「みんな筋が良い子ばかりだね、ノーヴェの教え方もうまいんじゃないかな」
「みんな努力を惜しまなかったからな」
「間違った方向に努力させないのはコーチのお仕事だよ」

なのはおばさんとノーヴェとが会話してるの。
確かに、私達は毎日練習してたけど、ノーヴェの指導の元でなの。

「で、なのはさんのメガネにかなうぐらいの腕前の子はいたか？」
「みんな筋が良いよ。誰がって言うわけにはいかないかな」
「優等生の答えだな。まあいいけど、で、これからどうする？」
「この子達は基本的にみんな格闘の大会に出るんでしょ」
「そうだな。基本的にっていうか、ヴィヴィオ以外はみんなU-15に出場予定だよ」
「U-15は格闘メインだから、私が教えられることはすくないかな」
「すくないって言っても、教えられることはあるんだろ」
「まだスバルやノーヴェの方が教えることは多いと思うな」
「あの、なのはおばさま」
「なに？　アインハルトちゃん」
「えと……管理局教導隊の方って、強いんですよね」
「まあね、私はまだ教導隊の若輩者だけど、教導隊は他の局員に戦闘を教えるのが仕事だからね。
　それなりには実力はあるつもりかな」
「では、手加減無しで私と手合わせしていただけませんか？」
「ノーヴェ、どうなの？」
「アインハルトか、なのはさんの手加減なしっていうのはともかく、アインハルトなら、なのはさんと手合わせして
　学ぶところは色々とあるだろうな」
「ん、わかった。じゃ、手加減はなしでね」
「ありがとうございます」
「あの、なのはママ」
「なに？　ヴィヴィオ」
「本当に手加減なしでやるの？」
「今のアインハルトちゃんの実力なら、手加減なしでやらないと失礼かな」
「そうなの？」
「さっきの模擬戦を見てたらそう思うよ。まあ、私も負けたくはないしね」

そう言うと、なのはおばさんはバリアジャケットに変身します。

「アインハルトちゃんのバリアジャケットは？　あ、ベルカ式だから騎士甲冑って言う方がいいのかな？」
「すいません、私はまだデバイスを持ってないんです」
「そうなの？　マリエルか誰かに頼んで作ってもらおうか？」
「いえ、それも悪いですから」
「とはいえ、ちゃんとしたデバイスがないと、インターミッドは出場出来ないんじゃなかったかな。
　U-15だって、デバイス必須でしょ」
「一応汎用の防護用デバイスは持ってますから、それで済ませました」
「だけど、それぞれ個人に適応したデバイスがないと、これから上を目指すのは厳しいよ」
「考えてみます」
「じゃ、始めようか、レイジングハート、スタンバイ」
「Stand by Ready」
「おいおい、いきなりここで始めるのかよ」
「実戦においては常在戦陣だよ」

ノーヴェは肩をすくめます。

「やっぱなのはさんはバトルジャンキーって言われるだけあるな」
「なのはおばさんって、そんなに戦うのが好きなの？」
「好きでなきゃ教導隊なんてやってられないさ。ま、見てろ」
「はい」

「参ります」

アインハルトさんは、いきなりなのはおばさんのクロスレンジへと突っ込んでいくの。
だけど、そんな突っ込んでいって大丈夫かな。

「シュート」

軽くなのはおばさんは魔法弾を放ちます。
それを柔らかく受け止めて、なのはおばさんの方へアインハルトさんが投げ返します。

「うん、弱い魔法弾は投げ返せるね。でもこれなら？」

なのはおばさんは空を飛んで間合いを開くと、無数の魔法弾を用意したの。

「行くよ」
「想定の範囲内です」

なのはおばさんが雪崩のように魔法弾を放っていくの。
アインハルトさんは、それを次々と受け止め、魔法弾にむけて投げ返すの。
魔法弾同士がぶつかり合って、次々と炸裂していくの。

「うん、単純な技じゃ通用しないね」
「あの、手加減無しでお願いしたはずですが」
「そうだね、手加減はここまでしてないよ。
　魔法弾も本気で撃ってるからね。
　ただ……これはどうかな？」
「！」

そう言うと、なのはおばさんは魔法の杖で殴り掛かっていくの。
それはアインハルトさんには想定外だったみたいなの。
でも、アインハルトさんは、素早く態勢を立て直して、迎撃にうつるの。

「うん、予想外の行動への反応も悪くないね。
　だけど……よし、ディバイン＝バスター！」

近距離で砲撃魔法をなのはおばさんは放つの。
かわすには距離が少なすぎるの。
アインハルトさんはガードでこれを受け止めるの。

「うん、これしかない。だけど、それじゃ遅い！」

なのはおばさんは砲撃魔法を目くらましに使って、素早くアインハルトさんの背後に回るの。
そして、そこから物理的に魔法の杖で殴りかかるの。

でも、アインハルトさんは、後ろに目がついてたかのごとく、それをかわすの。

「想定してました」
「見事だね」

なのはおばさんは間合いをひらき直すの。

「こちらから参ります」

アインハルトさんは、なのはおばさんへまた接近戦を挑んで行くの。
こんどは、なのはおばさんは間合いをひらき直さずそのまま迎撃に来るの。
アインハルトさんの連撃がはじまるの。
なのはおばさんは、それを素早く受け止めていくの。

「レイジングハート、大丈夫？」
「Of Course」
「じゃ、すこし痛いの行くよ」

そういうと、なのはおばさんは間合いをぱっと開くと
アインハルトさんの拳へ向けて力一杯魔法の杖で殴るの。

「……」
「どう、手加減無しで殴ってみたけど……大丈夫？」

アインハルトさんは拳を確かめるの。

「かなり痛かったですが、骨は折れてません、大丈夫です」
「じゃ、そろそろお互い体もほぐれたろうし、回りも手持ち無沙汰だろうから、大きい技行くよ」
「はい、私も、そのつもりです」
「なのはさん、本気でアレぶっ放すつもりじゃ……」
「手加減無しの約束だよ」
「ノーヴェ、あれって？」
「あれっていうのは……ま、見ればわかる」

見ればわかるのはいいの。
だけど、どんな技かはわからないの。
ぶっ放すって言ってるから、砲撃魔法のなにかだとは思うの。

「飛べないと、手加減なしの戦いじゃ不利かな」
「その分は遠距離攻撃を投げ返して埋め合わせます」
「良い答えだね、投げ返せるなら、だけど」

なのはおばさんは、再び宙に舞うの。
アインハルトさんは、何があろうと迎撃する積もりで態勢を整えてるみたいなの。
なのはおばさんは、魔力を集めてるみたいなの。
それを見て、アインハルトさんは何か構えたの。

「行くよ、アインハルトちゃん。……スターライト＝ブレイカー！」
「覇王　断空拳！」

スターライトブレイカーと、断空拳とがぶつかり合うの。
でも、スターライトブレイカーは、直径が３ｍはありそうな魔法砲撃なの。
たとえ、断空拳で芯を打ち抜いたとしても回りが地面に当たれば二次爆発で大打撃を受けそうなの。

「さすがにこれは投げ返せないですね」
「耐えたんだ、すごいね」

すごいね、と言われたアインハルトさんは、肩で息をしてるの。
なのはおばさんの方は、まだ余裕がありそうなの。

「ファイティングポーズを取れるうちは、勝負がついてないって解釈でいいのかな？」
「ええ、その解釈で結構です」

アインハルトさんは、肩で息をしながらも構えてるの。
なのはおばさんは、感心した様子でその姿を眺めてるの。

「スターライトブレイカーをまともに受けても立ってるって、たいしたことなんだよ」
「でも、まだ本気じゃないですよね」
「本気だよ。殺意がないだけで」

そういうと、なのはおばさんは再び杖を構えて格闘の距離へと近づくの。

「行くよ」
「望むところです」

なのはおばさん相手に、アインハルトさんは連撃を始めるの。
なのはおばさんは、それを杖で受け止めながらアインハルトさんの隙を探ってるようなの。

「本気で行きますが、怒らないでくださいね。
　覇王　断空拳！」

アインハルトさんは、なのはおばさんが攻撃を受けるのに使ってる杖そのものを打ち砕かんばかりに断空拳をたたき込むの。
なのはさんはそれを杖で受け止めるけど、びっくりした顔をして……それからすぐに立ち直るの。

「踏み込みが深すぎたね」

その言葉と同時に、なのはおばさんの拳がアインハルトさんのボディにクリーンヒットするの。
さすがのアインハルトさんも、これにはたまらず膝をつくの。

「練習試合だからこれくらいにしようか」
「……はい、ありがとうございました」

勝負は確かになのはおばさんの勝利で問題ないと思うの。
だけど、なのはおばさんはちょっと苦笑いなの。

「大丈夫？　ごめんね、レイジングハート」
「No problem」
「でも、ちょっとヒビが入ってるから、後で修理しないと」
「ヒビが入ってるって……」
「私が悪かったかな、ちょっと断空拳の威力を下に見過ぎちゃった」
「いや、レイジングハートを壊すって無茶しすぎだろアインハルト。
　多少は自重しろ。大丈夫か？　拳を痛めてないか」
「多少痛いですけど、大丈夫です」
「骨は折れてないみたいだが、大丈夫って顔でもないな、今日はもうゆっくり休め。
　一日分の勉強としては十分だったろ」
「はい」
「ごめんね、レイジングハートに無理をさせすぎたから、私は今日はもう見てるだけにするね」
「ていうか、時間的にももう夕食時だろ。
　まずは帰ろうぜ」
「うん、そうだねノーヴェ」

こうして、今日のトレーニングは終わりになったの。
私達はなのはおばさんの魔法のすごさを話題にしながら帰ったの。
だけど、それについていけたアインハルトさんも十分強いとおもうの。
そのまたアインハルトさんに勝ったヴィヴィオはどれだけの強さなのかな。

 

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