執事のおにいさんに送ってもらって、出かけた先はウインターカップ本戦の会場なの。
会場では、すでにミカヤさん達が待ってたの。

「十分リラックスしてきたか」
「はい」
「それは良かった、本戦は一筋縄で行く相手ばかりじゃないからな」
「出来ることは全部やる積もりなの」
「あんまり肩に力を入れるな。せっかくリラックスして来たのが無駄になる」
「そんなに緊張してるつもりもないよ」
「そうか、それならいいが」
「みなさん、インターミッドでもいい成績を出してますし、観客の方は大丈夫じゃないかと」
「むしろミウラが心配だな、前回、ヴィヴィオに緊張しすぎで負けてるんだから」
「今日は今のところ大丈夫ですよ。試合が始まっても今と同じなら、やれる気がします」
「それで、私達の相手になる方は、どなたでしょうか」
「どなたっていうか、一回戦は、一人を除いてくじ運が良かったな。
　それほど強敵とは当たらないよ」
「それほどでなくても、全力を尽くさないと負けますよね」
「それは当然、だが、全力を出せば問題ない」
「で、くじ運が悪かった一人とはどなたでしょうか」
「おまえだな、アインハルト。最初から苦しい戦いになった」
「どなたと当たるのでしょうか」
「現役Ｕ−１５チャンピオン、エーデルガルト・バルカス。インターミッドは今回捨てて
　ウィンターカップで有終の美を飾って、それからインターミッドを目指すようだ」
「つまり、対戦出来るのは、今回が最後の機会ということになりますね」
「そうだな」
「なら、むしろくじ運よく当たることが出来ました。
　覇王の実力、存分にお見せします」
「とはいえ、相手は本当の実力者だぞ。インターミッドに出てれば
　異世界からの留学生を含めて、容易には上がってこれなかったろう」
「それならなおさらです」
「良い返事だ、じゃあ、そろそろ会場に入るか」
「はい」

第一回戦は、一戦ずつやるんじゃなくて、会場内にいくつも設置されてるリングで同時にやるの。
それで、セコンドも何人も必要なの。
私のセコンドには、ミカヤさんがついてくれるの。

「キミは格闘でもいいセンスをしてる。落ち着いて行けば大丈夫なはずだよ」
「はい」
「よし、じゃあ行ってきなさい。まずは体を温めるつもりで」
「それじゃ相手をなめすぎだと思うの」
「ははっ、そうかもしれないな。だが、緊張しすぎないように」
「はい」

私の相手は、インターミッド出場のシード組みたいなの。
そこは私と同じなの。だけど、私は槍のリーチとゴッドスレイヤーの威力頼みだったの。
相手は格闘一本だったみたいなの。その分、私が不利かもしれないの。

ゴングが鳴るの。

私はとりあえず、相手の出方を待つの。
相手は思いきって懐に飛び込んでくるの。
それはさすがに私をなめすぎだと思うの。

踏み込んでのカウンターパンチ。
そこから素早く足払いを掛けるの。

足払いはかわされたけど、それは計算通り。
相手は足払いをかわしたことで油断するけど、私の本当の狙いはそこじゃない。
足払いをかわされて背中を向けたと思い、迫ってくるまでが私の計算。
狙いは足払いをよけさせて間合いを一瞬開くことでの回し蹴り！

私が体勢を崩してないことに相手は驚くの。
だけど、もう遅い。回し蹴りがきれいにヒットするの。
相手はダウン。これで勝負ありなの。

「よくやったな。あれは最初からの狙い通りなのか？」
「狙ってやったの。狙わずに出来るほどの才能はないの」
「そうか。よく落ち着いてたぞ。さて、二回戦に備えようか。
　いや、その前にアインハルトの応援に行くべきかな」
「アインハルトさんの試合はいつからなんです」
「チャンプの試合は、一回戦が全部終わってから、特別に行われるんだ。
　だから、全員の試合が終わってからゆっくり応援できるよ」
「チャンピオンって特別扱いなんですね」
「そうだよ。だからこそのチャンプだ」

そう言いながら、私達は選手控え室へと移動していくの。

「結果はどうだったの？」
「もちろん勝ったよ、霧子は」
「作戦が図に当たって勝利できたの」
「なんとか落ち着いて戦えました」
「それなら、ミウラさんも大丈夫だったんだね」
「はい、おかげさまで」
「私も勝ってきましたよ」
「コロナも勝ち上がったんだ」
「あー、誰も聞いてくれない」
「リオは余裕だったんでしょ」
「まあ、勝ってきたけど」
「なら、あとはアインハルトさんだけだね」
「そうだね」

私達は、精神を集中してるアインハルトさんには、声を掛けづらかったの。

「アインハルトちゃん、時間だよ」
「はい。準備は出来てます」
「ならよかった。相手はＵ−１５相手なら無敗のチャンピオンだよ。
　対策はちゃんと出来てる？」
「自分のやってきたことをを信じるだけです」
「うん、良い返事だ。多分、アインハルトちゃんにとっても、今までで最強の敵になると思う。
　全力を尽くしてくるといい」
「はい」

そう言うと、アインハルトさんは試合会場へ向かっていくの。
そして、大歓声が響いてくるの。

「さ、私達も行こうか」
「ミカヤさんは行かなくていいんですか？」
「アインハルトのセコンドには、ハリーがついてる。問題ないさ」
「そうですね。セコンドが必要なんでしょうか」
「必要だろうね。今までとは異次元の強さを持った相手だよ」
「アインハルトさん、大丈夫かな……」
「……大丈夫、と言い切ることは、私には出来ないね。
　それぐらいの強敵だ。今のアインハルトの実力でも、10回やって10回勝てる相手じゃない」
「本当はどれくらいなんでしょうか？」
「それも分からない。チャンピオンと当たったら、私だって10回中10回勝てるとはとても思えないからね。
　さあ、急ごう、試合を見ることが出来なくなってしまうぞ」
「はい」

私達は、なんとかゴングが鳴る前に、観客席へとつくことが出来たの。

「あれが、Ｕ−１５のチャンピオンなんだ」
「安心しろ、さすがにジークの方が1枚上だよ」
「あんまり慰めになってないかも……」

そして、試合開始のゴングが鳴るの。
Ｕ−１５のチャンピオン相手に、アインハルトさんはどう戦うの？


 

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