めりかるうぃっしゅ
〜フェイトママは稲妻なの〜
「ハンカチ持った？ちり紙持った？着替えはちゃんと揃ってる？お小遣い足りてる？」
「うん、全部揃ってるよヴィヴィオ。
なのはママはこれからお仕事に行ってくるから、ちゃんとフェイトママの
言うことを聞かなきゃダメダからね」
「うん」
「なのは、気をつけてね」
「もう、ヴィヴィオもフェイトちゃんも心配性なんだから。
ちょっと本局に行ってくるだけだよ」
私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
なのはママは、翠屋の看板娘で、第９７管理外世界駐留の監視員さんですけど
教導隊所属の教官でもあるんです。
だから、時々は、本局に行って、教導隊のお仕事をしないといけないんです。
『しばらくよろしく、バルディッシュ』
『me too』
ライチェントゥークスは、バルディッシュと情報交換してるようです。
ヴィヴィオの回りは、今のところ安定しているとはいえ、次元世界全体での
野良ガジェットの出現率は低下していないので、いつ、この世界に現れるかもしれません。
用心のために、なのはママのかわりに、休暇を取ったフェイトママが
翠屋に来てくれました。
『そういう建前ですね、わが主』
「えへへ〜」
「ライチェントゥークスもヴィヴィオに変なこと吹き込まない」
『すいません、フェイト執務官』
フェイトママは、最近ものすごく忙しいそうです。
どのくらい忙しいかというと、この一ヶ月、休憩時間を含めて
一切の休みが取れないぐらいです。一ヶ月間毎日２４時間働いてたら
いつか体をこわしてしまうんじゃないかと思います。
『我が主、バルディッシュより極めて深刻な情報がもたらされました。』
「なに？ライチェントゥークス。フェイトママが病気なの？」
『それについては、今のところ心配はありません、こちらでしばらく
休んでいれば体調も回復するだろうとバルディッシュは判断してます』
「だったら、何も問題ないんじゃないかな」
『深刻な問題なのは我が主の方です』
「え？ヴィヴィオは元気だよ」
『そちらの問題ではありません。主を狙う連中の話です』
「それはいつものことだし、フェイトママがいるから大丈夫」
「ヴィヴィオ、じゃあ、フェイトママと一緒に、なのはママのお見送りに行こうか」
「もう定期便の時間なの。じゃ、ヴィヴィオ、一緒に行こう」
「うん♪」
ライチェントゥークスが、そっとため息をつく気配を感じます。
レイジングハートとバルディッシュは、逆に、ほっとしてる感じです。
どうしてそうなるのかはわかりません。でも、ヴィヴィオはちょっとうきうきしてます。
フェイトママが来ると、それだけで、ちょっとお祭りみたいな気分になるんです。
「いらっしゃいませ。エスプレッソにクロワッサンですね？」
「はい、お願いします」
なのはママが教導隊にお出かけの時には、フェイトママが
かわりにウェイトレスで看板娘です。
そして、なのはママが教導隊にお出かけの時には、特に巡礼者がたくさん店にやってきます。
なのはさんが本局で指導にあたる時の情報が、その筋のサイトにUPられてるんだって
なのはママは笑ってました。
そして、ヴィヴィオも学校から帰ったらすぐに翠屋のお手伝いです。
食器洗い機に食器を入れて、スイッチを入れて、洗い終わったら
お皿を元の場所に返しておくだけの作業なので、ヴィヴィオでも楽々です。
『我が主、ちゃんと踏み台を用意して作業してください。
私を壊してしまうつもりですか』
「ごめん、ごめんってばライチェントゥークス。
んしょ、んしょ。これでいいかな？」
『はい、これで大丈夫です我が主』
「よいしょ、よいしょ、はい、並べ終わった〜」
「がんばってるねヴィヴィオ、えらいえらい」
「えへへ〜」
「じゃあ、食器洗い機に入れるのはフェイトママがやってあげようか？」
「だめー。ヴィヴィオがやるのぉ」
「ヴィヴィオは働き者なんだね。だけど、フェイトママにもやらせてくれないかな？」
「んーと、どうしても？」
「どうしてもやりたいな」
「じゃ、しかたないからゆずったげる」
「ふふ、ありがとうねヴィヴィオ」
「うん」
「ところで、ヴィヴィオは宿題をやったのかな？」
「う゛・・・」
『我が主、学校から帰ったらすぐお手伝いでしたよね』
「宿題をやらないと、桃子さんにいいつけちゃうぞ」
「あーフェイトママずるーい。いいつけちゃうなんて〜」
「ヴィヴィオは偉いから、フェイトママが裏に回れるようになるまで
お手伝いしてたんだよね」
「うん☆」
「お客さんの流れが一休みしてるから、フェイトママも一休み出来るんだよ。
だから、ヴィヴィオは宿題をしないとね」
「…うー・・・」
『我が主』
「ね？」
「……うん…ヴィヴィオ、宿題してくる〜」
うー、なんだか丸め込まれた気がします。
だけど、宿題が終わってるのを桃子おばあちゃんに見せないと
桃子おばあちゃんはお菓子作りを教えてくれません。
なにより、桃子おばあちゃんが一緒でないと、火を使う作業をやらせてくれないので
焼き菓子は全滅なんです。
『もしもし、ヴィヴィオだよ、月光ちゃん、今なにやってる？
ヴィヴィオは今宿題の最中。今日はなのはママがお仕事でいなくって
かわりにフェイトママが一緒だから、良かったらうちにこない？』
『我が主、何をやっているのですか？』
「え、えへへ、ちょっと息抜き」
「宿題はまだ半分も終わってませんが」
「１／３はやったよぉ。だから、ちょっと休み。
あとね、冬美ちゃんもよんで、それからエミーちゃんも呼んで…」
『エミーさんは、一旦家に戻られると、外に出してもらえないそうですが』
「うん、そうらしいね。宿題以外にも、いろんな習い事があるのかな？
そうだ、こんどエミーちゃんのうちにも行こうよ」
『そんなことより、まずは目先の宿題です。我が主』
「えー、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ」
『では、出かける前のお話をいたしましょう』
「出かける前の話ってなんだったっけ？」
『もうお忘れですか、我が主。我が主に迫る危機の事です』
「危機って、フェイトママがいるから大丈夫なんじゃない？」
『ですから、そのためにフェイト執務官が休めなくなっているのです。
ちゃんと話を覚えておいてください。
我が主』
「え、えと、すぐに宿題やんなくちゃ」
またライチェントゥークスがため息をつくような気配があります。
でも、ヴィヴィオは、すっごく不安な気持ちになります。
これを聞いてしまったら、なにか、後戻りできないことが起きるような
そんな予感がするんです。
そんな不安から逃げ出したくって、ヴィヴィオは、積み残している
宿題に立ち向かいます。
「一休み〜」
『我が主、まだ１／３程度残ってます』
「わかってるよ〜。だから、こんどは冬美ちゃんを呼ぶんだよ」
ぽちぽちぽちぽち、月光ちゃんに送ったのと同じだから
簡単に送れてしまいます。あ、月光ちゃんからはメールが来てる。
あれ？やっぱり月光ちゃんも宿題は苦戦中なんだ。んーと、
じゃ一緒にお勉強会しようっておくっちゃお。
そだ、せっかくだから冬美ちゃんにも。
『それで、我が主…』
「そうと決まったら、冬美ちゃんと月光ちゃんが来るまでに
宿題をおわらせちゃおう。びっくりするよきっと。
そしたらフェイトママにお菓子持ってきてもらって…」
『現実逃避も程度問題です、我が主』
「宿題が終わったら聞くよ。ライチェントゥークス」
『約束ですよ』
「うん☆」
宿題が終わるころには、きっと月光ちゃんも冬美ちゃんもうちにきてるはずです。
そしたら、ライチェントゥークスのお話を聞く前に、フェイトママとお話できるんじゃないかって
そう思います。
ライチェントゥークスのお話を聞く前に、フェイトママに、ヴィヴィオの不安を
消して欲しい、そんな風にヴィヴィオは思うんです。
「終わっちゃった…ライチェントゥークス。検算お願い」
『かしこまりました我が主』
「ヴィヴィオ、お友達が来てるよ」
「ほんと、フェイトママ」
「うん。宿題が終わったら遊んでいいからね」
「わーい、実はもう終わってるんだ〜」
「よくがんばったわね、えらいえらい」
「えへへ〜、ねえ、フェイトママ。ご褒美ー」
「ご褒美？なにが欲しいの？」
「あのね、フェイトママの手作りのお菓子」
「いいよ。桃子さんに頼んで、作らせてもらうね」
「やったー！」
そんなわけで、冬美ちゃん、月光ちゃんと一緒にお勉強会です。
ヴィヴィオはもう終わってるので、月光ちゃんや冬美ちゃんと一緒です。
「終わらせたんなら、何もあたしら呼び出すことないじゃないか」
「え、でも…ヴィヴィオちゃんと一緒のほうが、はかどるし…」
「ヴィヴィオがやったノートを見せてもらう方がよっぽどはかどるぜ」
「丸写ししたら先生にばれちゃうよぉ」
「漢字の書き取りなんて、丸写し以外のなにものでもないだろ」
「そういうのは先にやっておけばいいんだよ☆」
「あーはいはいそうですか。…と、出来たぜ」
「冬美ちゃん…もっと丁寧にかかなきゃだめだよ」
「字なんてのはよめりゃいいんだよ。読めれば」
「読めないと思う…」
「いーんだよ、どうせこれからはコンピュータの時代なんだから」
「冬美ちゃんは、コンピュータが使えるの？」
「当たり前。ワープロ検定は一級レベルなんだぜ。
兄貴のPCに入ってるタイピングソフトの検定だけどな」
「それって結構すごくない？私なんてまだキーボード見ながらでないと打てないよ」
「そんなことやってたらつかれるだろ。思ったまま見たまま感じたままが
そのまま打てなきゃ」
「私は手で書く方が楽だよ。コンピュータって、変換しないと打てないじゃない」
「誤変換なんか気にするなよ」
「冬美ちゃん、それは気にしたほうがいいよ」
「うっさい」
「冬美ちゃん、月光ちゃん、ヴィヴィオ、お菓子とホットミルクだよ」
「わーい、ありがとフェイトママ」
「いつもすいません、フェイトおばちゃん」
「ありがと」
「いつもヴィヴィオがお世話になってるよね。これからもよろしく」
「いえ、こちらこそ」
「ま、ヴィヴィオがどんくさいのは、今日に始まったことじゃないですから」
「あー冬美ちゃんってばー」
「そうだね」
「フェイトママも肯定しないでよ〜」
「うさぎさんみたいに急いでなまけるより、カメさんみたいに
どんくさくても、一歩一歩、地道に進むことが大切なんだよ」
「…わかってるよぉフェイトママぁ」
「そうだね、ヴィヴィオは、わかってるもんね」
「うん☆」
「フェイトママは、まだお仕事があるから、そろそろいくね。
二人ともごゆっくり」
「はい、ありがとうございますフェイトさん」
「いただきます、フェイトおばちゃん」
フェイトママが作ってくれたのは、ラスクです。
これに、甘さ控えめのホットミルクがつくのが
フェイトママのお約束です。
キャラメルミルクがいいって一回言ったことがあります。
そのときに、フェイトママは、なのはママみたいには作れないから
フェイトママはフェイトママらしいホットミルクを作るねって言ってくれました。
お菓子作りに失敗しちゃったとき、その言葉を思い出すと、ちょっとだけ
元気が出ます。
「成功したことあるのかよ」
「クッキーは作れるもん」
「火加減は桃子おばちゃん任せだろ。そんなの自分で作ったうちにはいんねーよ。
自分で最後までやって一人前だぜ」
「う゛ー、こんどは、ちゃんと桃子おばあちゃんに聞いて
火を使わないお菓子を作るもん」
「あー、がんばれがんばれ、出来たら試食してやるからよ」
「うん、ありがと、冬美ちゃん」
「…なんか、ヴィヴィオって調子狂うんだよな」
「だけど、ヴィヴィオちゃんらしいよね」
「まあな」
「…えとえとえと、それって、ヴィヴィオ、ほめられてる？」
「その楽天主義にあやかりたいよ」
「そんなこと言ってると、ヴィヴィオちゃん、宿題教えてくれないよ」
「そんなことないよ。どこかわからないところある？」
「いいからヴィヴィオは静かにしてろって、わからないことがあれば聞くから」
「うん、そうする」
「ヴィヴィオちゃん、ここなんだけど…」
「んと、どこ？」
こんな風にお勉強会が進んでいきます。
今日は結局お外に遊びには行けませんでした。
今日は桃子おばあちゃんに、火を使わないお菓子作りについて
ちょっと教えてもらおうかな。
そして、今日もまた、ヴィヴィオは学校に、フェイトママは
翠屋の臨時看板娘です。
「ヴィヴィオ、忘れ物はない？」
「ないよ、ね、ライチェントゥークス」
『確認済みです、我が主』
「だって、じゃあね、フェイトママ…お仕事のことは忘れてて大丈夫。
ティアナお姉ちゃんもなのはママもついてるから」
「うん、ここは平和そのものだもんね、ヴィヴィオ」
「そうだよ☆」
『そろそろ行きましょう、我が主。交通戦争はミッドチルダだけではありません』
「そうだね、ライチェントゥークス」
「うん、ヴィヴィオも、車には気をつけてね」
「はーい、フェイトママ」
こうして、ヴィヴィオは歩いて学校を目指します。
途中でみんなと出会いながら行くので、出だしぐらいしか
ライチェントゥークスとお話しする時はありません。
『我が主、フェイトさんとのお話で、概ね状況はおわかりいただけたでしょう』
「うん、…ナンバーズが脱獄しちゃったんだって。
でもでもでも、もうレリックは回収済みなんだから、ヴィヴィオは大丈夫だよね」
『わからないから、警戒を密にする必要があるんです、我が主』
「…うぅ…だ、だけど、ま、まだ変態おじちゃんは出てないから、まだ…」
『クアットロが脱獄してしまったのですから、安心は出来ません、我が主
今まで以上に緊張していなければならないでしょう』
ヴィヴィオはちょっと涙目です。
ものすごくいやな記憶がよみがえります。
あの変態顔芸博士と、人を怖がらせるのが趣味の眼鏡の顔が浮かびます。
ヴィヴィオの一番…いや、２番目のトラウマです。
一番は言うまでもなくピーマンだよ。
『自慢して言うことでもないでしょう、我が主。
それに、ピーマンより怖くない、という意味になりますよ』
「だってだってだってー」
最近、ライチェントゥークスはつかれることが多いようです。
ヴィヴィオがライチェントゥークスに気を遣わないからかもしれません。
だけど、ヴィヴィオも、ずっと緊張して暮らしてるわけにはいきません。
ヴィヴィオは、普通の小学生さんです。なのはママのような
すっごい魔法少女でも、フェイトママのような天才少女でも
はやておばちゃんのような、夜天の書の主でも、クロノおじちゃんのような
スーパーエリートさんでもないんです。
普通の小学生のヴィヴィオに、そこまで言われても、ヴィヴィオには背負いきれません。
『背負って欲しいのではありません。気にとめておいて欲しいだけです。
負担になっているのなら謝ります、我が主』
「そこまでしなくていいよぉ」
『ですが、私も、ただのインテリジェントデバイスです。我が主』
「お互い、気を抜かずにがんばろー」
『そうですね、我が主』
「よう、泣き虫、今日は転ばずに来たか？」
「もちろんだよ冬美ちゃん」
「そうかよしよし、今日は運が良かったな」
「運がいいんじゃないよー」
「おはよう、冬美ちゃん、ヴィヴィオちゃん」
「おはようアカリちゃん」
「おはよ、ゲッコウ」
何回も話をしてると思うんですけど、月光と書いてアカリちゃんと読むんだよ。
ずっと３人一緒だったんだけど、最近、学校内では、エミーちゃんも
仲間になりました。すこし、エミーちゃんは輪に入り切れてないんですけど
それはまだ、この学校に慣れてないからだと思うんです。
そういうわけで、学校です。
学校でも、宿題を提出したり、授業をノートにとったりです。
そういえば、今日は体育があるんでした。
ライチェントゥークスは、更衣室でお留守番、と言いたいんですけど
物騒なので、携帯電話からとりはずしてお守り代わりに首にぶら下げます。
『行きましょうか、我が主』
「うん、そうだねライチェントゥークス」
「うわ、なんだあれは！」
「みんな、落ちついて避難してください」
「…ライチェントゥークス、何があったんだろう？」
『見に行かなければわかりません、我が主』
ヴィヴィオは、着替えるのが遅いので、みんなが校庭に出てるときでも
まだ更衣室の中なんです。だから、外でみんなが騒いでいても
何が起きてるのか把握しきれません。
ぱたぱたぱた…と、あれ？あれは一体なに？
『見ての通り、ガジェット３型です、我が主』
「なんであんなものが清祥小学校にあるんだよぉ」
『そんなことより、直ちにフェイトさんに連絡をしなければ』
「うん、そうだね。ライチェントゥークス、バルディッシュに連絡を！」
『心得ました、我が主』
連絡はライチェントゥークスに任せて、ヴィヴィオはみんなと一緒に避難するつもりです。
フェイトママならきっと上手くやってくれるはず…あ、まって。
「エミー！速く逃げろ」
「きゃー！」
逃げ遅れたエミーちゃんが、ガジェット３型に捕まってしまいました。
これは大ピンチです。
「くそぉ、こんな時スバルさんさえいてくれれば…」
「いいから冬美ちゃんも早く逃げようよ」
「友達をおいて逃げられるかっ！」
大変です。このままでは、エミーちゃんも、冬美ちゃんも、月光ちゃんも
みんなガジェットにやられかねません。
こういうとき、フェイトママが来るまでがんばれるのは
ヴィヴィオしかいません。
「ライチェントゥークス。魔法使用許可を」
『もちろんです、我が主』
更衣室に逆戻りして、即変身、フラッシュムーブで窓から飛び出します。
「こ、このガジェットめ。エミーちゃんをはなしなさい…なの」
話してわかる相手ではありませんが、とりあえず、ヴィヴィオが何を
するつもりなのか話しておかないと、周りの人に理解されません。
「あと、ここはなんとかするから、二人とも逃げてほしいの」
「あ、あんた、あのときのおばちゃん」
「おばちゃんとはひどい言い方なの」
『我が主、そんなことより、エミーさんを助けましょう』
「うん、そうだね。…さあ、ガジェットめ、私が相手なの！」
巨大といってもガジェット３型です。AMFをのぞけば大した相手ではありません。
ライチェントゥークスには優れた能力があって、ヴィヴィオから吸収した魔力で
対AMFフィールドを形成することが出来ます。
このAAMFの中にいれば、ヴィヴィオも立派な魔法少女として戦えるんです。
ヴィヴィオは、顔があんパンで出来てる人みたいにぐるぐると腕を振り回して
全力でパンチをガジェットに繰り出します
「なのぱーんちっ！」
ガジェットの装甲なんて一撃です。
ばちっ！
「！」
『我が主、今のは…』
「聖王の鎧？一体中に何があるの？」
ヴィヴィオが、これを見間違える訳がありません。
今、ガジェットの装甲を破ったヴィヴィオの魔法パンチを防いだのは
ヴィヴィオが持ってるのと同じ守りの力、聖王の鎧です。
聖王の鎧を発動できるのは、ヴィヴィオと同じ力の持ち主しかありえません。
ということは…
「なんでガジェット型クローン人間なんてつくるの！作った奴はゆるせない…なの」
『どこからそういう発想が湧くんですか我が主』
「え？じゃあ一体…」
『来ます！』
「川崎流奥義、一分の見切りっなの！」
一寸のそのまた１／１０。一分の距離で、ガジェットの攻撃をかわします。
続いて、ヴィヴィオがしなければならないことは、エミーちゃんの確保です。
フラッシュムーブはこういうとき便利です。ガジェットが、鉄の腕で抱え込んでいる
エミーちゃんのそばに飛びます。
「エミーちゃん、もう大丈夫なの。いまたすけるの」
「おまえはだれだ？」
「だれでもいいことなの」
『我が主、助けるのはいいのですが、どうやるのですか？』
「う゛ぃ……山羊流聖剣、エクスカリバー！」
何かの漫画でみた記憶のある必殺技です。
手刀に魔法を乗せて、ガジェットの腕を切り落とします。
「もう大丈夫なの。こんどこそ、安全な場所まで一直線なの」
昔々のなのはママのような台詞ですけど、むしろヴィヴィオには
スバルお姉ちゃんの決めぜりふの印象が強いです。
スバルお姉ちゃんは、救難部隊で誰かを助けるときには
安全な場所まで一直線っていうことにしてるんです。
「出来損ないにしては、まあまあね」
「ひ、人違いなの」
「あら、誰のことを言ってるのかしら？」
「そ、それは…その…き、きのせいなの」
「プラズマザンバーっ！」
ちゅっどーん。
ヴィヴィオが、エミーちゃんを抱えて屋上へ飛んでいる最中に
ライチェントゥークスの情報を聞いて急遽飛んできてくれた
フェイトママが、ガジェット３型をぶった切ったんです。
ソニックフォームのフェイトママなら、翠屋から清祥小学校なんて
あっという間です。ガジェット３型ごときも、バルディッシュなら一撃です。
そして、フェイトママは、ヴィヴィオの先回りをして、屋上で待ってくれました。
「大丈夫、怪我はない？落とし物とかしてない？」
「うん、フェイトママ、全然大丈夫…なの…」
『我が主、それは…』
「ちょ、ちょっと用事があるから、またこんど、なのっ！」
ヴィヴィオは急いで更衣室に逃げます。
エミーちゃんと一緒なのを忘れてました。
エミーちゃんに正体がばれたら、変身している意味がありません。
「変身解除〜っ」
『我が主、気付かれましたか？』
「え？なにが…あ、もしかして、ガジェット３型のこと？
確か、フェイトママの攻撃の時には、聖王の鎧は存在しなかったよね」
『ええ、そのことです、我が主。聖王の鎧は、ガジェット３型の機能ではなかったということです』
「よかったぁ…ガジェット３型に改造された人間なんかじゃなかったんだ」
『安心してばかりはいられません我が主。ガジェット３型の機能ではないとすれば
一体あの聖王の鎧は、誰が発生させたものなのですか？』
「それは、…誰だろう？ヴィヴィオ、わかんない」
『かなり近くに、我が主以外の、聖王のクローンがいるということです、我が主』
「そうだね。フェイトママに言った方がいいかな？」
『後で言った方がいいでしょう。我が主。ひとまず、バルディッシュに
データを転送しておきます。よろしいですか？』
「うん、いいよライチェントゥークス」
「ヴィヴィオ、おまえちゃんと隠れてたんだな、偉いえらい」
「う゛ー、なんか馬鹿にされた気がする。冬美ちゃんのいけず〜」
「今回はほめてるんだぜ。おまえみたいなどんくさいやつが
出しゃばってたら、怪我だけじゃ済まなかったかもしれないもんな」
「でも、冬美ちゃんも無茶だよ。あのとき、助けが現れなければ
冬美ちゃんだってあぶなかったよ」
「ああ、フェイトおばちゃんのおかげで助かったよ」
「え、えと…」
「うん、フェイトおばさんって、スバルおねえちゃんと同じように
異世界の住人なんでしょ。すごいねヴィヴィオちゃん、あんな人が
二人も知り合いだなんて」
「う、うん、フェイトママは、すごいでしょ。だけどみんなには内緒にお願い」
「わかってるって、正義の味方の正体は秘密なんだよな」
「スバルおねえちゃんも秘密にしてあげようね、冬美ちゃん」
「ありがと〜二人とも」
「さてと、エミーの奴と話してくるか。ったく
どじなのはヴィヴィオ一人でたくさんだっての」
「最初に校庭にいたところを急に襲ってきたんだから、どじとか
関係ないんじゃないかなぁ」
「そういう、襲われやすいってことを自覚するのも大切なことだろ。
ヴィヴィオは、ちゃんと誰よりも後に来て、誰よりも早く隠れてたぜ」
「ま、まあ、ヴィヴィオちゃんが無事で良かった」
「ありがと、月光ちゃん」
「おら、無事だったヴィヴィオの話はそれぐらいでいいだろ。
それより、無事じゃなかったエミーだぜ」
「じゃあヴィヴィオが一番〜」
「だから走るなっての、おまえはどんくさいんだからころぶぞ」
「ころばないもーん…どす」
「廊下を走るんじゃありません。危ないでしょう」
「はーい、ごめんなさーい」
「そらみろ、やっぱりどじじゃないか」
「えーん」
「冬美ちゃんってば」
なにか、今日はものすごく危ない事が起きました。
だけど、フェイトママが、ピンチを素早く救ってくれました。
さすがフェイトママです。フェイトママがいてくれると
なのはママがいてくれるのと同じぐらいに安心できます。
ガジェットに友達が襲われたりしたけど、フェイトママのおかげで、ヴィヴィオは今日も元気です。