めりかるうぃっしゅ
〜スバルお姉ちゃんは気配りさんなの〜
ここは、喫茶翠屋です。
普段は、士郎さんに桃子さんになのはさんに我が主の４人が暮らしているだけなのですが
今日は、機動六課メンバーばかりではなく、冬美さんや月光さんまでがお泊まりなので
極めて手狭になってます。
なのはさんの普段の部屋が部隊長室としてリインフォースさんとはやてさんの部屋にしてしまうと
もう残ってるのは翠屋の店内しかありません。
フェイトさんが泊まるときは、いつもなのはさんの部屋を使っているのですが
今回は特別にはやてさんに寝てもらってます。
はやてさんは、普段通りフェイトさんにその部屋を使ってもらう予定だったのですが
フェイトさんシグナムさんが、無理矢理に押し込めてしまいました。
「部隊長、もう起きておられたんですか」
そういって、なのはさんの部屋の中に入っていったのは、スバルさんです。
「もう起きてたんやのうて、まだ寝てへんのよ」
「部隊長は人間なんですから、寝ないと体に毒ですよ。
あたしみたいに、４日ぐらいは寝なくても全く平気なんてわけにいかないんですから」
「せやな。スバルはずっと起きてたんか？」
「ええ、何か連絡があったらと思って待機してました。
シグナムさん達は、ぐっすり眠ってますけど」
「ぎりぎりの戦闘をしようっちゅう前や、むしろゆっくり眠ってる方がええわ。
な、ライチェントゥークス」
「ライチェントゥークスもこっちに来てたんですか？」
「私が呼んだんよ。ヴィヴィオの普段の生活について、ゆっくり聞きたかったしな。
気持ちが高ぶって眠れへんし、誰か起こすのわるいし、こういう時でもなければ
ヴィヴィオの生活について聞くこともできへんし、ちょうどええ機会やってん」
「話し相手がいるならあたしがつきあいますよ」
「そうか。なら、しばらく話し相手になってくれるか」
「ええ、そのつもりで来ましたから」
「まず最初に聞きたいんやけど、寝てないいうてどうしてわかったん？」
「扉が開いて明かりがついてればすぐわかりますよ」
「明かりがついてても寝てることもあるやろ」
「普通なはないですよ」
「…私は、ようあるわ。椅子に座って、眠いおもうてそのまま仮眠とってることな。
眠らずに済むいうわけにいかんけど、仮眠とるのは上手になったんよ」
「体に悪いですよ、やっぱりゆっくり寝た方が」
「これぐらいで体壊してるようやったら、隊長はつとまらへん。
ほんま、管理職は激務やで」
「道理でフェイトさんが無理矢理に個室を割り当てたわけですよ。
みんなと一緒じゃ、全然休まらないですね」
「まあな……せや、スバル、エースオブエースとストライカーの違いって、なんや思う？」
「なんですか藪から棒に…エースオブエースも、ストライカーも、１人で
対処できるスーパー魔導師ですよね」
「そうや。どっちも、１人で対処出来るスーパー魔導師や。けど
わざわざ呼び分けてるっちゅうことは、やっぱり、そこに、違いはあるんよ」
「違い…ですか？」
「せや、チームで与えられた仕事をこなす一般魔導師、チームの中核になって
任務に当たるエース級、そして、１人で任務そのものに当たることのできる
スーパー魔導師エースオブエース。…けど、ストライカーは、次元が違うんよ」
「次元が違うって、どういう意味なんです」
「…シグナムも、ヴィータも、すごい魔導師や。フェイトちゃんも、クロノも
すごい魔導師や。…けど、ストライカーとはよばれへん。
私が知ってる限り、ストライカーは１人だけ、なのはちゃんや。
スバルには、違い、わかるやろか」
「フェイトさんに無くて、なのはさんにあることですか？
あるなしクイズみたいですね。全然わからないです」
「…どんな絶望的な状況でも、この人なら、なんとかしてくれる。
この人さえいたら、どんな状況でも最後には勝てる。そう思える魔導師。
それがストライカーや。
ユニゾンしたシグナムと、なのはちゃんと、模擬戦をやったら
１０回の内なのはちゃんが勝てるのは、１回あるかないかやろ。
ブラスターモードの後遺症での魔力減少は、たった８％や。
８％やけど、オーバーS級同士の戦いで８％も力落ちたら、決定的やからな。
けど、…ほんまの一回勝負、ぎりぎりの負けられへん勝負になったら
最後に立ってるのは、なのはちゃんやろな。
…それで、違い、わかってもらえるか？」
「なんとなく、わからなくもないです。
あたしも、あのときには銀姉に勝ちましたけど、あれから模擬戦やっても３回に２回は負けますから。
でも、そういうのと、なのはさんの強さって、また別ですよね」
「エースオブエースは、実力が主やけど、ストライカーは心が主やからな。
いつでも、どんなときでも、スバルがギンガとやったときのような精神で戦える。
それがストライカーや。もちろん、精神に見合っただけの実力があって初めて
精神が形に表れるんやけど」
「…そうですね。でも、どうして私にそんな話をするんですか？」
「なのはちゃんが言ってたやろ。機動六課の新人は、みんなストライカーになれる素質があるって。
正直に言うけど、エースオブエースになるんは、フォワードのみんなは難しいやろな。
本当に魔力値しかないわたしは論外やけど、普通にエースオブエース目指すつもりなら
最低でもAAランクの魔力値がないと、技術でフォローしきれるものやないわ。
けど…ストライカーは、別や。１％の可能性を、勇気で補って１００％の現実に変える
信じる者だけが起こせる奇跡を、本当に起こす。それがストライカーや。
それは、誰かが教えることの出来る、技術や無い。芸術や。
ライトスタッフっちゅう人もあるな。…スカリエッティに勝てるとしたら
必要なのは、エースオブエースやない。ストライカーや。
スカリエッティがあれだけ余裕なんやで。私らが想像もできんような切り札、持ってるはずや。
その切り札の上を行くようなすごい切り札なんて、わたしには何もあらへん。
当てにしてたの、なのはちゃんやけど、…なのはちゃん、スカリエッティにつかまってもうた。
そしたら、あとは………仲間信じて、がんばるしか、ないんよ」
「部隊長は悲観的すぎですよ。…あたしは、なのはさん以外に、１人、知ってますよ。
１％の可能性を１００％の現実に出来る魔導師」
「そうか……いま、ここにおるやろか？」
「もちろん。…えと、そりゃ、なのはさんには、まだ全然及ばないですけど」
「なのはちゃんは、特別やからな。
けど、それならええんよ。わたしも話してなんか気持ちが落ちついたわ」
「でしたら、ちょっとでも横になって寝たらどうです？
連絡待ちなら、あたしが受けますから」
「…いや、寝てられへんやろな、もうすぐ夜明けや。
夜が明けたら、スカリエッティ、何始めるかわからん。
けど、まだ何も起きてへんのに、たたき起こすのもわるいしなあ」
「わるいなんて言ってる場合じゃないですよ。
起きて態勢整えないと」
「…わかってる。けどな、まあ…もう少しぐらいええやろ」
『…』
「ライチェントゥークス。そろそろヴィヴィオんとこ戻ってもええよ。
今までありがとなぁ」
『どういたしまして、はやてさん。…では、主の元に戻ります』
『ライチェントゥークス、どうしました？なんだか元気がなさそうですが』
「ん？どうしたのマッハキャリバー」
『いえ、ちょっとライチェントゥークスの様子がおかしかったようなので』
『たいしたことではありません。我が主が、普通の人間として、ここで暮らせるよう
魔力を押さえるためにいる私が、気がついたら、我が主が聖王として戦うための
デバイスとして働くことになっている。
私の責任ではない、と言いたい所なのですが、私の能力不足ではあるでしょう』
「…未来はいつでも、こんなはずやないことだらけや。
機動六課作ったときもそうや。
物心ついて、しばらくしたら、もう父さん母さん死んでもうて、小学校低学年で
もう天涯孤独の独り者や。お金は遠くのおじさんが用意してくれてるから
全然心配せんで済んだけど、他の子は家に帰ったら、家族が待ってくれてるのに
私は明かりのない家に、自分で”ただいま”いうてかえらなあかん。
振り返ってみたら、ようぐれんかった思うわ。
それだけに、シグナム達が来た時は、ほんま心からうれしかったわ。
やっと家に家族が出来たんや。…それで、みんなと一緒にいたくて
ただそれだけで、魔力封印するより管理局入りすることを選んで、みんな一緒にいられる
ように、自分が指揮官なれるよう１０年必死にがんばって、機動六課作って
シグナム達もなのはちゃん達も集めて、隊長室の椅子に座って…
…気がついたら、ひとりぼっちやってん。
誰もおらん、真っ暗な部屋にいて、１人書類読んでる自分がおんねん。
これじゃ小学生の時と、なーんも変わってへん。
何のために１０年がんばったんか、わけわからんようなってもうたんよ。
今は、答え、出したつもりやけどな」
「それはなんです？部隊長」
「なのはちゃんみたいに、はやてさんでええよ、なんて
部隊長になってもうたら、いうわけにいかんからなぁ。
ひとりぼっちにもなるわけや。
それに、”こんなはずじゃない未来の答え”なんて
人それぞれやろ。私の答えがライチェントゥークスの答えになるとはおもわんよ。
けど、自分だけがこんなはずじゃない未来を生きてるんやない、みんな同じや。
それがわかるだけでも、気休めにはなるんちゃうか？」
『気休めですか、はやてさん…いえ、八神部隊長』
「はやてさんでええよ。ライチェントゥークスは、私の部下やないんやから」
『…笑っていいところですか？はやてさん』
「そうやな、今のは、わらいどころかもな」
『それで、気が楽になりました、ありがとうございます、はやてさん。
では、我が主を起こしてきましょう』
「そうか…せやたら、頼むわ、ライチェントゥークス」
「部隊長、じゃ、あたしも、ティア起こしてきます」
「セクハラはせえへんようにな」
「あたしも、部隊長にだけはいわれたくないんですけど」
♪あた〜らしいあさがきた〜♪
突然、翠屋に大音量でラジオ体操の歌が流れてきます。
…と、ここから、話は我が主にやってもらいましょう。
我が主、朝ですよ。朝です。
「うー、ライチェントゥークス。あと５分寝かせて…」
『良くこんな日に寝てられますね』
「だって〜昨日はいろいろあってつかれたんだよ。
スカリエッティが攻めてきたんでなければ、寝かせてくれてもいいじゃない」
『いえ、ですから、おそらくは、スカリエッティの挑発です、我が主』
「挑発って…安眠妨害？やっぱりあのメガネはやることが卑怯なんだよ」
『わかったら起きてください我が主。急いで』
「うん、…起きる！」
『時間がありません。着替えはBJで行いましょう』
「BJって、どんなBJにするの？ライチェントゥークス」
『我が主が望むとおりに。どんなBJでも登録しましょう』
「んじゃ…桃子おばあちゃんのパティシエ服を参考にして
BJ風にアレンジすればいいかな」
『BJ風っていうのは、決してミニスカートの下にスクール水着を着ることではありませんよ』
「わかってるよライチェントゥークス。スカートは膝が見えるぐらいにしてロングソックス。
色が白でフェイトママのBJの上着がない普通のスカートの縁に彩りを添えて
あとは直感で適当に混ぜちゃえばOK」
『きっちりマジックイメージしてもらわないと、作れませんよ我が主』
「んじゃんじゃ、色はなのはママ風に青の柄入れてスカートのフリルはなしで
普通にプリーツ入れて…こんなものかな」
『了解しました、我が主…』
「おい、なにぼんやりしてんだよヴィヴィオ」
「あ、あれ、冬美ちゃんおはよう」
「…ヴィヴィオちゃん。たぶん、みんな待ってるよ。そろそろいこう」
「う、うん…けど、寝間着着替えないと」
「着替えるぐらいすぐやれよ。あたしらは、着替えは持ってきてないけど」
「えと、でも、寝間着借りたよね」
「なのはおばちゃんの寝間着を借りたんだよね…上だけ」
「まあな。ヴィヴィオは普通に服あるだろ。さっさと着替えろっての」
「はーい」
変身はお預けです。
「やあ、おはよう。お目覚めの運動は終わったかね」
「近所迷惑なことわざわざせえへんでも、そっちで活動したら直ぐ出動出来るよう
待機してたんよ」
「いやぁ、本職の管理局員はともかく、本命はそうもいかないだろうからねえ」
「本命って、なんや？」
「おっくれっちゃう。おくれっちゃう」
「だからおまえは三月うさぎかっての」
「…ヴィヴィオちゃん、みんなまじめな話してるみたいだから、その…」
「おはようございます、高町ヴィヴィオ、ただ今到着しました。
…あの、遅くなって…ごめんなさい」
「遅すぎるってことはないよ、ヴィヴィオ」
「早くもないんだ、フェイトママ」
「それはしかたないよヴィヴィオ」
「ユーノパパぁ」
「これで、全員そろったかね」
「…つまり、ヴィヴィオを、待ってたんやな。
どういう理由や」
「…まあ、いいだろう、そんなことは。
一つには、エミーとのお別れのお話をしたいだろうと思ってね」
「お別れの話なんかしないよ、スカリエッティおじちゃん。
アルハザードに行きたければ、１人で勝手に行けばいいじゃない。
エミーちゃんのパパだかなんだか知らないけど、親の都合で子供に
無茶させていいって決まり、ないんだよ」
「ふふふ…はーはっはっは、あはははは…そうだよ。
いい答えだ。さすがは私のヴィヴィオ。
やはり、おまえは私の最高傑作だよ。
そう思うのなら、その思いを、ぶつけにきなさい。
一晩眺めただけだが、ここの景色はいいね、最高だ。
旅立ちにはとても良い朝だ。ラジオ体操も済ませたし、着替えもおわったし
歯も磨いたし朝食もとった」
「あ、ずるいスカリエッティおじちゃん。ヴィヴィオまだ朝ご飯すんでないんだよ」
『我が主、そういう話じゃないはずですが…』
「それはわるかった。３０分だけ猶予を上げよう。それまでにすべて済ませて
海鳴公園に来るといい。
そこで、我々の旅立ちを、特等席で見学させてあげよう」
「…つまり、アルハザードを目指すのは、推理じゃなくて、事実なんだね」
「はい、その通りですフェイトお嬢様。
プレシア・テスタロッサの果たせなかった夢を、ドクターが叶えるのです。
出来れば、あと１時間だけ猶予をいただけませんか。
…クラウディアが到着するまでには、すべて終わらせましょう。
それで、あなた方にとっては、すべての話が終わるのです。
我々にとっては、すべての始まりですが」
「馬鹿なことを。母さんは…母さんが目指したのは、あるかないかわからない
アルハザードなんかじゃ…ないっ！」
「あら〜アルハザードじゃなければ、なにかしら〜。
自分に嘘つくのも、いい加減にしたほうがいいわよ」
「フェイトさん、あんな奴らの言うことに、耳を貸さなくていいですよ」
「フェイトさん…話するだけ、時間の無駄です」
「…フェイトお嬢様。我々も、手荒なまねは好みません。
あなた方も、我々の力を想像しておられるとは思いますが、我等が王、聖王の
力を得た我々は、あなた方の想像を遙かに超える力を持っているのです。
勇気と無謀は違います。どうか自重を」
「そういって、フェイトさんに返り討ちにあったわよね、前回。
今度は違うっていうの？」
「…セッテ」
「……リミッター状態のフェイトお嬢様に二人がかりで勝っても、我々が強いことにならないのと同様
聖王の力を得ていない我々に勝っても、フェイトお嬢様が強いことにはなりません」
「…まあ、時間は貴重や。スバル、朝ご飯にしよ」
「いいんですか、部隊長」
「ええよ、こんなこともあろうかと、昨日の夜のうちに、お弁当つくってあるんや。
今の内に食べてからでかけよ。…顔はタオルでふくだけにしといてな。
あと、歯を磨くのは、歯磨きガムで代用してやってや、そこまで時間なかったんや、ごめんな」
「主はやて、そこまでスカリエッティを信用してよろしいのですか」
「信用できるやろ、ユーノくんの言うのが当たってたら」
「ユーノが何いったってんだよ」
「…スカリエッティの目的達成のためには、機動六課が迎撃に来ることも
予定の内に入ってるだろうっていうことだよ。
何の予備実験もせずに、いきなり本番を始めるなんていうのは、まともな科学者なら
絶対にやらないことだよ。
スカリエッティにとっての予備実験が、JS事件。だけど、まだ試してないファクターが一つある。
そのファクターを試すための実験台が、機動六課になるはずなんだ。
そうでなければ、僕たちをあんなやり方で挑発はしない」
「…完全体の聖王、エミーね」
「そうだよ、ティアナ。ヴィヴィオは、入隊試験で力の片鱗を見せた。
けど、エミーちゃんは、そうじゃない」
「あー、冬美ちゃんヴィヴィオのとった〜」
「ヴィヴィオのって名前が書いてある訳じゃないだろ。皿に盛ってあるのを取っただけじゃないか」
「うわーん、あれを食べようって思ってたのに〜」
「ヴィヴィオちゃん、それはさすがにわがまま言い過ぎだと思うよ」
「はやておねえちゃん、あれとおなじのどこか残ってない？」
「ヴィヴィオは、ハムサンドがよかったんだ。じゃ、あたしのあげるから」
「ありがとスバルおねえちゃん」
「…なんだか、緊張感が削がれるな」
「それでいいんじゃないかしら。…ガチガチに緊張されるよりはよっぽど」
サンドウィッチとコーヒーの朝食です。
お腹いっっぱい食べると動けないので、腹八分目でやめとけって
冬美ちゃんには言われました。
変態顔芸やメガネのおかげで、闘志も湧いてきました。
まってて、なのはママ、エミーちゃん、今ヴィヴィオが行くからね。