ここは、町外れにあるアイラの家。
精霊達は基本的な用事が終わった後も、アイラの家で暮らしている。
カタンの家の方が広いので、そっちで暮らせばよいのに、とはアイラの言葉。
だが、精霊達はアイラの家が気に入っているようだ。

「けど、この家のルールは働かざる者食うべからずだからね」
「そうはいっても今日は休みだろ」
「まあね、アッシュ。今日はお祭りでお休み。だけどやることはあるわよ」
「やる事って？　昨日まで仮装の服を作ってたけど、今日はもうやらなくていいんだろ」
「仮装の服を作ったら、着なきゃいけないでしょ。今日はそういう日なの」
「どうあな、似合ってる？　アイラちゃん」
「んー、あんまこういう服は見せびらかすものじゃないから、似合うとか似合わないとか無いけど
　ま、いいんじゃない」
「ピア様を夜中に連れ出すというのはあまり賛成出来ないのですが」
「心配ならあんたもついて来なさいよフラッシュ」
「言われなくてもそうするつもりです」
「けど、基本子供がやることなのよね。
　フェイやルシエルはぎりぎり子供の範疇に入らないこともないだろうけど
　フラッシュは無理があるかもね」
「何をしに行くんですか？」
「あたし知ってる、いたずらしに行くんでしょ」
「フェイ、その認識は思いっきり間違ってるから」
「えー、けど、いたずらもするんでしょ」
「まあ、仮装していくから、いたずらっていえばいたずらかもね。
　けど、いたずらしに行くわけじゃないわよ」
「トリック・オア・トリートですから、いたずらするのはお菓子をくれない家だけですね」
「カタンが居るのはいつものことだから気にしないことにして
　あんた、仮装用の衣装は持ってきたの？」
「ええ、なんとか自分で作ってきました」
「そんなことしなくても、あたしに言えば作って上げたのに」
「有料じゃろ」
「そりゃ当然……って、メリルも行くつもりなの？」
「わしだけ留守番というのもさみしいからの」
「ま、フラッシュを留守番にしようと思ってたんだけど、来るっていうんじゃ
　メリルだけ留守番になるわね。確かにそれじゃさみしいか」
「アイラ、本当に俺がこんな仮装をするのか？」
「どうしたのルシエル、なんか不満ある？
　まだ秋とはいえ、夜は冷えるわよ。暖かい格好でいいじゃない」
「これじゃ顔も出てないじゃないか」
「似合ってるぜ、雪男」
「なんで俺が雪男でアッシュがピーターパンなんです」
「フック船長の方が良かった？」
「むさ苦しいことにかけてはどっちも同じかも」
「……」
「どうしたのフラッシュ」
「ピア様を死に神にするというのもどうかと思いまして」
「こういうのはギャップがいいのよ。普段のイメージ通りっていうんじゃ
　仮装の意味ないでしょ」
「そういうアイラがマッチ売りの少女じゃ説得力無いぜ」
「まあ、メリルがティンカーベルだしね。
　って、その衣装どこで持ってきたのよ」
「カタンと一緒に作ったのじゃ。裁縫についてはカタンは素人同然じゃからの」
「そういうカタンはチョウチンアンコウの仮装？　意味わかんないわ」
「この衣装を着て、怪しげな踊りを踊るのが流行とフェイさんに聞いたんです」
「どこの世界のはやりなのよそれ。
　まあいいわ。少なくとも仮装ではあるから。
　……そういえば、フラッシュの衣装がないわね。どんな衣装にしようかしら。
　今から作るんじゃ間に合わないし」
「この雪男の着ぐるみを……」
「ルシエル、あんたがそれってもう決まってるの。フラッシュに押しつけようとするんじゃないわよ」
「なんでこんな……」
「おねーさん対策だよな」
「別にそういう訳でもないんだけどね。
　フェイは人にチョウチンアンコウの格好をさせといて、自分だけかっこつけようというんじゃないみたいだし」
「その衣装を決めたのはアイラちゃんなの……」
「あはは、そうなんだけどね」
「普通にゾンビの格好ですね」
「では、私がスケルトンの格好をしてますからちょうどよくなりますわね」
「そうね、イルミー。、ええと、整理するとあたしがマッチ売りの少女で、カタンがチョウチンアンコウ。
　ピアが死神で、アッシュがピーターパン、フェイがゾンビにイルミーがスケルトン、ルシエルが雪男に
　メリルがティンカーベルってことね。で、これからフラッシュの仮装を考えるわけだけど……」
「めんどくさいからかみなり様でいいだろ」
「安直すぎない？　それ」
「けど、あんま時間もないぜ」
「……分かったわよ。じゃ、フラッシュ、あんたこれ着てきなさい」
「分かりました、アイラさん」

5分後

「これはなんの仮装なんでしょうか」
「雷様よ」
「僕の記憶が確かなら、それはかみなりじゃなくていかづちでは……」
「カタン、細かいことは気にしない。
　まあ、これで仮装は全部そろったわね。
　じゃあ、街へ繰り出すわよ」

こうして、仮装した一行は街へと繰り出した。
街は街でハロウィンらしく、お化けカボチャの格好をした
街灯で照らされている。

「トリック・オア・トリート〜」

その中を歩むアイラ達一行。
仮装して街を歩いているのはアイラ達だけではないけれども。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい。

---