俺の名前は武蔵坊弁慶。元は普通の高校生だったはずなんだが

観月ちゃん…ああ、観月ちゃんが誰かは後で説明するよ…の術で

観月ちゃん達の世界に召喚され、そこで、源九郎義経こと

源九羅香…ああ、この辺の事情についても後で説明する…に出会ったんだ。

 

なんで義経が女の子なんだ？とか、どうして俺が弁慶を名乗るようになったのか。

これについて話せば長くなる。出来るだけ短く説明すると、俺たちの世界、つまり

基本的にこの文章を読んでるあなたの世界、ということになるわけだけど

その世界と、時間的に８００年以上ずれた、平行世界に俺が呼び寄せられたってこと。

そして、その世界の弁慶さんから、俺は、九羅香と弁慶の名、そして弁慶の

長刀を託されることになったんだ。

 

それから起きたことも、一言では説明しにくい。源平合戦では、妖魔を用いる

平家と戦って、いったんは神機…ああ、神機についても後で説明するよ…とにかく

神機の封印が出来た。…はずだった。

ところがその神機がなぜか鎌倉の手に渡っていて、鎌倉が神機を使って奥州を支配しようとした。

これも俺たちは、…奥州平泉の壊滅、っていう酷い犠牲を出したけど、阻止することが出来た。

そう思ったら、こんどはヴォルケンリッターという魔法使いの集まりと神機の奪い合いだ。

これは、結局、時空管理局…ああ、これについても後で説明しないと…の介入によって

穏便に話が済んだ。

 

ここで、みんなが奪い合った神機について説明しておこうと思う。

神機というのは、一言で言うと、強大な魔力を秘めたロストロギアだ。

ロストロギアっていうのは、世界を滅ぼす力を秘めたオーパーツだと

理解してもらうのが早いと思う。

神機は、そんなロストロギアの中では、割合安全性が高いものであるらしい。

だから、今でも観月ちゃん…平家の姫で皇位継承権所持者…のもとで管理されている。

そして、危険なロストロギアを管理するために、魔法使いの集まりによって

運営されているのが、時空管理局なんだ。

麻薬取り締まりの、国際警察みたいなものを想像 してもらえたら、なんとなく

イメージが出来るんじゃないかと思う。

 

俺たちは、いろいろあって、今、時空管理局の一員になっている。

俺の知っている歴史では、義経主従はとっくに討ち死にしているし

もはやあの世界…九羅香達の世界…でも、九羅香達のいるべき場所はない。

それなら、もっと広い次元世界にでることが出来る、時空管理局で

魔法の習得をしながら、次元世界の平和のために働くのもいいだろう、そう思ったんだ。

 

…ふう、ここまでのあらすじの説明はこんなものかな。

詳しくは、異聞・少女義経伝の参を読んで欲しい。

 

この物語は、それから１年後、一通りの訓練を終えた俺たちが

俺たちの後見人であり、上司にもなるクロノ執務官に呼ばれたところから始まる。

 

---

 

ここは、時空戦艦アースラにある会議室だ。

俺たちは陸士…つまり、飛べない魔法使いってことだ…ながら
本局勤務ということで、海…つまり、時空の海を越える勤務をすることなっている。

 

「源九羅香、入ります」

「武蔵坊弁慶、入ります」

「佐藤紅葉、入ります」

「那須与一、入ります」

「静〜入りますね〜」

「伊勢玲奈、入るぜ」

「玲奈、行儀が悪い…佐藤楓、入ります。ほら源九郎、おとなしくする」

「義経小隊、全員集合だね」

「はい、クロノ執務官」

「君たちの訓練成績についてはこちらも把握している。

　ここまでは、期待通りの成績を収めてると言っていいね」

「指導教官の熱心な指導のたまものです」

「ああ、リーゼやアリアにも特別講義をさせてたっけ」

「それで、今日はどのような用件でしょう」

「そろそろ、君たちにも実務に入ってもらいたいと思う。

　派遣先も既に決まっている。第５３管理世界だ」

「どんなところなんですか」

「ベルカ自治領みたいな平和な田舎街だよ」

「ベルカ自治領にはまだ行ったことがありませんが…」

「観光と牧畜が主体の、風光明媚な山の中にある場所だ」

「スイスみたいな所なんですね」

「惑星全体がそういう訳ではないが、君たちに言ってもらうのは、そこになる」

「一体、どんなことをすればいいんですか？」

「第５３管理世界は、魔法文化レベルC、ロストロギアによる時空移動が可能ながら

　独自ではそれを運用できない。それでも、その世界と我々との世界では一ヶ月に一度程度の

　定期便が就航している」

「それで。」

「最近、ミッドチルダに偽札が流れ込んできている。それも様々な次元世界に対応した偽札だ」

「もちろん、それについては調査してるんですよね」

「どうやら、製造しているのが第五拾参管理世界の、カリオストロ公国であるところまでは突き止めた」

「なら、あとは管理局の権限で踏み込んで調査するだけですね」

「残念ながら、そうはいかない。管理局の権限は、ロストロギアが絡まなければ

　それほど大きな物ではないんだ」

「ちぇー、それじゃ何も出来ないってことじゃん」

「現地には、国際警察が存在する。君たちには、その、国際警察から適当な権限を

　与えてもらえるよう交渉を終えてある」

「そうですか。それで」

「弁慶に警部の権限を、他の全員には巡査の権限を与えてもらってある」

「ちょ、なんで俺が警部なんですか。むしろそれは九羅香の方が…」

「…これは噂の段階なんだが、カリオストロ公国にはロストロギアが存在するらしい。

　それを守るために、カリオストロ伯爵が防衛兵器を買い込んでいるという話もある」

「そんな資金がどこから出てくるんでしょうね」

「それも、偽札作りから生まれているというのが、我々の見解だ」

「偽金作りのために偽金を作る。そして、最終的にはロストロギアを手に入れる」

「…管理局として見過ごすわけにはいかない。だが、海として大々的に介入するわけにもいかない。

　それで、君たちの出番というわけだ」

「現地で〜表と裏〜両面から捜査する〜ということですね〜」

「そういうことだ。裏の調査に向いて居なさそうな弁慶に、一番目立つ役をやってもらう。

　九羅香には全体のまとめ役を、裏の調査には玲奈を、作戦は静に一任する。」

「わかった、全力で謎を解明する。偽札と、ロストロギアだね」

「確かに、俺は嘘を嘘と見抜くのは下手だもんな、せいぜい目立つ役をやらせてもらうよ」

「私は九羅香様を補佐すればいいのですね」

「戦いごとになったら、私の出番だな」

「はい〜カリオストロ公国の情報をくだされば〜計略は私が考えます〜」

「情報調査なら忍者の仕事だぜ、忍ねこどもも、今まで以上にいい働きができるぜ」

「魔法の感知ならあたしの仕事ね。源九郎にもがんばってもらうわ」

「明日、定期便がでる。それに乗って現地に向かってくれ、細かい資料は
　船内で呼んでもらえばいい、では解散」

「はい、クロノ執務官殿」

 

これが、 俺たちの初仕事、カリオストロ公国事件の始まりだった。

 

 

 

---