異聞・少女義経伝・参．後
カリオストロの義経
【終章】
〜後味〜
ここは、時空管理局の本局にある会議室の一つである。
そこでは、今回の事件の反省会がクロノ執務官と義経軍団、そして
関係者となった第９７管理世界の観月提督に廉也が加わってひらかれていた。
「ずいぶん強引な事をしてくれたね」
「クロノ執務官、事件解決には必要なことでした」
「それはわかっている。僕も緊急避難的な対応を非難するつもりはない。
けど、第５３管理世界からは苦情が来たよ」
「あはは〜やっぱり、強引すぎたかな」
「当然だ源執務官。普通なら譴責処分では済まないところだ」
「…なあ、クロノ執務官」
「どうした、武蔵坊警部」
「警部は止めてくださいよ、もう第５３管理世界の話は終わりでしょう」
「その通りだが、警部としては、辞任じゃなくて解任ということになった。
それに、君たちのおかげで、陸からも苦情が来たよ」
「陸というと、地上本部だな」
「そうだ、那須執務官補佐。…管理世界の自治権を尊重しなければ
地上本部から派遣する陸士の活動に無用の制限を受ける
可能性があると言ってきたよ」
「だけどさ、今回はあたしらが、カリオストロ公国の非道をただしたんだぜ。
本来の統治者のクラリスだって、感謝するって言ってくれてるし
何も問題無いんじゃないか」
「…いつもいつも、こう上手く行くと思ってもらっても困る」
「でも、こう言うことを期待は、されていたのでしょう、クロノ執務官」
「…まあ、期待してなかったと言えば嘘になる」
「…まあ、いいか」
「いや、きになることがあるなら行って欲しい、武蔵坊執務官補佐」
「じゃあ言うけどさ。なんか、今回の事件って釈然としないんだよな」
「…黒幕のカリオストロ伯爵を逮捕出来なかったことか」
「いや、それはもあるんだけど、…カリオストロ伯爵は
どうやって第５３管理世界や、管理局を動かすことが出来たんだろう」
「それについては、第５３管理世界のインターポールがジョドーを問い詰めてる。
だが、はかばかしくはないみたいだ。本当に重要な情報は
カリオストロ伯爵しか知らないようだ」
「あの転送装置はどうなるんですか、クロノ執務官」
「廉也、あれはカリオストロ公国が、管理局の支援を受けて自ら
運用することに決まったよ」
「そうですか、なんだか、それを聞いて安心しました」
「神機と同じ扱いなのですね」
「そうだ、観月提督。基本的に、特定ロストロギアではないなら、管理世界の
自治権が優先される」
「…クラリス様の結婚は、当分さきになりそうですね」
「なに紅葉、そんな心配してるの？」
「え、いえ…」
「結婚式の様子によったんだろ、紅葉は」
「え、ま、まぁ…」
「こほん。…ともかく、時空管理局としては、今回の
義経軍団の行為は、自作自演の緊急避難処置として
一応承認することに決まった」
「ほっ。よかった〜」
「次からは、もっと慎重に事を運んで欲しい」
「可能な限り〜事件解決に〜慎重に作戦を〜立てたつもりなんですけど〜」
「一歩間違えたら、管理局本局が第５３管理世界に謝罪しなければ
ならなくなる瀬戸際だったんだぞ」
「そうなったら、あたしらは本当に指名手配の次元犯罪者
義経一味になってるだけだろな」
「こら、玲奈。私たちは管理局にお世話になってるんだ。
そんな言い方するものじゃない。
与えられた条件で、最善を尽くすしかないよ」
「そうですね、九羅香様」
「ま、何があろうとあたしらが力を合わせれば、大抵のことは出来るだろうぜ」
「管理局が力を独占出来るのは、その力を法に基づいて用いるからだと
いうことを忘れないように」
「はい、クロノ執務官」
俺の心に引っかかっていた、カリオストロ伯爵のクライアント。
管理局すら動かせる何者か。
それが、ジェイル＝スカリエッティ事件という形で姿を現すのは
まだこれから何年も先のことになる。
おまけ。
「なあ、ルパン。ゴート札の謎が解けたらしいぜ」
「ああ、しってる。なんでも、時空管理局の奴らが
介入して解決したらしいな」
「ルパン。先を越されて悔しくはないか？」
「次元、どうせ偽札だろ。俺は偽物には興味ないんだ」
「それで、転送装置が見つかったって話は聞いてるか？」
「ん、それも知ってるぜ。管理局の奴らが自分のものに
するって言い出すんだろ」
「…カリオストロ公国じゃ、こいつを観光の新しい目玉にするそうだぜ。
転送の実演もやるために今管理局の手を借りて詳しく調査してるってさ」
「転送装置か…なあ、次元。この世界だけに閉じ込められてるって
なんか、不自由じゃないか。もっとすげーお宝が
次元世界には散らばってるって言うのによ」
「だからって、この世界の外に出るには、次元航行船を
使うしかないぜ。それはいやだって言ったのはルパン、おまえだろ」
「盗み出しても運ぶ手段が限られちまうからな。
けど、俺達が使える転送装置があるならどうだ？」
「ルパン、何を考えてる？」
「…ふーじこちゃんのこと」
「不二子だぁ？」
「ふーじこちゃんがさ、こんなおいしい話、見過ごしてるわけないからさ。
一つ、追っかけてみようってわけ」
「また女の尻を追いかけるのか」
「次元、五右衛門、行こうぜ、お宝が待ってるんだからさ」
「…断る」
「そういうなって五右衛門。次元の海の向こうにゃ、おまえを待ってる
強い奴もいるだろうし、斬鉄剣みたいなレアアイテムだって
見つかるかもしれないぜ」
「…ま、ルパンは一度言い出したら聞かないからな」
「そーゆーこと、じゃ、今から計画をねるとすっかな」
こうして、第５３管理世界から飛び出した、広域次元犯罪者
ルパン三世と、それを追うインターポールから
時空管理局に出向した銭形警部の話は、全く別の物語である。
