「私を見捨てたベルカの王たちを、私は許さない……」
「ベルカの王たち？ 見捨てた？……どういうこと？」
「答える義務はない」
ファビアちゃんが魔法を使ってきます。
『黒炎』
『我が主？』
「かわすのは訳ないけど、あえて氷結魔法で打ち消すよ」
「どういうこと？」
「もしかして、あなたも古代ベルカの関係者？」
「やっぱり、答える義務はない」
「……少し、お話、しよっか」
「話すかどうかは、私が決める……帚星」
「ディバインバスターA.C.Sっ！」
ファビアちゃんが放ってきた、箒型の魔法弾を、スバルお姉ちゃんの
必殺技、拳から放つディバインバスターで迎撃します。そしてそのまま
空を駆け上がってファビアちゃんのところへ間合いを詰めます。
『我が主、無茶しますね』
「無茶じゃないよ、今までの戦いであらかたファビアちゃんのことは覚えたよ。
何か切り札でもあれば別だけど……」
「まだ私には……」
「そして、切り札を使われるまでのんびり待つつもりなんてヴィヴィオにはないよっ！」
「バインドなんて私には通用しないと……」
「こんどのはほどけるかな。エリスお姉ちゃんのを見よう見まねで覚えたバインドだよ」
「見よう見まねのバインドなどすぐに解析してみせる」
「すぐに、ね……だけど、……」
『我が主、まさか……』
「勝負はきっちり決めないとね」
「！」
「収束魔法、ヴィヴィオだって使えるんだよ。大丈夫、魔力打撃だから
ファビアちゃんの魔法力を全部ふっとばすだけだよ」
「打たれる前にかならずバインドをほどいてみせる」
「ライチェントゥークス、バインド追加、カートリッジロード」
『わかりました、我が主』
「デバイス単独で魔法使用？ そんなはずは……」
「そんなことはできないよ、魔法を使うのはヴィヴィオだよ。ただ、収束しながらバインドを追加するだけだよ」
『一つブレイクしても、次のバインドが追加になるわけです、二重バインドと言いましょうか……』
「そうまでして、何を……」
「何をって、星光降臨、スターライト……ブレイカーっ！」
結局、ファビアちゃんは、最初のバインドもほどくことはありませんでした、まともにスターライトブレイカーが当たります。
『やりすぎですよ、我が主』
「こうでもしないと、お話聞いてくれそうにもなかったし……」
『もうすこしやりようとかなかったんですか』
「最初が最初だったからね。ひとまずミウラちゃんを助けだそ」
『そうですね、我が主』
ミウラちゃんを助けだそうとした時、突然プチデビルの一体が爆発したように光りました。
「イレイザーフルバーストぉ−！」
「あ、番長たちだ、どうしたんです？」
「どうしたって、ヴィヴィオじゃねぇか、一人で片付けたのかよ」
「一人で片付けたっていうか……すいません。一人で戦ってました」
「あー、謝ることじゃないと思うんよ。けど、うちの出番全然なかったな」
「あ、ジークリンデさん」
「ジークでええよ。長すぎるやろ」
「ジークお姉ちゃん、あれ？ ミウラちゃんは？」
「ミウラとアインハルトは別の瓶に閉じ込められてるみたいだな、今取り出すぜ」
そう言うと、番長はミウラちゃんとアインハルトさんを瓶から取り出しました。
「ミウラちゃん大丈夫？」
「え、あ、はい。ちょっと頭がくらくらするけど、大丈夫です」
「大丈夫なら、そこ服が落ちてるから拾ってくるね」
「いえ、大丈夫です、自分で拾えます」
「じゃあ、あたしらは服を探してくるから……こいつにはいろいろ聞きたいことがあるけど、
それはとりあえず全員集まってからでいいだろ」
「そうですわね」
そう言うと、番長たちは服を探しに出かけていきました。
「ふふ、結局、私たちの出番はありませんでしたわね」
「あれ？ エミーちゃん、どこへ行ってたの？」
「どこって、エレミアの書を探しにでかけてたんですわ」
「そうなんだ、見つかったの？」
「妨害の結界のせいで、みつかりませんでしたけど、結界の主の存在なら見つけることができましたわ。
それで、結界の主のことをはやてさんに伝えて、今はやてさんたちを連れてきたところですわ」
「え、はやてお姉ちゃんたちも来てるの？」
「危ないところやったんやて、ヴィヴィオちゃん」
「ヴィヴィオ、無茶するなよ」
「ヴィヴィオちゃん、大丈夫だった？」
「ヴィヴィオは平気、けど、みんな心配かけてごめん」
「心配とかそういうんじゃねーけどよ。おまえより強い奴らがごろごろやられてるんだろ。
そいつ相手に一人で立ち向かうとか正気じゃねーよ。まあ、……結果オーライかもしれねーけど
これからはんなむちゃすんなよな。おめーは基本、ドジなんだからよ」
「そんなことないもん」
「ほんとにか？」
「ほんとほんと、……まちょと覚悟は……」
「なら無茶するなよ。ミウラに負けてるんだし、心配はするんだよ」
「あ、冬美ちゃん、やっぱり少しは心配するんだ」
「まあ、な……」
「それで、この子が結界張ってたんか？」
「ええ、この人が妨害の結界を作っていたのは間違いありませんわ」
「そうなんか。なら、ちょっと事情をきかせてもらおうかいな、魔力打撃やったんやろ。
回復魔法で話ができる程度には回復するやろな」
そういうと、はやてお姉ちゃんは、回復魔法を使いました。
疾風お姉ちゃんは簡単に言ってますけど、あれだけ強力な魔力打撃を回復させる
回復魔法ですから、よほどの魔力を送り込まないと無理なはずです。
「う、、、ううん……」
「きぃついたか？」
「……あなた……は……」
「私は八神はやてや。ファビア＝クロゼルクやったな、インターミッド参加者の」
「……」
「まあ、そっちから話を始めるようにいうつもりもないわ。
こっちの話をとりあえず黙って聞いてくれればそれでええんよ」
「……」
「どういう理由でこういうことをしたんかとか、それは今問い詰めるつもりもないんよ。
それはおいおい話してもらう機会もあるやろうし、それは今とは違うときやろ。
実を言うと、ヴィヴィオと戦ってる途中からここに来てて、話も途中からは
聞いてたから、古代ベルカの王がらみのなにかちゅうんはわかるんや。
けどな、古代ベルカの王いうても、ヴィヴィオにせよエミーにせよ
記憶継承者のアンハルトにせよ、別人には違いないからな。
ジークの言うとおり、それに縛られて生きるのは、悲しいことや。
けど、それが悲しいことや言われても、ピンと来るようなら
はじめからこういうことはしてへんやろ。
ベルカの王と、本当はどういう因縁があったんかとか
そういうことは、話す気になったら、話してくれればええ。
けど、まず、好ましきは真実、や。
エレミアの書をみつけなあかん、一緒にそれを見て、それから考えようや。
でも、迷惑かけた人には、ちゃんとあやまらなあかんよ。
番長たち、古代ベルカの王でもなんでもないやろ」
「……」
「素直になれんか？……エミー、ヴィヴィオ、エレミアの書、検索できるか？」
「大丈夫ですわ。二人の力を合わせれば、無限書庫のどこにある書でも
きちんと見つけられるはずですもの」
「行くよ、エミーちゃん」
「ええ、ヴィヴィオさん」
粗っぽく検索するのはヴィヴィオの方が得意ですし、ピンポイントで拾い出すのは
エミーちゃんの十八番です。二人が力を合わせれば無限書庫のどこにあろうと
まず間違いなくみつけられるはずです。エレミアの書、という漠然とした
情報でもどこの書棚のどの棚、というところまで正確に出るはずです。
「見つけましたわ。そんなに遠くありませんわね」
「はやておねえちゃん、見つかったって」
「みつかったようやな。せやたら、みんながそろったらさっそく取りにいこうな」
エレミアの書、それが開く真実とはいったい……