エミーさんが全力の魔力を込めた拳が、私の脇腹をとらえました。
防御に多少は魔力を振り向けていたとはいえ、これで私は完全にダウンです。
私は……
「さすがにあれは決まったろうな」
「いくらはるにゃんでも、無理やろな」
「大丈夫です。アインハルトさんはまだやれますっ！」
「リオ、それはいくらなんでも……」
「アインハルトさん、がんばってください。まだ終わってないですよ」
「コロナちゃん」
物心ついた時から、彼は私の中にいました。
彼と私は一心同体で、彼の思いは私の思いなのだと、そう思ってました。
だけど、彼はクラウスで、私はアインハルトで、やっぱり違っていて、彼には
リッドやオリヴィエのような仲間がいて、
私にはリオさんやコロナさん、そしてエミーさんのような友達がいる。
「……８……９……立ったか、アインハルト。でも、足下がふらついてるぞ、やれるのか？」
「大丈夫です。やれます」
「そりゃ口じゃ立ったファイターは誰でもそう言うんだ。ティオ、本当に大丈夫なんだな？」
「にゃあ」
「……わかった、続けよう」
「はい」
そう、彼には彼にしかいない仲間がいたように、私には、私にしかいない友達がいる。
「次が最後ですね」
「そうなるやろな」
最初から断空破を放ちます。体力の限界に近いので、長い戦いは無理です。
しかし、エミーさんはそれをかわします、が、これはこちらも計算のうち。
本命の断空破はこちら……え？ それも読まれていた？
エミーさんのアクセルスマッシュが私をもう一度とらえました。
こんどこそ完全にダウンです。もう、立ち上がる気力はありません。
エミーさんが言ったとおりに、エミーさんが勝ちましたね。
……
「気がつかれましたか、アインハルトさん」
「エミーさん。見事な勝利でした」
「一度限りの奇策がはまっただけですわ。二度目はないと思います」
「それでも、負けたことには変わりないでしょう」
「勝てなければ意味のない戦いでしたから。……勝てばよいというものでもないのですけど」
「……そうですね。言葉では伝わらない思い。それを伝えなければならないのでしたね」
「アインハルトさん、大丈夫？」
「もう大丈夫です、コロナさん」
「エミーもむちゃくちゃやりすぎだよ。手加減なしだったろ」
「手加減して勝てる相手ではありませんもの。少しでも気を抜いたら、逆に落とされてましたわ。
それでは、思いは伝わらない」
「思い？ 言葉では伝わらない、思いって、なに？」
「それは、たぶん、コロナさん、リオさんも、伝えようとしてたことではないかしら」
「ほかに、方法は、なかったのかな」
「……アインハルトさん、わかってもらえた？」
「言葉では伝わらない思いというものは、言葉に出来ない思いでもあるのでしょう。
でも、きっと、これだけはいえると思います。私は、クラウスそのものではないのだということ。
私……アインハルト＝ストラトスを見てくれる人がいるのだということ。
その私のために、思いを伝えてくれる人がいるということ、それはわかりました。
少なくとも、これでは、チームリーダー失格ですね」
「それに気づいてもらえるだけでも、十分チームリーダーですわ、アインハルトさん」
模擬戦はこうして終わりました。
私のわがままに、あの子達はずっとつきあってくれていたのだということ。
それが身にしみます。