「さてと、エミーのやつも休憩みたいだな、ちょうどお昼だぜ」
「そうだね冬美ちゃん、おっひる、おっひる」
「浮かれるなよ」
「楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうよね。なのはおばさん達はこれからどうされるんですか？
お弁当をヴィヴィオちゃんに渡してますけど」
「月光ちゃん、私たちはちょっと用事があるから、お昼はみんなで一緒に食べてね」
「そうなんですか。どんな用事なんですか？」
「内緒」
「……お仕事です？」
「それも秘密、じゃ、お願いね」
「はーい」
割とゲッコウは察しのいい方じゃない気がするんだけど、今回は図星をついたみたいだな。
「え〜なのはママやフェイトママと一緒がいいよう」
「ヴィヴィオ、わがまま言わない」
「ちぇ〜」
ヴィヴィオは、相変わらずみたいだけどな。
「ヴィヴィオ、だだこねるなよ、なのはおばさんにフェイトおばさんも用事があるって言ってるんだから」
「うー、帰りには間に合う？ レイジングハートはStand by Ready? バルディッシュも準備出来てる？」
前言撤回、どうやらヴィヴィオも分かってるみたいだ。
「フィナーレには間に合わせるからね。ちゃんといい子にしててね」
「は〜い」
そういうわけで、なのはおばさん達は会場を後にした。
後に残されたのは、あたしらだけだ。
「ねえねえ、みんな、なのはママのお弁当だよ、お昼にしようよ」
「そうだな、で、どこで食うか？」
「きっと中庭があいてますわ」
「そっか、エミー。エミーはどうするんだ？」
「自分で作ったお弁当がありますわ」
「そっか、じゃ、一緒に食べようよエミーちゃん」
「ええ、そうですわね。ご一緒させていただきましょう」
「やったぁ」
「コロナさん、リオさん、ご一緒しませんか？」
「うん、もちろん」
「ルーテシアさんも一緒にどうですか？」
「いえ、私は挨拶に行くところがあるから」
「そうですか、残念です」
「なんでルーちゃんには丁寧語なの？」
「仮にも年上だろ」
「そういう問題なの？」
「そういう問題。ミウラさん、ご一緒しませんか？」
「え、あ、はい……あの、お願いがあるんですが」
「なんでしょう」
「そんな、かしこまった言われ方すると、こっちが緊張するっていうか……
……ヴィヴィオさん達に接するみたいに行ってくれた方がありがたいというか……」
「そうですか」
「あんまり歳も離れてないですし、お願いします」
「……分かりました」
「ミウラちゃん、そんな緊張しなくても大丈夫だって」
「ヴィヴィオは緊張しなさすぎなんだよ」
「あの、アインハルトさん、どちらへ？」
「いえ、私は……」
「アインハルトさんも一緒に食べようよ。なのはママは料理も得意なんだよ」
「いえ、私は……」
「お弁当持ってないでしょ、ティオにライチェントゥークスが聞いたって」
「え、ええ、そうですけど、だから一緒にいてはご迷惑かなと」
「そんなことないよ。なのはママはみんなの分全部作ってるから大丈夫。
分け合って食べようよ」
「ですが、ご迷惑ではないでしょうか」
「残す方が迷惑だよ。一緒に食べよ」
「は、はい、そこまで勧めていただけるなら」
「決まり〜」
「ヴィヴィオは年上になれなれしすぎだろ……」
そういうわけで、エミーの案内で中庭に移動する。
この学校の中庭は十分広いみたいで、あたしらが食事するベンチもあいていた。
「わ〜い、みんなでお昼〜」
「変にはしゃぐなよヴィヴィオ、周りから変人だと思われてるぞ」
「奇人変人大集合〜」
「そういうテレビ場組もやらなくなっよね」
「そうだなゲッコウ、やっぱまねするやつがいるからかな」
「ヴィヴィオは、ああいうまねはしないよぉ」
「いや、ヴィヴィオがまねするとは言ってないだろ」
「楽しそうですわね」
「エミーちゃんは楽しんでないの？」
「十分楽しんでますわ」
「それならいいけど……はい、アインハルトさん、これどうぞ」
「ありがとうございます。……って、こんなに？」
「なのはママはいつもいっぱい作るんだよ。残すと怒られるんだよ」
「食べないと成長しないし、運動するとエネルギーを消耗するからな」
「太っちゃうよぉ」
「動けよ」
「相撲取りさんみたいになっちゃう〜」
「だからって、食べないと立派な格闘家になれないぞ」
「ヴィヴィオはパティシエさんになるんだよっ」
「絶対ヴィヴィオは格闘家の方が向いてるって、なんでパティシエさんにこだわるんだよ」
「その話は前にしたはずだよ〜」
「ミウラさんもやっぱり将来は格闘家なんですか？」
「そこまで考えてないです。ただ、今は戦うのが楽しいって思えます」
「管理局は優秀な魔道士をいつでも募集中だよ」
「殴るだけが管理局のお仕事じゃないですから」
「将来の話なの」
「そういや、リオは実家を継ぐのか？」
「そのつもりで修行中です」
「それならあたしと同じだな。こっちも実家を継ぐ予定じゃあるからな」
「うちの家はサラリーマンだから継ぐような実家じゃないし……」
「普通のサラリーマンも悪くないだろ」
「だけど、将来のこととか考えられない」
「立派なお嫁さん〜」
「今は共働きが普通だから、何か仕事が出来るようになりたいな、って思います」
「そっか、ゲッコウも考えてるんだ」
「ピアノの先生はどうかしら？ 家にいても出来るお仕事ですわ」
「え、私なんか、音楽学校に入れるほど腕前はないですよ」
「練習してれば上達するものですわ」
「練習してればですよ、エミーちゃん」
「アカリさんは、それでもピアノを習ってるんですね」
「うん、音楽は好きだから……」
「アインハルトさん、どうしたんですか、食事が進んでないですよ」
「いえ、将来って言われて、ふと、考えたことがないことに気がついたものですから」
「アインハルトさんは格闘以外してないじゃないですか、やっぱり将来は格闘家？」
「……どうなんでしょうか。私は、ずっと、クラウスの影を引きずってきました。
覇王を目指したのも、クラウスの夢だったからの様な気がします。
私の考え、私の生き方、そういうものがあるのだと、エミーさんに気づかされるまで……」
「アインハルトさんが気づいたのは、自分の力だと思いますわ」
「そういえば、エミーちゃんはまだインターミッドで負けてないよね」
「ええ、なんとか勝たせてももらってますわ」
「勝利を献上してもらってるような言い方は失礼ですよ。試合相手の方も、全力を出しているんですから」
「それもそうですわね。失礼しました」
「ヴィヴィオさん、インターミッドはヴィヴィオさんの分もがんばります」
「うん、がんばってね、ミウラちゃん」
「そうだ、みんなルーフェンに一度は遊びに来てよ」
「ルーフェンって？」
「私の故郷だよ。風光明媚でいいところだから。……って、なんにもないけどね」
「それはそれでいいところじゃねーか。うちは都会の道場だから、なんかごみごみした環境でよ。
修行に専念できそうなところだな」
「それは保証します」
「あはは」
「あの、そろそろ午後の出し物をしなければならない時間になりました」
「そっか、コロナ達は今から出し物をしなきゃならないんだよな」
「ええ、冬美さん」
「冬美でいいよ、こっちが呼び捨てなのに、さん付けされると気持ち悪い」
「そうですか？」
「そんなものなんだよ」
「がんばってね、コロナちゃん。ヴィヴィオ達はなのはママが帰ってくるまでいろんな所を見て回るからね」
「ええ、しっかり楽しんできてください」
「迷子になるなよヴィヴィオ」
「大丈夫だよ。探索魔法を使うから」
「ヴィヴィオちゃん、それってはぐれること前提だよ」
「そっかも」
「肯定するな、探索魔法を使わずにすむように考えろよ」
「うん、冬美ちゃん」
「じゃあ、またフィナーレで」
「はい」
そういうわけで、アインハルトさんは、新しく用意された腕相撲台で腕相撲の出し物に向かった。
コロナ達は、出し物のためにクラスに戻る。
「……手持ちぶさたになりましたね」
「そんなことないよミウラちゃん、午前中見てないところがいっぱいあるんだよ。
フィナーレまでに全部見て回らないと」
「高等部の方はまだ行ってないですね」
「そういうこと、じゃ、しゅっぱーつ」
「ヴィヴィオ走るな、こけるぞ」
「こけないってば……」
こけっ。
「うう……」
「ほら、人をよけようとして自分の足が絡んだ」
「あうう……」
「ヴィヴィオちゃん、人混みは走るものじゃないから……」
「月光ちゃんまで追い打ちかける〜」
なんか先が思いやられるな。
「冬美ちゃん、高等部はこっちだよ」
「あ、すまんゲッコウ」
人のことはいえないか