めりかるうぃっしゅ
〜転校生はお友達なの〜
私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
スバルお姉ちゃんやティアナお姉ちゃんが来たときには
野良ガジェットが海鳴市をうろついてたりしました。
だけど、なのはママがガジェット２型を退治して、スバルおねえちゃんと
ティアナお姉ちゃんが帰った後は、べつに何も起きてません。
毎日毎日が、当たり前のように過ぎていきます。
冬美ちゃんの怪我は、たいしたことがありませんでした。
ちょっと打ち身になっただけで、湿布を貼ったら２，3日のうちに腫れもおさまったんだよ。
月光（アカリ）ちゃんと一緒にお見舞いに行ったら、よけいなことするななんて
いわれちゃいました。
それから、さらに数日経っても、べつになにもおきません。
ヴィヴィオも、いつものように、なのはママのお手伝いをしたり
冬美ちゃんや月光ちゃんと一緒に遊んだりの毎日です。
そんな毎日に、ちょっとした変化が起きました。
先生が、転校生が来たって教えてくれたんです。
「はーい、みなさん、注目。
今日は、転校生を紹介します」
「ねえ、冬美ちゃん、転校生だって」
「わかってるよヴィヴィオ。先生の話を聞けばわかるだろ。
今はホームルーム中なんだから話かけんな」
「え、でも…」
「ヴィヴィオちゃん、先生の話を聞かないと、先生が困っちゃうよ」
「うーん。だけど回りだってね…」
「だからってしゃべんな」
教室内全体が、ヴィヴィオと同じ気持ちに満たされていて
冷静に先生の話を聞こうなんて思ってる優等生は冬美ちゃんや月光ちゃんぐらいです。
みんな、となりや前後と、どんな転校生だろうかって話をしています。
その時間を使って、転校生の名前を黒板に書いてます。
さすがは先生、教室の空気を読むのが上手です。
騒いでる真っ最中に”静かに”なんて言っても通用しないから
おちつかせるタイミングを計ってるんだね。
『それは生徒の方に問題があるんです、我が主』
「う゛ーライチェントゥークスまでヴィヴィオをせめる〜」
『我が主、そろそろ、転校生の紹介があるようですよ』
「あ、そうだね」
「はい、みなさん静かに。
はい、エミーさんお入りなさい。
紹介します、みなさんの新しいお友達、エミー・シュミットさんです」
「エミーです。よろしくおねがいします」
「エミーさんは、帰国子女なので、日本での生活にはまだあまりなれてません。
みなさん、日本のことをいろいろ教えてあげてくださいね」
「よろしくおねがいします」
ぺこり。
あのね、ヴィヴィオは、普通に小学校に入学したので、転校生ではありません。
こっちに来たときには、やっぱりミッドチルダとは違ってとまどったけど
小学校に入ったばかりの時にはとまどうのが普通だから、べつに奇異にはみられなかったんだよ。
…えとえとえと、オッドアイは、結構からかわれたんだけど、それぐらいかな。
エミーちゃんのほうは、オッドアイだったりはしないです。
綺麗な栗毛の髪をポニーテールにまとめてます。
服装はもちろん清祥小学校の制服だけど、すらっとした体形で
ヴィヴィオより背も高いから、ちょっと年長さんに見えます。
なにより印象的なのは、透き通ったエメラルド色の瞳です。
ちょっと、ユーノパパに似てる気がします。
「うわー、綺麗ー」
今までざわついてた教室の雰囲気が変わります。
ちょっと、ため息が流れてます。
「ねえ、ヴィヴィオ」
「なに、アカリちゃん」
「エミーちゃんって、ヴィヴィオに似てない？」
「そっかな？ヴィヴィオってあんな美人じゃないよ」
「そんなことないよ、ヴィヴィオちゃんだって、美人さんだよ」
「えへへ…ありがと月光ちゃん」
「でも、確かに、ちょっと目にはヴィヴィオに似てるんだよな」
「あ、前に見た、へんなお姉ちゃんにそっくりかも」
「変なお姉ちゃんって、婦警さんもどきのこと？」
「ああ、わかったぜ、外灯の上に立ってたおばちゃんだろ」
「おばちゃんって…」
『我が主っ！』
「…ご、ごめんライチェントゥークス…」
「ほらそこの３人！静かになさいっ！」
「ごめんなさい先生」
怒られちゃいました。
でも、月光ちゃんも、冬美ちゃんも、どうしてヴィヴィオそっくりなんて
言うのか理由がわかりません。
成長したヴィヴィオに似てるって言われても、ヴィヴィオには
どうしてもエミーちゃんとヴィヴィオが結びつくような気がしないんです。
「エミーさんの席はどこにしようかしら…あ、ちょうど高町さんの
後ろが開いてるわね。そこに座ってもらえるかしら」
「はい、わかりました」
エミーちゃんは、そういってほほえむと、ヴィヴィオの方へ歩いてきます。
確かにヴィヴィオの後ろの席は空いてます。だけど、ヴィヴィオは
一番後ろの席なんです。空いてるというより、使ってない机があるだけです。
エミーちゃんは、まるでモデルさんみたいに背筋を伸ばして歩いてきます。
本当にヴィヴィオと同い年なのか、ヴィヴィオは疑問に思っちゃいます。
きっと、エミーちゃんは…
「不完全体」
エミーちゃんが、ヴィヴィオの脇を通り過ぎるとき、一言、ヴィヴィオにつぶやきます。
「え？」
不完全体？不完全体って、どういう意味なんでしょうか。
『我が主…今の言葉はお聞きになりましたか』
「うん、ライチェントゥークス。聞いたよ。不完全体って、どういう意味なのかな？」
「はい、ではさっそく今日の授業に入りますよ。教科書の…」
あ、授業開始です、こんなことをしている場合ではありません。
そんなこんなで、すぐに１時間目が終わります。
１時間目が終わると、さっそくクラス中のみんなが、エミーちゃんの回りに集まります。
ヴィヴィオは、そういうのに興味がないので、席を離れて教室の前の方へ行こうと思います。
「高町さん、どこへ行くのかしら」
「どこって、ヴィヴィオがいるとみんなのじゃまみたいだから
前の方に行ってるね」
「私は、高町さんとお話がしたいわ」
「ヴィヴィオとお話？どんなお話をするの」
「ヴィヴィオ、なんだ、シュミットさんと知り合いなのか？」
「ううん。今日初めて会ったんだよ」
「高町さんも、私と同じ出身みたいだから、ここのお話をして欲しいわ」
「同じ出身って、エミーちゃんもヴィヴィオと同じところから来たの」
「同じ所ではないわね。だけど、高町さんも、帰国子女なんでしょう」
「えっと、エミーちゃん、聞いていい？」
「何かしら」
「帰国子女ってなに？ヴィヴィオはなのはママとずっと一緒だよ」
「日本以外に住んでいて、ママと一緒に日本に帰ってきたのなら
それが帰国子女っていう意味よ」
「あ、なんだ、そういう意味なんだ。じゃあ、エミーちゃんもヴィヴィオも
帰国子女だよね」
「そうね。…高町さんの家は、どちらかしら？」
「えっとね、翠屋っていう喫茶店なんだよ。それでね、なのはママは
そこの看板娘なの。それでね、桃子おばあちゃんの作るお菓子は世界一おいしいんだよ」
「そうなの、こんど、寄らせてもらってもいいかしら」
「もちろんだよ。エミーちゃんにはサービスしてくれるようにおじいちゃんにもお願いしておくね」
『我が主、いくらなんでも士郎さんを、ただおじいちゃんというのはかわいそうです』
「だけど、なのはママのパパなんだから、おじいちゃんだよ」
『せめて、桃子さんと同じように、士郎おじいちゃんと言ってあげてください』
「うん、こんどからそうする」
きーんこーんかーんこーん
「あ、エミーちゃん、二時間目が始まるよ」
「そうね。では、高町さん、また後で」
「うん」
なんだか、エミーちゃんとはお友達になれそうな気がします。
ヴィヴィオは、うれしくなってきます。
二時間目が終わりました。
「あのね、エミーちゃん」
「なんですか、高町さん」
「エミーちゃんはどこに住んでるの」
「どこかしら」
「え？」
「こちらに引っ越してきたばかりで、こちらの地理には詳しくないの」
「よくそれで学校に来れたな」
「送り迎えをしてもらってますから」
「へー、シュミットさんのところって、お金持ちなんだ」
「物騒な事件が起きるから、子供だけで通学するのは危険ではありませんか」
「日本じゃそんなに危なくはないよ」
「高町さんがいたところでは、そんなに危なかったのかしら」
「…べつに、そんなこともないよ」
「こちらでは、暴走車がつっこんでくることもあるようね」
「うん、そうだよ」
「明るく言うなヴィヴィオ。死にかけてただろ」
「えっと、そんなことあったかな？」
「おまえの頭の中には何が入ってるんだ、ええ？
すこしは危険から学ぶってことをしろ」
「痛い、痛いよ冬美ちゃん…」
「冬美ちゃん、それやり過ぎ…」
「ゲッコウはヴィヴィオにほんと甘いんだな」
「高町さんは車に轢かれかけたのかしら？」
「えっと、…まあ、そうかな。冬美ちゃんが助けてくれたんだよ」
「助けたってわけでもねーよ。てか、ちゃんと回りに注意してろってんだ」
「ごめんってば冬美ちゃん」
「だけど、自分の家がわからなかったら、迎えが来なかったとき困るんじゃないかな」
「日本語はよくわからないけど、名刺を持っているから、タクシーを呼んで
名刺を見せればいいって母が言ってました」
「あ、そっか。エミーちゃんは日本に帰ったばかりだから
日本語の文字は読みづらいんだ」
「そのわりに、日本語は上手ですね」
「ありがとう、………」
「あのね、エミーちゃん、アカリちゃんは、アカリちゃんなんだよ」
「月の光、って字を書いて、アカリって読むんだ」
「そういう読み方もあるのね。日本語は難しいわ」
「え、あの…べつに、そういう読み方をするのは私の名前だけだから…」
きーんこーんかーんこーん
「じゃあ、エミーちゃん、またね」
「またね、と言っても、移動するわけではありませんわ」
「あ、そか」
どうやら、エミーちゃんとはお友達になれたみたいです。
最初はちょっとびっくりしたけど、ヴィヴィオは、今日も元気です。
『我が主、それでいいのですか？』
「ライチェントゥークス、どうしたの？」
『我が主、どうしてもあのエミーさんは気に掛かります』
「何が気に掛かるの？」
『なんとなく、主に似ています』
「他人のそら似だよ、きっと」
『お忘れですか我が主。我が主は、聖王の器なのです。
そして、聖王のクローン作りは、今でもどこかで続けられているのです』
「だけど、本当に聖王のクローンだったら、わざわざヴィヴィオの前に現れるかな」
『ひとまず、レイジングハートに情報を送っておきます』
「うん。そういうことは、なのはママに任せておけば、安心だよね」
『そうですね、我が主』
ライチェントゥークスには、ちょっと不安なところがあるみたいです。
だけど、ヴィヴィオは１人じゃありません。なのはママもフェイトママも
ユーノパパも、クロノおじちゃんも、エイミーおばちゃんも、アルフおばちゃんも
スバルおねえちゃんもティアナおねえちゃんもリンディおばあちゃんも
みんなみんなヴィヴィオの事を心配してくれてます。
心配してくれるみんなのためにも、ヴィヴィオは、今日も元気です。
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