フォビアさんとの会話があったの。
だけど、その前に、コロナとエレミアさんの準決勝があるの。
コロナのための特訓を一週間積んだけど、それがどこまで通用するかは未知数なの。

「よろしくお願いします、エレミアさん」
「ジークって呼んでぇな。みんな友達はそう呼ぶんよ。
　エレミアさんじゃ堅苦しすぎるわ」
「でも、年長者ですし」
「まあ、うちもミカさんはさん付けやけどな。けど、エレミアさんは止めてほしいんよ」
「分かりました、ジークさん」
「いい試合しような」

ゴングが鳴るの。

エレミアさん……いえ、ジークさんの方は、リオと違って、一気に間合いを詰めに入るの。
コロナは、ゴーレム創成の詠唱にはいってて、全力でジークさんを迎撃できそうにはないの。

ジークさんが間合いを詰め切ったと思ったとき、コロナははじかれるように間合いを開くの。

「ネクロノフィストはそういう使い方もあるんやな」
「ええ、そうです。そして、詠唱は終わりました、立ち上がれ巨人、ゴライアス！」

ゴライアスの上にコロナは乗って、ジークさんを見下ろすの。

「ドリルアーム！」

コロナは、ゴライアスの拳を回転させながらジークさんを殴ろうとするの。
だけど、ジークさんは素早くかわすと、コロナに向けて魔法弾を放つの。

ゴライアスは片手でその魔法弾をガード。
そのすきにジークさんはゴライアスを駆け上がっていくの。

それはコロナも想定してたみたいで、ゴライアスの上でジークさんを迎え打つ態勢に入ったの。

「足場はそっち持ちやけど、距離は縮まったんよ」
「そうですね。……ゴライアス！」

そうコロナが命じると、ゴライアスが突然倒れこむの。

二人とも空中に取り残され、落下を開始するの。

「重力以上に素早くふせるやて！」
「ゴーレムを動かす力でゴライアスを押さえ込みました。行きますよ！」

コロナは空中機動でジークさんとの間合いを詰めるの。
あれ？　ジークさんって、飛べないの？

「飛行魔法は使えへんけど……」

コロナは一気に間合いを詰めて殴ろうとするの。

「けどな、落ちながらでもこういうことは出来るんよ」

そういうと、素早く繰り出したはずのコロナの拳をつかむの。
コロナが拳を引っ込めると、自然にジークさんの体を引き寄せる事になるの。

「ごめんな」

そう言うと、ジークさんはコロナの首筋にチョップを加えるの。
コロナは受けきれずに一瞬意識が飛んだみたいなの。

そして、二人ともゴライアスの上に落下するの。
ジークさんが下になって、コロナをカバーしたの。
けど、ジークさんはそのまま腕十次ひしぎの態勢に入るの。

「完全に入ったやろ、無理せずにタップしてや」
「普通の力ならこれはギブアップですね、けど……」

そう言うと、コロナは力任せに腕を曲げるの。
普通ならそんな無理をすれば腕が壊れるはず。だけど、コロナはものすごい力を出して
　腕を壊すことなく十次ひしぎを破るの。

「その力……」
「ゴーレムを動かす力で腕を曲げました」
「無茶するなあ」
「これくらいしないと、ジークさんには及びませんから」
「無茶して勝って、体壊したら元も子もないと思うんやけどな」
「私は勝ちます。勝ってヴィヴィオと決勝に行きます」
「あの子と戦いたいんは、なにもコロナだけじゃないんよ」

ジークさんは、拳を握り直すの。
どうやら、関節技から、打撃に切り替えたみたいなの。

「立ち上がれ！　ゴライアス！」

コロナは、ゴライアスを再び立たせるの。
けど、コロナ自身は、こんどはゴライアスの上には乗らないの。
ゴライアスを盾にして、コロナが攻撃。
これは私達との練習通りの作戦なの。

「本体を射程圏に入れるのは危なないか？」
「魔法弾がある以上、離れてても撃たれます」
「それもそうやな」

ゴライアスは、今度はジークさんを蹴ろうとするの。
ジークさんは、それを受け止めて、押し返しに掛かるの。

「力自慢は、コロナだけやないからな」

「ゴライアス！　ドリルアーム！」

コロナは、ゴライアスの両足をなんとか地に着けて
ドリルアームでジークさんを殴ろうとするの。

「ん、当然そうくるわな」

予測通りという顔をしたジークさんは、ドリルアームをかわしてコロナに接近するの。
コロナは接近されないように間合いを開くの。
ゴライアスはドリルアームをかわされたけど、態勢を整え直して第二撃を繰り出すの。

「は、早い！」

ゴライアスがドリルアームの軌道を修正するより早くジークさんは走るの。
そして、コロナの間合いへ一直線。

コロナはカウンターを放つけど、ジークさんはクロスカウンターを入れるの。

「さすがに格闘はうちのほうが一日の長があるんよ」

LPの減り方を見ると、ジークさんはコロナの打撃を受け流してて
コロナの方はまともに食らったみたいなの。

ゴライアスの動きが止まるの。

「そうみたいですね。ゴライアスと自分、同時に操るのは無理のようです」
「それでネクロノフィストかいな？」
「いえ、一週間の特訓の成果、お見せします」

そういうと、コロナは普通に構えるの。
ジークさんは、ちょっと意外な顔をするけど、すぐに戦う顔に戻るの。

そして魔法弾。
コロナはこれをひきつけてから、一つだけ受けてジークさんの間合いに飛び込むの。

「！」

コロナは、ジークさんの足下を陥没させて、踏ん張れなくするの。
そこへコロナの回し蹴り。
ジークさんはガードするけど、踏ん張りが利かないから飛ばされるの。

「カウント、１，２，……」

ジークさんは場外へたたき出されるの。

「なるほどなあ、飛べへんかったら、地面を操られるとどうにもならん訳やな」
「ええ、ジークさんに勝つためには、できることすべてをやらせていただきます」
「いい返事や。それでこそ、全力が出せる」

ジークさんはカウント１２で悠々とリングに戻るの。

「よし、このラウンドで決めよか」

そう言うと、ジークさんは、ヴィヴィオでも無理と思えるような濃密な魔法弾を放つの。
さすがにこれは受けて殴り返すわけにもいかず、コロナはガードで防ぐの。

包み込むように放たれる魔法弾を盾にして、間合いを詰めるのは魔法格闘戦の定石なの。
そして、魔法弾が切れる瞬間に殴るのは普通のこと。
だけど、ジークさんは、魔法弾を放ちながら、自分の魔法弾をガードしつつ、コロナの間合いに入るの。
さすがのコロナもこれは想定外。私達もそんな戦法の対策はしてないの。

コロナのカウンターが空を切るの。
これはネクロノフィスト、だけど、ジークさんには通用してないの。

ジークさんの渾身の一撃がコロナを捕らえるの。
吹き飛ばされるコロナ、それに追い打ちを掛けて、濃密な魔法弾がコロナに降り注ぐの。

ゴングがなるの。
ラウンド終了じゃなくて、試合終了のゴングなの。
コロナのLPは０、勝者はジークさんなの。

「すいません、１ラウンドしか持ちませんでした」
「けど、頭を使ったいい戦いをしてたんよ。
　いい試合にはなったと思うんよ」
「ありがとうございます」
「三位決定戦は頑張ってや」
「はい」

こうして、準決勝は終わったの。
三位決定戦に回ったのは、フォビアさんと、コロナ。
決勝に残ったのは、ジークさんと、ヴィヴィオ。

だけど、試合前に、フォビアさんとの約束が待ってるの。

 

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