「はーい、では、出し物はスポーツカフェということでよろしいでしょうか」
「賛成です」
「では、賛成多数ということで、学園祭の出し物はスポーツバーに決定いたしました」
ここは、サンクト・ヒルデの中等部1年のクラス、今は学園祭の出し物を決めている最中です。
出し物はスポーツバーに決まりました。
スポーツバーというのは、卓球やビーチバレーなどのスポーツで、お客さんに勝負してもらって
負けたら出し物を何か買ってもらう、勝てたら無料で出し物をプレゼントする、と言うものなのだそうです。
私は部活動をしてませんし、格闘をする、というのでは危険なので受付や裏方に回ろうと思います。
「アインハルトさん、あなたは格闘が得意でしたわね」
「ええ、多少は。ですが、格闘では来られた方に危険ではありませんか。
それに、私は4回戦で負けてしまいましたし」
「見てましたよ、すばらしい試合でしたわ」
「ええ、立派な試合でしたよ。是非アインハルトさんにも何か出し物に出ていただかないと」
「え、でも、スポーツバーですし、その、来られる方がデバイスを持っておられるともかぎりませんから」
「なにも格闘技をなさらなくても、アームレスリングはどうでしょうか」
「腕相撲、ですか？」
「ええ、そちらの方も鍛えておられるのでしょう」
「若干はトレーニングしております」
「それなら問題ありませんね」
「はあ……」
なんとなく、アームレスラーとして参加することになってしまいました。
ほかの方々はどうなのでしょう、練習の時に聞いてみることにいたしましょう。
「あ、アインハルトさん、こんにちは」
「こんにちは、エミーさん、リオさん、コロナさん」
「アインハルトさん、学園祭の出し物はなんになったんですか？」
「学園祭の出し物ですか? うちはスポーツバーをやることになりました。
スポーツでお客さんに勝負してもらって、こちらが勝ったらなにか買ってもらおうという趣向なんですよ」
「負けることは考えてないんですね」
「仮にもうちの学校のエース達ですもの。相手がよほどの方でない限りは負けないと思います。
負けるとすれば、私ぐらいでしょうか」
「どうしたんですか、アインハルトさん」
「腕相撲を担当になりました。私で十分つとまるか不安です」
「アインハルトさんは十分鍛えてますよ」
「だといいのですけど、それで、みなさんはどんな出し物にされたんですか？」
「ボクらは魔法喫茶店だよ」
「基礎魔法の楽しさを伝える喫茶店にするつもりですわ」
「そうなんですか、おもしろそうですね」
「うーっす、みんなそろってるか？」
「はい、コーチ」
「よし、じゃあ早速練習にとりかかるぞ」
「はいっ」
そんなこんなで当日になりました。
魔法喫茶店の方をのぞきに行く暇はありません。
私の方は自分の準備で手一杯です。
準備と言っても、アームレスリングなので、テーブル一つにいす二つあればいい競技です。
卓球台もネットもボールも必要ありません。
「お嬢ちゃん、大丈夫……って、相手は、あの、アインハルト＝ストラトスかよ」
「冗談っぽい……まあ、話の種にやってみるか」
あの、とはどういう意味なのか分かりませんが、男の方とはいえ
この程度の相手なら勝てそうな人ばかりが挑んできます。当然勝てます。10連勝。
アームレスリングは筋肉があれば勝てるというものでもありません、筋骨隆々たる方も
挑んできますが、力の入れ方にこつがあるのが分かってない方でした、２０連勝。
疲労をティオに抜いてもらうのは卑怯とは言わないでしょう。相手の方は
疲労なしで挑んで来られるのです。
「高校生？ どこかで見たような……」
「あたしを知らないとはモグリだな、まあいいや」
次の方を知らないのは、確かにモグリかもしれません。
私には一目で分かりました。
「腕相撲1000勝、ハリー・トライペッカだ。よろしくな」