「冬美ちゃん、月光ちゃん、早く食べないとさめちゃうよ」
「…ヴィヴィオちゃん、よくこの状況で食べられるね…」
「なのはママの声を聞いたら元気が出たよ。なのはママなら絶対大丈夫、だよね、レイジングハート」
「I think so,too」
「…なのはおばさんだって、人間なんだからさ、もう少し気を揉むとか、あるだろ」
「大丈夫だよぉ。冬美ちゃんは心配しすぎ。いざとなったらあんな変態顔芸なんて
　なのはママが本気出して一撃なんだから」
「タクシーの中じゃあれだけ不安な顔してたくせに」
「それは連絡がつかなかったからだもん。連絡出来れば安心だよね、ライチェントゥークス」
「私に同意を求めないでください、我が主。…主を不安にするような事は言いたくありませんが
　私には、むしろ心配事が増えました。…主が負けてくれた方が、まだ心配事がすくないぐらいです」
「え？なんで？」
「…私も、ライチェントゥークスに同意見や。
　けど、ここから先は、ユーノくんに話してもらうほうがええやろ。
　とりあえず、質疑応答からはじめようか。
　いろいろ、知りたいこと、聞きたいことがあるやろからな」
「ユーノさん、まず疑問なんだけど、なんでマッハキャリバーがカートリッジロードしたの？
　ヴィヴィオが魔力を集めてるっていうのはわかったけど、ヴィヴィオの意志で
　マッハキャリバーがヴィヴィオに魔力を供給したって事？」
「そういうことになるね。イプシロン仮説が事実なら、聖王はデバイスの王ということになる」
「その、イプシロン仮説って？」
「スバルさん、まずデバイスが何かわからないです」
「んーと、デバイスていうのは、簡単に言うと魔法を使うための道具かな。
　私が持ってるマッハキャリバーとか、ティアのクロスミラージュとかがデバイスだよ」
「リィンはユニゾン型デバイスですぅ」
「あと、自分の意志を持たない、ストレージ型のデバイスもあるわね。
　普通のデバイスは、まさに魔法の道具であるストレージ型で、クロスミラージュみたいに
　自分の意志のあるインテリジェントデバイスはあんまり使わないし、まして
　リィン曹長や、アギトみたいな、ユニゾンデバイスは滅多に使われないわ」
「…あの、それはまたどうして？」
「使いにくいからだよ。自分の意志があるデバイスだっていうことは、相性があったり
　気が向かなかったり、道具としては出来が悪いからね」
「………」
「レイジングハート、何か言ったらどうです？」
「I don't want to say,anything」
「…わかりやすい例だね。レイジングハートは元々僕が見つけたデバイスだけど
　僕には使いこなせなくて、なのはには完全に相性が合ってたみたいだ。
　今じゃなのはといえばレイジングハートというぐらいの相棒だよ」
「…そうなんですか。でも、ヴィヴィオちゃんとは、息が合ってましたよね」
「なのはママを助けるためだもんね、レイジングハート」
「…そういう事ばかりでもないんだよ、ヴィヴィオ」
「それはまたどうして？」
「それを説明するには、まずイプシロン仮説について説明する必要があるんだ。
　だけど、イプシロン仮説自体は、一言で説明できるよ。
　”すべてのデバイスは、ある一つのインテリジェントデバイスを始祖とする”これだけのことだよ。
　言い換えるなら、どんなデバイスでも、その元になったデバイス、そのまた元になったデバイスって
　さかのぼっていくと、単一のインテリジェントデバイスに行き着くっていうこと。
　そのデバイスは、便宜的に、イプシロンって名付けられているんだ」
「なあ、それおかしくないか？一般的に普及しているデバイスって、ストレージ型だろ。
　なんで始祖がインテリだってわかるんだよ」
「…ヴィータ、グラーフアイゼンはどんなデバイスかな？」
「インテリジェントデバイスだぜ」
「レヴァンティンもそうだよね。…つまり、デバイスの歴史をさかのぼっていくと
　インテリジェントデバイスが多くなって、ストレージデバイスはほとんどなくなっちゃうんだ。
　ストレージデバイスに見えるデバイスも、単にインテリジェントデバイスであるはずの
　デバイスなんだけど、自分の意志について何も伝わってないから、ストレージデバイスに見えるだけ。
　そう考えるのが自然だからね」
「そりゃおかしいだろ。簡単なものから複雑な物が出来るんじゃねーのか。
　単純なストレージデバイスから、複雑なインテリ、さらに複雑なユニゾンデバイスが出来たんじゃないのかよ」
「そう考えると、おかしいんだ。ユニゾンデバイスがすべて自分の意志を持っている理由が
　説明がつかなくなるからね」
「…どういう事なんだ。そりゃリィンはユニゾンデバイスだったけどさ、あれは
　夜天の書を闇の書に改造した奴の趣味だろ」
「その、闇の書になる前の夜天の書が、ストレージ型だったという証拠はどこにもない」
「インテリだったって証拠も無いぜ」
「うん、夜天の書自体はね。けど、他の古代のデバイスや、現在あるデバイスの原理を
　分析すると、どうしても始原のデバイスは、インテリでないとおかしいんだ」
「…うー。まあ、今の学者はそう考えてるってことで納得しとく」
「そうお願いするよ。僕も、この件については、余り詳しくないからね。
　デバイスの種類と派生系については、シャーリーに聞く方がいいかも。
　それより、イプシロン仮説から導かれる聖王に関する話の方が、当面必要なはずだね」
「イプシロン仮説から導かれる聖王の話？」
「うん。はやてやフェイトには、おおざっぱに説明してるし、ティアナには
　レジュメを渡してると思うけど、簡単にいうと、聖王はイプシロンに近い
　デバイスの支配者だよ。…もうすこし正確に言うと、イプシロンに近いデバイスが用いられていた
　時代に、その種のデバイスの支配者であった存在の後継者、というべきかな」
「どういうことなんだ？」
「簡単に言うと、聖王はデバイスの王なんだ。レイジングハートがmy lordって呼んでたよね。
　アギトにとってシグナムがlordであるのと同じような意味で、聖王はすべてのデバイスのlord。
　いや、神とでも言うべき存在かな。すべてのデバイスに共通に組み込まれている
　リミッターを解除できる、僕たちが知っている唯一の存在、それが聖王なんだ」
「…なんかだんだんついていけねー話になってきてるぜ」
「だけど、ここが肝心なんだ」
「肝心なんやけど、みんなわかったようなわからへんような顔してるわ。
　悪いけど、本題にはいらなあかんから、私から本題に進むための質問させてもらうわ。
　…アルハザードは、ほんまにあるもんやろか？」
「…アルハザードについての研究は、JS事件以来、ある程度は進んでる。
　プレシア事件の時には、次元の狭間のそのまた向こうなんて、調査するにも
　次元震を起こす危険がつきまとうから、調べようもなかった。
　JS事件で、スカリエッティがアルハザードの遺産らしい事がわかってから
　スカリエッティ関連の情報を使って、ある程度まで、アルハザードについての
　情報も入ってる。
　けど、それが、本当にアルハザードなのか、それとも、評議会が
　アルハザードだと思いこんだ、古代世界の一つなのかは判然としない。
　しかし、スカリエッティのデータの中に、プレシア事件のレポートが
　含まれていた事、および、未だにジュエルシードが回収されてないこと
　そして、何より重要なことに、ジュエルシードのレプリカ製造を
　スカリエッティが行っていたと考えられる事から、スカリエッティ自身は
　次元の狭間の向こう側にある、アルハザードについて何らかの調査を
　していたと考えることが出来る」
「…その、次元の狭間の向こうにあるアルハザードって、本当にあるの？」
「わからない。…だけど、スカリエッティは、存在すると思ってるかもしれない」
「仮定に仮定を積み重ねるような話ね。
　けど、…ライチェントゥークスから入ったエミーの言葉から推理すると
　スカリエッティの目的は明らかね」
「聖王をナビゲーターにして、ジュエルシードの力を用い、プレシアが目指した
　アルハザードへ向かう。これがスカリエッティの目的やと考えるのが自然や。
　これは、極めて危険や。ジュエルシード９個を暴走させた時ですら、当分
　地球とミッドチルダ間の航行が不可能になるぐらいの次元震を引き起こした。
　それも、早期になのはちゃんとフェイトちゃんが、動力炉を破壊したのにや。
　おそらく、スカリエッティはジュエルシードを２１個全部揃えて持ってる。
　二倍以上の出力、ちょっとでも間違えたら、地球を含む次元世界を
　ダース単位で滅ぼしてもおかしゅうない」
「母さんの目指したアルハザード…」
「しかし、テスタロッサ。もしそんな世界が本当にあるのなら、そして
　本当にスカリエッティがたどり着いたのだとしたら、世界は全体として
　スカリエッティの望んでいるような姿に変わっているはずだ」
「…私たちが何をしようと、無駄だと言うことだね」
「おまえら何無駄な事考えてるんだよ。未来の事はわかんねーだろ。
　今するべきことはただ一つ、スカリエッティの奴をふんづかまえることじゃねーか。
　だったら、向こうの戦力分析でもしてろってんだよ。
　ま、どんな相手だろうと、このアギト様がぶっとばしてやるよ」
「戦力分析のためにも、相手の事を知ることが大切ですよぉ」
「そうやな。スカリエッティに関する情報は少なすぎて、戦力分析も難しい。
　けどな。相手が脱獄のために行動してるとき、手の内を隠せるほど
　ゆとりがあったともおもえんのよ。
　それを前提に、クラールヴィントは幻影分析能力を組み込んであるし
　三年前のJS事件の時より、トーレ達がパワーアップしてる事前提の
　戦闘訓練もやってある。その点については心配してへん。
　けど…大いに心配なんは、エミーの事や」
「エミーちゃんがどうかしたの？」
「ヴィヴィオ、口の周り口の周り」
「口の周り？」
「食い終わったら口の周りぐらいふけよ。ヴィヴィオって汚れてることが多いぞ」
「えー。そんなことないよー、ハンカチでいつもなのはママが拭いてくれるよ」
「なのはおばちゃん、今いないよ…」
「…あ、そか」

「冬美ちゃんもアカリちゃんもずるいよ～。冬美ちゃんやアカリちゃんが
　まずどうして欲しいか言ってくれなきゃ」
「………あのさ、ヴィヴィオ。…わからないか？」
「何が？冬美ちゃん、何が言いたいの？」
「…………まだ話したことなかったかな。あたしがスバルさんと初めてあったときのこと」
「どうかな？聞いたのかもしれないけど、覚えてないよ」
「…たぶん、初めて聞くと思う…」
「そっか。あたしさ、物心ついたとき、もう道場で格闘の練習やっててさ。
　自分が女の子だとか、そんなこと全然考えたこともなかったんだよ。
　で、お袋の奴が、これじゃまずいだろって言い出して、あたしを清祥小学校に入れたんだよ。
　お嬢様の集まる私立なら、すこしは女の子らしくなるんじゃないかってさ。
　けど、あたしはそんなの苦手で、スカートも、学校の制服が初めてで全然慣れ無くって
　おかげで学校の奴にもからかわれてたんだよ」
「今でも言う子は言ってるよ」
「追い打ちかけんなよな。自覚あんだから。…と、それで、あたしのこと笑う奴は
　喧嘩売ってるって見なして、問答無用でぶん殴ってやってたよ。
　そりゃ、当然手加減はしてるぜ。川崎流の拳は、凶器だからな。
　急所を殴れば、本当に殺しかねないっての、知ってるから。
　けど、そんなの、学校でも家でも通用しねえ。とにかく殴っちゃだめだっていうから
　聞かないよう無視してたんだよ。けど、それがまた火に油を注ぐっていうか
　ぶん殴ってやらないとわからない奴がいるっていうか、かえってからかいをエスカレート
　させたみたいでさ。…とうとう堪忍袋の緒が切れて、あんまりひどく言ってた奴を
　こかして馬乗りになって、泣くまで殴ってやって、泣いても謝るまでぶん殴ってやってたんだ。
　そのとき、通りがかりのスバルさんが、あたしの腕を捕まえて、こう言ったんだ。
　”この子より、キミの方が強いんでしょ。だったら、守ってやらなきゃだめだよ”って。
　もちろん、あたしは納得なんて出来なかったよ。
　”あいつ、あたしのこと馬鹿にしやがったんだ。だから目に物見せてやんなきゃいけないんだよ”って
　そしたら、スバルさん…あたしに、こういったんだ。
　”…だけど、もう、泣いてるじゃない。そろそろ、許してあげたら？”
　”許せるわけない。泣いて謝ってもゆるしてやらねえ。あたしを馬鹿にしたらどうなるか
　　体にたたき込んでやらなきゃ気が済まないだ。”
　”…そっか。許せないか。なら、この子の代わりに、あたしを殴ればいいよ。
　　キミの気が済むまで、受けて上げるから。
　　キミが納得いくまで、殴っていいから。だから、あたしに免じて
　　この子は、もう、許してあげてくれないかな？
　　…けど、キミも、言っていいことと、悪いことの区別はつけようね。
　　殴られないと人の痛みがわからないようなら、人間じゃないぞ”
　って…
　それで、スバルさん…本当に、殴らせてくれたんだ。
　あたしが気が済むまで…拳が痛くって、もう何も殴れなくなるまで…
　…そのとき、あたしは悟ったんだ。強くなるって、どういう事なのか。
　気に入らないからってぶん殴るのは、強さじゃないんだって。
　本当の強さは…殴る力じゃなくて、その拳を受け止められる力なんだって。
　…………けど、さ。…あたしには、エミーの気持ちは受け止められない。
　あたしは、そんな力はない。悔しいけど………それが出来るのは、ヴィヴィオだけなんだ。
　だからさ。あたしは……ゲッコウも同じ気持ちだと思うけど…ヴィヴィオが
　エミーに、どう思ってるか、それを聞きたいんだよ。
　あたしらが何言っても、それはただ言っただけだ。あたしらには何も出来ないんだからさ。
　けど、ヴィヴィオは…ヴィヴィオは、想いを受け止められる強さが、あるかも、しれない。
　…力には、責任が伴うんだぜ、ヴィヴィオ」
「…ヴィヴィオちゃん…ごめんね、力になれなくて」
「……………えと…」
「なんか、わたしが言うより先に、結論いわれてしもたなぁ…」
「…ヴィヴィオ。おじいちゃんの話、聞いてくれるかな？」
「なに、士郎おじいちゃん」
「なに、そんな難しい顔をしなくていいよ。簡単なことだから。
　ここにいるみんな、ヴィヴィオの事を、大切に思ってるんだよ。
　だから、ヴィヴィオが何を言おうと、どういう想いを抱こうと
　ヴィヴィオを嫌いになったりはしない。ただ、それだけわかってくれればいい」
「…おじいちゃん…」
「それで、ヴィヴィオがどうしたいかは、後で聞いた方がええか？」
「我が主、ゆっくりと考えられてはどうですか。
　エミーさんがどういう思いでいるか、主は知らないのですし、もしかしたら
　エミーさんは、本当にアルハザードに行きたいのかもしれません」
「…それは違うよ、ライチェントゥークス」
「我が主？」
「…エミーちゃんの気持ち、なんとなく、ヴィヴィオには、わかる気がする。
　ヴィヴィオも、転校する前、サンクト・ヒルデの友達とは、別れたくなかった。
　ヴィヴィオが清祥小学校に転校したのって、ヴィヴィオがパティシエさんになりたいって
　なのはママに言ったから、それで、なのはママが私に、なのはママの知ってる
　一番のパティシエさんの、桃子おばあちゃんところに預けてくれたからだから。
　ヴィヴィオがこっちで暮らすって決まったから、なのはママも、海鳴に
　帰ってくることにしたって聞いてるから、友達とお別れしたくない気持ちなら
　ヴィヴィオにもわかる。
　けど、…エミーちゃんのお別れ会は、それとは違うような気がする。
　エミーちゃんは、きっと、ここを離れたくないんだよ。
　私はわからないけど、冬美ちゃんや、月光ちゃんと、別れたくないんだよ。
　ずっと一緒にいたいんだよ。…冬美ちゃんや月光ちゃんの心の中に
　ずっとずっといたいって、そう思ってるんだよ。
　ここに、エミーちゃんがいたこと、忘れて欲しくないって、そう思ってるんだよ。
　ヴィヴィオにも、それは、わかる。
　だから、ヴィヴィオは、エミーちゃんを、引き留めに行くよ。
　エミーちゃんに会って、聖王の義務なんかのために、次元の狭間の向こう側になんて
　行かなくていいんだって。…聖王の遺伝子を持って生まれたからって
　アルハザードに行かなきゃならないなんて、そんなこと、あるはずないんだから。
　自分のすすみたい道を目指す権利は、誰にだってあるはずだよね」
「………結論は出たみたいやな。
　明日のために、各人の部署だけ今指示しとく。
　実際に現場に行ったら臨機応変やけど、臨機応変にやるにせよ
　各人の責任範囲を明確にしとかな、連携もできへん。
　まず、わたしとリィン」
「はいですぅ」
「…みんなには申し訳ないが、わたしは結界担当をさせてもらうわ。
　リィンは、わたしとユニゾンして防御担当を頼む。
　ある程度全体を見渡す必要あるし、自分の身を自分で守れる自信もないんよ」
「わかりましたぁ。はやてちゃんはリィンが必ず守るですよぉ」
「明日になれば、アースラだけやのうて、クロノ提督のクラウディアも
　応援で到着する。クラウディアが第９７管理外世界に到着ししだい
　全体指揮はクロノ提督が執る。ていうか、元々今回のスカリエッティ脱獄事件の
　総責任者は、クロノ提督や。
　わたしの指揮範囲は、あくまで、再結成した機動六課の範囲内なんよ。
　…さてと、次、ヴォルケンリッターとアギト」
「はい、主はやて」
「ヴォルケンリッターは、矛の役目を果たしてもらうわ。
　脱獄ナンバーズは、おそらく全力で抵抗してくるやろ。その抵抗を撃破して
　脱獄ナンバーズの身柄を確保する、それがヴォルケンリッターの仕事や。
　それで、フォワードチーム４人、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ」
「はいっ！」
「４人は、盾や。ヴォルケンリッターがナンバーズを撃破して身柄を確保する
　いうても、ナンバーズ全員を同時に相手して勝てる、とはかぎらへん。
　ヴォルケンリッターが集中して攻撃してる間、他のナンバーズを牽制して
　ヴォルケンリッターの戦闘力を十分に発揮できるようにすること、それが
　フォワードチームの仕事や。結界内にいる、私とヴォルケンズ以外の人を
　ナンバーズやスカリエッティやガジェット…その他、考え得る限りの危険
　想定外の危険から守るのも、フォワードチームの仕事や、責任重大やで」
「わかりましたっ！」
「フェイト執務官は、スカリエッティの身柄確保が担当や。
　ナンバーズを撃破してから参加するか、それとも、隙を見て
　スカリエッティをとらえるか、そのあたりは、状況次第や。
　けど、スカリエッティ逮捕は、フェイトにまかせるで」
「わかったわ」
「それで、なのはちゃんの救出やけど、ユーノ、アルフ、頼むで。
　ほんまは、戦闘要員にユーノ君だしたないんやけど、流行の
　人手不足いうやつや」
「なのはのためなら、喜んで」
「フェイトがスカリエッティに専念できるようにするよ」
「…それで、ヴィヴィオ」
「なに、はやておねえちゃん」
「ヴィヴィオは、エミーの身柄確保や。
　ライチェントゥークス、レイジングハート、ヴィヴィオの事は、頼んだで」
「心得ましたはやてさん。我が主は、かならず守ります」
「……それで、我が主、私の質問に答えていただけませんか」
「なんやったかいな？」
「なぜ、月光や冬美をこの会議に参加させたのですか？」
「ヴィヴィオが、パティシエになって、この世界で暮らすつもりなら
　ヴィヴィオのことを、本当に知った上でつきあってくれる、本当の
　友達がいるやろう、そうおもうたんよ。
　ずっと仮面を被って暮らすなんて、人間には無理や。
　素顔の自分をさらけ出しせる友達がおらな、気が狂ってしまうわ。
　パパやママ、おじいちゃんおばあちゃん、みんな大切な人や。
　けど…本当の素顔、見せられるわけや、ないからな。
　本当の友達、本当の素顔晒せる友達、それが親友やないやろか。
　作り笑いして、言いたいことも言わず、聞かせたい言葉だけ選んで話す。
　そんな友達も、友達のうちやろ。
　けど…ヴィヴィオには、そうじゃない、本当の友達、作って欲しいんよ。
　聖王やいうこと、誰にも教えずに、一生抱え込んで暮らす。
　そんな人生、送ってほしないんや。なのはちゃんも、この場におったら
　たぶん、そういうんやないかとおもてる。
　だから、二人に、ここにいてもろうたんよ。
　…なんか、はなしがなごうなってしもたな。
　もう解散しよ。明日に備えてみんなゆっくり休んでや」
「はいっ！」
「スバル、エリオ、キャロ。フォーメーションについて打ち合わせやるわよ。
　ちょっと残ってて」
「…我々も、すこしは意思疎通を図っておいた方がいいな」
「そうだなザフィーラ。敵の能力について、少し検討してみよう」
「一回まけてる相手だもんな」
「そうね、誰から相手するかを含めて考えてみましょうか」
「…ヴィヴィオ、考えるな、寝てしまえよ。もうずいぶん夜も更けたぜ」
「うん、けど、二人とも帰らなくていいの？」
「ああ、今日はこっちに泊まるよう電話いれたから大丈夫」
「うん、夜も遅いし、歩いて帰るのも物騒だよね」
「二人とも、帰るのならタクシーを呼ぶわよ」
「いえ、桃子おばさん…たまには、お泊まりもいいかなって」
「うん、冬美ちゃん、月光ちゃん、お泊まり会しよ」
「たく、緊張感ないな、ヴィヴィオはよ」
「緊張してもしかたないもん」
「ヴィヴィオちゃんらしいね」
「でしょでしょ」
「だから褒めてねえっての」
「私は褒めたのに…」

めりかるうぃっしゅ

～ユーノパパは学者さんなの～