「陛下、昨日はお疲れ様でした」
「ありがとう、オットーさん、でも、私はそれほど疲れませんでしたわ。
お疲れになったのは、ヴィヴィオさんではないでしょうか。
ヴィヴィオさんは大活躍でしたもの」
「そうかもしれませんね。ですが、エミー陛下も、いつでもバックアップに入ることが出来るよう
待機なされていたのでしょう」
「それはもちろんです。ですけれど、ヴィヴィオさんの邪魔はしないようにしておりましたわ」
「そうなんですか」
「アインハルトさんは、今日も修練されておられるのでしょうね」
「そうでしょうね。何があろうと、毎日修練を欠かすことのない方ですから」
「今日はオットーさんの姉妹の方が、訪問されるそうですわ」
「そうなんですか」
「ええ、様子を見にいかれるとか」
「昨日のことで、何か変わった様子になってないと良いですね」
「良い方向に変わられるとよいのですけれども、どちらかというと、ネガティブに考えられる方ですから」
「陛下がおっしゃいますか」
「昔の私は、もう少しポジティブでしたよ」
「そういうことにしておきましょう」
「さて、お茶が終わりましたら、私も修練をしませんと」
「おや、何の修練ですか？」
「来週、アインハルトさんと練習試合をすることになってますから」
「アインハルトさんと？」
「ええ、アインハルトさんと。ヴィヴィオさんたちも見に来ますもの。無様な所は見せられませんわ」
「そうですか、で、お相手はいつも通りにシスターシャッハです？」
「いえ、特別に講師の方をお呼びしてますから、その方から教わることになってますの」
「そうなんですか、では、あまり待たせても悪いですね」
「シスターシャッハでも、待たせてよいことにはなりませんわ」
教会の一室での、しばしの休憩時間、オットーさんとの会話です。
あの無限書庫での一日がおわってからの翌日、もう日常は動き出しています。
ですが、当たり前の日常なんてものは、本来存在しないもの。
確実に一日一日、違った日が流れていきます。
「こんにちは、高町なのはです」
「お待たせいたしました、エミー＝シュミットです」
「いえ、こちらこそお待たせしてすいません」
「定刻5分前には到着されてますわ。こちらが10分前に来ただけです」
「あの、陛下、特別な講師というのは、なのはさんのことなんですか？」
「ええ、お仕事でミッドチルダに来られると言うことなので、無理を言ってお願いいたしました」
「ヴィヴィオのお友達の頼みだからね。断る理由もないよ。
じゃ、早速始めようか」
「お願いいたします」
なのはさんにお願いしたのは、魔法弾を受けきる訓練から。
「まずは強力な弾を受ける訓練からだよ」
「はい」
これは、それほど難しいことはありません。
威力は大きくても、おそれなければ速さがないので
正確に裁けばすむことです。
「じゃ、次は速い弾」
「はい」
こっちはとちらないことが問題になります。
威力はうすいので、失敗してもなんとかなると思えば
気は楽ですが。
「じゃ、次はコンビネーション、ここからが本番だからね」
「はいっ」
ここからが、本当の訓練です。
実戦では単調な速さの弾が来るわけではありません。
速い弾、遅い弾、誘導弾、直線的な弾、いろんな弾が来ます。
それを見極めて、すべてを裁かなければなりません。
さすがになのはさんが放つ弾です。すべてが裁ききれません。
「うーん、まだこっちは本気でやってないんだけどな」
「すいません、もう一度お願いします」
「いいよ、なんどでも行くからね」
「はい」
一時間ほど、練習をして、なんとかすべてを裁けるようにはなりました。
「ちょっと休憩しようか」
「いえ、まだ大丈夫です」
「でも休憩。休むのも練習のうちだよ」
「わかりました」
「どうしてアインハルトちゃんと練習試合をすることになったの？」
「アインハルトさんとわかり合う、一番の早道だと思ったからですわ」
「そのためには、全力が出せないといけないよ」
「ええ、その通りですわ。それに、思いがこもってなければならないことも。
あのときの、ヴィヴィオさんのように」
「そうだね」
昔を思い出します。ヴィヴィオさんは、昔、アルハザードに向かう私を止めるために
海鳴市で、ジュエルシードの力を得ていた私と対決しに来たのでした。
それと同じ思いを込めて、私はアインハルトさんと戦うことが出来るののでしょうか。