めりかるうぃっしゅ
〜なのはママは人気者なの〜
私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオだよ。
今日は大変なことが起きてしまいました。
野良ガジェットが海鳴市に現れて、冬美ちゃんが謎の
婦警さんに襲われて怪我をしてしまいました。
それで、今スバルおねえちゃんが、冬美ちゃんを病院に連れて行ってるんです。
「ヴィヴィオちゃん、冬美ちゃん、大丈夫かな」
「スバルおねえちゃんがいるから大丈夫だよ」
「ヴィヴィオちゃん、私たちだけ、帰って、よかったのかな」
「…ヴィヴィオ、わかんない」
『冬美さんの気持ちを考えると、帰ってあげるのが親切でしょう、我が主』
「…そっかな。ヴィヴィオ、よく、わかんない」
月光ちゃんは、冬美ちゃんの事が心配みたいです。
でも、ヴィヴィオは、冬美ちゃんのことは、あんまり心配してないです。
冬美ちゃんならあんな変なおばちゃんなんかにまけたりしないです。
それに、石田先生は、夜天の書に魔力を吸われているはやておねえちゃんを
地球流の医学で助け続けてた名医さんです。
きっと、普通の怪我なんて、あっという間に直してくれるはずです。
『さすがにそれを期待するのは無茶です我が主』
「だけど、見た感じ骨折もしてないし、いざとなったらなのはママだって
回復魔法は使えるよ」
『魔法を使うこと自体が問題です』
「ねえ、ヴィヴィオちゃん、誰と話をしているの」
「え？あ、こ、これはその…」
どう答えていいか、ヴィヴィオにはわかりません。
ライチェントゥークスとお話してるなんて本当の事を言ったら
どう見てもヴィヴィオは危ない人です。
だけど、ヴィヴィオには、すぐに助けが現れました。
「月光ちゃん、翠屋に帰ったよ。せっかくだから桃子おばあちゃんの
お菓子持って帰ったら」
「え？それはさすがに悪いんじゃないかな」
「だったらヴィヴィオが作ったクッキー上げる〜」
「うん、ヴィヴィオのクッキーだからもらって帰るね」
「わーい」
９歳児なんてこんなものなんです。
ヴィヴィオに合わせてくれてるだけかもしれないけど
そんなこと、ヴィヴィオには関係ないんです。
「ただいまー」
「おかえりヴィヴィオ」
「ただいま桃子おばあちゃん。なのはママは？」
「なのはなら、今応接室で雑誌の取材を受けてる最中だよ」
「ありがとう士郎おじいちゃん」
「あれ、ヴィヴィオ、取材の申し込みがあったって話は
出かける前に聞いたよ。もう取材の人が来たのかな」
「うん、そうみたい」
『我々が出かけてからすぐ取材の人が来たようです、我が主』
なのはママは、翠屋の看板娘だけど、正規の管理局員でもあるんです。
だから、管理局員としてのお仕事もしないといけません。
なのはママは大忙しなんです。
『レイジングハートから、取材の状況を転送してくれるという申し出がありますよ、我が主』
「え？ほんとライチェントゥークス。じゃ、回してもらってよ」
『かしこまりました』
「えと、月光ちゃん、今クッキー持ってくるね」
「ありがと、ヴィヴィオちゃん」
「ええと、クッキークッキー」
なのはママがいないので、全部ヴィヴィオが準備しないといけません。
クッキーには紅茶がよく似合うとヴィヴィオは思うのですが
ヴィヴィオは上手に入れられないので、こんな時に使うための
インスタント紅茶で済ませちゃいます。
『我が主、念話で送ります』
（ありがと、ライチェントゥークス）
念話でレイジングハートが、なのはママの受けている取材の内容の情報を教えてくれます。
デバイス同士には、デバイス用の通信がちゃんと用意されていて
こういう情報のやりとりをしてくれるんです。
だけど、その前に月光ちゃんにクッキー持って行かなきゃ。
「できたよ月光ちゃん」
「ありがとヴィヴィオちゃん」
「えへへ…紅茶はインスタントでごめんね」
「ううん、いいよヴィヴィオちゃん」
「クッキーは、ちゃんと乾燥剤の入った茶筒にいれてたんだよ」
「そうなんだ、気をつけてるんだね」
「うん、パティシエさんは、作るだけじゃなくて保存にも気を遣うんだって
桃子おばあちゃんが教えてくれたもん」
『我が主、そろそろよろしいでしょうか』
（うん、いいよライチェントゥークス）
『リアルタイムではなく、少しさかのぼって送ります、我が主』
（うん、わかった）
……取材に応じていただきましてありがとうございます。
…いえ、これも仕事のうちですから。
……一部では、子育てのために管理局を引退したと言われてますけど、本当なんですか。
…そういうわけではなくて、あくまで管理局の新しいシステムの実験なんです。
……実験エリート部隊、機動六課の結果を踏まえて、ということでしょうか。
…ええ、機動六課は、確かにJS事件の解決には活躍しましたけれど
結局は各部署の底上げが平行して必要であるという教訓も残しました。
また、地上部隊の過重な負担と、次元航行部隊の慢性的な人員不足
そして、管理外世界で活動する次元犯罪者の早期摘発といった問題も明らかになりました。
……それで、今度新たに考えられたのが、管理外世界にエース級魔導師を配備する、ということなんですね。
…ええ、管理外世界に、エース級魔導師を配置することで、次元犯罪へのより迅速な対応が可能になると
管理局では考えています。私は、そのモデルケースということになりますね。
……高町一尉の出身世界ですね。
…なのはさん、でいいですよ。雑誌でも、なのはさんって紹介されてますから。
……では、なのはさん。こちらの世界での暮らしはどうですか。
…どうって聞かれましても…元々住んでいた世界ですし、休暇では時々戻ってましたから
なんだか、ちょっと長いお休みをもらってるような、そんな感じです。
……長いお休みですか。この世界は平和なんですね。
…管理外世界ですから、次元犯罪は滅多におきませんね。
ですけど、教導隊の教官として時々本局には戻されてますよ。
……「鬼の高町」って、一部で有名ですよ。
…面白くもない基礎訓練を延々とやらせるから、きっと訓練生には不評なんだろうな、って思っちゃいます。
……そういえば、こちらのランスター執務官補佐も、なのはさんの教え子でしたよね。
…ええ、そうですね。
……すいませんが、なのはさん、ここらあたりで、少し写真を撮らせていただいてよろしいですか。
…写真ですか。わかりました。
……すいません。いつもこんな依頼ばかりで。
…いいんですよ。これも、管理局の広報活動ですから。
……そういっていただけると助かります、では…
『我が主、これぐらいでよろしいでしょうか』
（まじめなお話が終わったんだったら、ママの所へ行ってもいいかな）
『本当に行って良くなったら合図してくれるよう、レイジングハートに頼んで見ましょう』
（わーい、ありがと、ライチェントゥークス）
「ヴィヴィオ、これ、本当にヴィヴィオが作ったの？」
「うん、そうだよ月光ちゃん」
「へー、桃子おばちゃんが作ったんだと思った」
「えへへ…お世辞でもありがと〜」
月光ちゃんが、ヴィヴィオのクッキーをほめてくれました。
でも、ヴィヴィオが作ったと言うには、まだまだ桃子おばあちゃんの手を
借りた部分が多いので、桃子おばあちゃんが作ったようだっていうのは
当然なんです。
早く、全部ヴィヴィオの手で作れるようになりたいけど
クッキーはオーブンを使うので、ヴィヴィオ1人では作れないんです。
ヴィヴィオも、はやく火を使える大人にならなくちゃって思います。
『主、そろそろよさそうです』
「ほんと、ライチェントゥークス」
「ヴィヴィオちゃん、どうしたの？」
「ん、あ、あのね、その…携帯電話に、なのはママが来てもいいって
メールをくれたんだよ。ねえ、月光ちゃん、ママのところ行こうよ」
「なのはおばちゃんが来てもいいって言ってくださるんだったら」
「わーい、じゃ、すぐいこっ」
本当はレイジングハートがいいって言ってるんだけど
レイジングハートの言うことなら、なのはママが言ってるって言っても大丈夫だよね。
てけてけてけてとてとてとてとて
「ママー。お仕事終わった〜」
「あら、可愛いお子さんですね」
「…えへへ…」
「………あれ？ティアナおねえちゃん、どうしたの険しい顔して」
「…あの、すいません、なのはさんへの取材は、これで終わりでしょうか？」
「いえ、あの…出来れば、親子の写真も撮らせていただければ、と思うんですが」
「申し訳ありませんが、プライベートな写真の撮影は、ご遠慮願えませんでしょうか」
「…そうですか、残念です」
「ごめんなさいね」
「どうしたのなのはママ」
「…ちょっと、ママ、お仕事のお話があるから、もうちょっとだけ待っててね」
「はーい。ヴィヴィオ、待ってまーす」
「！」
ティアナおねえちゃんがびっくりしたような顔でこっちを見ます。
あれ？ヴィヴィオ、何か悪いこと言っちゃったんでしょうか。
「ねえ、月光ちゃん、どうやら、ちょっと早く来すぎちゃったみたい」
「うん、ヴィヴィオちゃんの勘違いだったのかな」
「ううん、いいよ二人ともここにいて。
写真を撮らないようにお願いしただけだからね」
「では、これで失礼します、ランスター執務官補佐、では
我々は定期便で戻ることにいたしますので」
「では、転送場所までお送りいたしましょう」
『Emergency,my master』
「レイジングハート、どうしたの？」
「…クロスミラージュ、情報提供…
なのはさん、野良ガジェット、2型です。三機編隊で海鳴市上空を飛行中」
「うーん、何を探しているのかな」
「わかりませんが、今この状態で、取材の方を送るのは危険です」
「……ティアナ、この機会に、管理局の早期対応について、取材してもらおうか」
「いいんですかなのはさん」
「いいよ、こういうとき、なんの役にも立たないんじゃ、悪いからね」
「ねえ、ヴィヴィオ、管理局って、なに？」
「ええと…」
「スバルやティアナがお仕事をしているところだよ」
「なのはおばちゃん、つまり、国際救助隊みたいなところなんですね」
「うん、大まかに言うと、そんな感じ。じゃあ、ちょっと二人はここにいてくれるかな」
「はい、いってらっしゃい、なのはおばちゃん」
「ヴィヴィオも待ってる〜」
（ライチェントゥークス、なのはママの様子を教えて）
『了解です、我が主。レイジングハートはなのはさんの支援で手一杯でしょうから
クロスミラージュより情報を転送してもらうようにします』
ヴィヴィオと月光ちゃんを、応接室において、取材の人たちと
ティアナおばちゃんと、レイジングハートを持ったなのはママは表に出て行きました。
今日は野良ガジェットにたくさん遭遇する日です。
スバルおねえちゃんも、野良ガジェットの1型に出会っちゃいました。
ガジェットというのは、レリックというロストロギアを探す機械です。
ジェイル・スカリエッティっていう、顔芸の得意な変態科学者が
たくさん作って次元世界にばらまいたんです。
ヴィヴィオも、変態さんに捕まってものすごくひどい目に遭わされました。
『スターライトブラスターのフルボッコでしたね、我が主』
「それ必ずしも正しくないよ」
『原因を作ったのは、間違いなくスカリエッティでした、我が主』
そうなんです。ヴィヴィオも、変態さんにレリックを埋め込まれたりしたんです。
でも、もうそんなのはものすごく昔の話です、3年も前のことなんです。
『情報の転送を受け始めました、我が主』
ライチェントゥークスが、ヴィヴィオに、なのはママ達の情景を
ヴィヴィオに見せてくれます。
ヴィヴィオは思考の分割が苦手なので、月光ちゃんと会話しながら
なのはママの様子を見るのは、たぶん、うまく行かないと思います。
「月光ちゃん、ママが帰ってくるまでテレビ見る？」
「何か面白い番組でもあるの」
「わからないから見てみるんだよ」
「そうだね。とりあえずつけてみようよ」
「うん」
これで一安心です。ヴィヴィオはテレビを見てるふりをすれば
表で起きていることを把握できるんです。
…なのはさん、閉鎖空間を作りましょうか。
…いいよ、ティアナ。全部私がやるから。
…大丈夫ですか。
…本当は、私1人でやらないといけないことだからね。
下に破片が落ちないように、チリひとつ残さず蒸発させるよ。
……チリひとつ残さず蒸発させるんですか。
…取材の方はすこし離れていてください。
……あの…写真撮影は…
…ティアナ、こっちは大丈夫かな。
…ええ、なのはさんさえよろしければ。
…でしたら、安全距離を保って撮影してくださいね。
……わ、わかりました。
…これぐらい離れていれば大丈夫ですよ。
…レイジングハート、Set up
・・・・・・
…出来るだけ離れたところで落とすよ、遠距離射撃モード、3点バースト。
…Yes,my master…Divine Buster Extension。
バトルドレスに身を包んだなのはママが、成層圏にちょっとだけ見える
ガジェット2型に照準を合わせます。
レイジングハートがカートリッジを景気よくはじきます。
こんな無茶苦茶なカートリッジロードをして放つ魔法弾を制御出来るのは
なのはママのようなすごい魔法使いさんにして初めて出来ることなんです。
…ディバイーン・・・バスター・・・シュート！…シュート！…シュート！
言うまでもなく、全弾直撃でガジェット2型は完全消滅です。
あの距離で、回避する暇さえ与えずに直撃させることが出来るのも
なのはママぐらいにすごい魔法使いさんにしか出来ないことです。
なのはママは、練習すれば誰でも出来るっていうけど、ティアナおねえちゃんは
あんな遠距離の物体にファントムブレイブを当てるなんてのはさすがに無理ですし
ヴァイスおにいちゃんはあんな短時間に3発撃つなんて芸当は出来ません。
……すごいですね…
…教導隊なら、普通ですよ。それより、写真は、ちゃんととれたでしょうか。
……はい、写真の方は、ちゃんととれました。
…ティアナ、送っていってあげてくれる？あと、スバルが帰ってきたら
一緒にちょっとお話ししようか。
…わかりました、なのはさん。…では、管理局の定期船の発着場所までお送りしましょう。
……今日は長い時間本当にありがとうございました。
…どういたしまして。
どうやら、なのはママの取材は終わったようです。
きっと、来週ぐらい、なのはママの記事が雑誌に載るんだと思います。
なのはママは、管理局でも看板娘なんです。なのはママは、珍獣みたいなって言ってます。
なのはママよりすごい魔法使いさんも、きっと教導隊にはいるんだと思います。
だけど、なのはママが有名なのは、きっと、管理外世界から来た、若くて美人な
魔法少女さんだからでしょう。
でも、そんなことは関係なく、ヴィヴィオはなのはママが大好きです。
素直に言うことが聞けないことがあっても、やっぱりなのはママは次元世界で一番
…フェイトママと同じぐらいに、大好きなママです。
「ただいま、ヴィヴィオ」
「おかえり〜お仕事だったの？」
「うん、いいこにしてた、ヴィヴィオ」
「ヴィヴィオはずっといいこだよ〜」
なんだか、物騒な日になったけど、ヴィヴィオはちゃんと元気です。