ、海鳴市が消滅です』
「わかってる、ライチェントゥークス、制御して」
『無茶言わないでください、追い切れません、我が主』
「じゃあ、発射の瞬間に…」
「よう、ヴィヴィオ、やっぱり真打ちは最後に登場するもんだろ？」
「ヴァイスおにいちゃんっ！」
「事情はライチェントゥークスから聞いてるぜ。
発射タイミングはストームレイダーに転送済み。
思う存分暴れていいぜ。俺が、絶対に照準ははずさねえからよ」
「けど、ヴァイスお兄ちゃんは、どうやって逃げるの？」
「…もう退艦は終了したよ。アースラが破壊された時から順次退艦を進めていたからね。
残っているのは、僕と、ヴァイス曹長だけだ」
「そういうことだ、安心して全力でいきな、ヴィヴィオ」
「うん、ありがとう、クロノおじちゃん、ヴァイスおにいちゃん」
「…なんで、僕がおじちゃんで、ヴァイス曹長がお兄ちゃんなんだ…」
「友達の親父じゃ、おじちゃんとしかよべねえだろ」
「まいったね…」
「なんていってるばあいじゃないぜ。……この一発…絶対に…決めるっ！」
「アルカンシェル？正気？けど、私の魔力の全力で聖王の鎧を張れば直撃でないかぎり…」
「エミーちゃん、私のねらいはそうじゃないよっ！」
「ヴィヴィオっ！アルカンシェルを直撃で受けてどうするつもりっ！」
思わずヴィヴィオが笑顔になります。
「エミーちゃん、やっと、名前でヴィヴィオのこと、呼んでくれたね。
…これが、ヴィヴィオの全力全開っ！
アルカンシェルの直撃を聖王の鎧で受けて、その魔力をリンディおばあちゃんの
光の翼で回収、その回収した魔力で、聖王の鎧を強化、連鎖的に光の翼を広げて魔力を蓄積、
そして…蓄積した魔力を魔力打撃に変換して、エミーちゃんにたたきつけるっ！」
「無駄よ、普通に…」
「そう、普通にぶつけたんじゃ無理だから、アルハザード級魔力炉…
…プレシアおばあちゃんが開発した、アルハザードにも行ける魔力炉…の
構造を応用した爆縮式魔力炉の反応機構を応用した魔法…ヴァイニシング＝インプロージョン！」
レイジングハートのブラスタービットを、通常の４つではなく３２個使って
その各々から魔力打撃の砲撃を加えます。
さらにその砲撃で跳ね返される魔力を封じ込めるために第二波の砲撃として
魔法弾を打ち込み、その爆発の反動を、二回目のブラスタービットの砲撃で打ち消す。
内部の魔法圧が、エミーちゃんの聖王の鎧の圧力を超えたなら、魔力打撃で
エミーちゃんを落とせるはずです。
『主、我が主っ！』
…あ、…ヴィヴィオの魔力のほうが…先に、尽きたみたいです。
目の前が真っ暗になります。やっぱり、海に落ちたら、BJがあっても、溺死でしょうか……