「ただいま」

「おかえり、Ｐ−３、カスミさん」

 

　ここは、旧園宗寺邸

　今は先生とＰ−３達の家になっている

 

「あれ、今日は何かあるの？」

「ふふっ、ちょっと今日はごちそうしようと思うのよ」

「そうなの？ねえ、私も手伝うことないかな」

「そうね、ならテーブルを拭いてちょうだい」

「分かったの」

 

Ｐ−３は布巾を取り出すとテーブルを拭き始める

 

「私はなにをてつだおうかな？」

「カスミさんは私と一緒に料理を手伝ってくれないかしら」

「うん、いいよ」

「そうそう、Ｐ−７はどこへいったの？」

「Ｐ−７ならＰ−４と一緒に買い物に行ってますよ」

「そうなの？Ｐー４って今日はおやすみだったかな？」

「ふふっ、今日は特別な日なのよ」

「そうなの？何か今日あったかな」

「先生が帰ってきたら分かりますよ」

「えっと・・・もしかして、結婚記念日？」

「先生は独身ですよ

　それに、結婚もしたことはありませんよ」

「そうだね、まだ結婚してないね」

「Ｐ−３、テーブルを拭いたら玄関の掃除をしていてちょうだい」

「Ｐ−６，そこまでするの？」

「ええ、今日は特別な日ですから」

「ねえＰ−６、今日はなんの日なの？」

「ふふっ、全部先生が帰ってからよ」

「どうしても教えてくれないの？」

「先生が帰ったら教えてあげますよ」

「なら、今から掃除してくるの」

 

Ｐ−３は素直に玄関の掃除に向かった

もう日は短くなっている

このご時世、女の子だけで帰るのはそれなりに物騒ではある

といっても、途中までは十夜が送ってくれるのではあるが

 

Ｐ−３が普通に掃除していると、Ｐ−４とＰ−７、そして

二人と一緒になって先生が帰ってきた

 

「おかえり」

「ただいま〜、あれ？Ｐ−３もう帰ってたの」

「・・・・おかりなさい・・・・」

「おや、Ｐ−３が先になったのか」

「そうなの

　今日は十夜くんが寄り道せずに帰ったの」

「そうか」

 

　先生はそういうと、普段は見ることもない時計を

　ポケットから取り出して・・・

 

「６時１０分前だよ☆」

「Ｐ−７！ちゃんと目で確認してからにするの！」

「え〜だってわかるんだもん」

「普通の人間みたいにしないとだめなの！」

「ぶぅ・・・人間って不便だね」

「私は見なければ分からないんだがね」

「先生も強化すればいいのに」

「Ｐ−７、人間の会話をしないとだめなの！」

「・・・・・そろそろ中に入りましょう・・・

　・・・・外にいると寒いですよ・・・・・」

「そうだな、外に立っていても仕方がない」

 

　いつもの日常、平和な一家の団らん

　でも、今日は特別な日

 

　Ｐ−３達が食堂に帰ると、Ｐ−６とカスミは

　すでに料理を用意して待っていた

　人数分とは思えないだけの皿が並んでいて

　真ん中には七面鳥の丸焼き

　ガスコンロの上ではシチューが湯気を立てている

　オードブルも全部Ｐ−６の手作り

 

「ねえ、先生が帰って来たんだからなにをするのか教えて欲しいの」

「Ｐ−３、ひとまず席に座ろう

　話はそれからでいい

　Ｐ−７、買ってきたケーキを真ん中に置いて」

「はーい」

「ケーキ？今日は誕生日か何か？」

 

Ｐ−３は、カスミがほほえんだ様な気がした

 

Ｐ−７がテーブルの真ん中にケーキを置くと

Ｐ−４がケーキに一本だけローソクを立てる

Ｐ−６がローソクに灯をともす

カスミはＰ−３以外の全員にクラッカーを配っている

 

「え？私にはないの？」

「Ｐ−３、まだ気が付かないかね？」

「え？え？」

 

　気づいてないらしい

 

「音頭は誰がとるの？」

「そうだな・・・カスミ、頼む」

「うん、お父さん」

「・・・・せ〜の」

 

 

　　　　　　　　　　　　　　お誕生日おめでとう、Ｐ−３

 

 

　クラッカーが一斉に景気のよい音を立てると同時に部屋の照明が落ちる

　急に暗闇になった部屋の中、一本のローソクが優しく光を放つ

 

　呆気にとられているＰ−３

 

「Ｐ−３、去年の今日、おまえが生まれたんだよ

　もしかしたら覚えてないかもしれないが」

「え・・・今日、だったの？」

「ああ、ちょうど一年前の話だ」

「あれから、まだ一年しか経ってないんだね・・・」

 

　戦うために生まれてきた試作機３号

　それが自分だった

　その自分が、それから一年経った今日、家族と一緒に誕生日を祝ってもらってる

　もし、これが夢だったら・・・

 

「夢なんかじゃないよ！」

「Ｐ−７・・」

「夢なんかじゃないよ、Ｐ−３のせいで私は学校に行かなきゃならないだからねっ」

「Ｐ−７？変なこと言ってるとケーキをわけてあげませんよ」

「え〜ん、Ｐ−６のいじわる〜」

「・・・・・遅いですね・・・・」

「そうだな、そろそろ来てもいいころなのだが」

「来てもいい頃って・・・」

 

　ぴんぽ〜ん

 

「あ、誠志郎くんに瞳さんなの」

「私が行ってくる」

 

　Ｐ−７が飛ぶようにして玄関へ走っていく

 

「ローソクを消すのはもう少しだけまって」

「うん、カスミさん」

 

　誠志郎と名城は、巨大な箱を二人がかりで担いで入ってきた

　中になにが入っているのかＰ−３は興味があったが

　名城の・・・Ｐ−５が干渉波を出していて確認出来なかった

　この種の能力はＰ−５の方が上なのだ

 

「ねえ、瞳さん、その中なにが入ってるの？」

「えへへ〜ひみつだもんね〜」

「そうそう、これは後のお楽しみ」

「Ｐ−３、そろそろ始めましょう」

「うん・・・」

 

　すこし、Ｐ−３の顔が曇る

　一番この日を祝福して欲しい人が、今ここにいないから

 

　みんなが歌ってくれるHappy Birthday to you

　でも、それを歌声の中に、十夜の声はない

　それがすこしだけ寂しい

 

　でも、それは単に聞いてないからかもしれない

　そう思って、Ｐ−３は自分を慰めた

 

　歌が終わる

　いよいよ儀式はクライマックスだ

 

　ふっ

 

　Ｐ−３が、一本のろうそくを吹き消す

　一瞬で部屋が真っ暗になる

　ちょっとだけ間が空き、それから全員の拍手

 

「おめでとう、Ｐ−３」

「ありがとう」

 

　いつの間にか部屋に明かりが戻っている

 

「さてと、じゃお待ちかねのプレゼント・・私たちからの心づくしだから」

「そうそう、これを用意するのは苦労したんだぜ」

 

　そういうと、名城と誠志郎は、二人して運んできた巨大な箱を縛っていた

　ロープをほどく

　ロープをほどくと、展開図を広げるように箱が開いていき・・・

 

「・・・おまえら、覚えてろよ」

 

　箱の中には、ピンクハウス系の服を着せられた十夜が、

　仏頂面で座っていた

 

「あはは〜かわいい・・い〜な、Ｐ−３はこういうプレゼントがもらえて」

「ふふっ、よく似合ってますよ」

「・・・・・やりすぎですね・・・・」

 

　それをいっちゃあおしまいです

 

「ねえ、・・・このプレゼント、本当にもらっていいの？」

「もっちろん、ちゃんと当人の了解も取ってあるもんね」

「そうそう」

「・・・・・・おまえら、この服は何とかならなかったのか」

「それじゃ服以外は文句ないんだね」

「・・・・・・・・・・・」

「誠志郎くん・・・瞳さん・・・・すてきなプレゼントありがとう」

「はいはい、みんな席に着いてちょうだい

　せっかくの料理が冷めてしまいますよ」

「お、早く食おうぜ」

「誠志郎くんって、結局食べることになるんだね」

「そりゃこれがパーティの一番の楽しみだろ」

「誠志郎くんはこういうプレゼントは欲しくないの」

「こういうって・・どういう？」

「だからね・・・こういうプレゼントっ」

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい

 

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