第4試合、今日最後の試合が始まるの。
試合をするのは、リオとコロナ、同門対決なの。

「同門対決なんで、セコンドにはオットーとディードが入る。
　あたしはみんなと観客席で応援だ、二人とも頑張れよ」
「はい」

私達も観客席で応援なの。

「ノーヴェはどっちが強いと思ってる？」
「それはわからないよ。あたしは二人の試合を見てきてるが、どっちも同じように強い。
　ただ、リオが無茶をすればコロナが勝つだろうな」
「無茶ってなんなの？」
「ゴライアス創成前に決着をつけよとすれば、コロナの方が有利だろう。
　コロナは決して格闘も弱くは無いからな」
「そうなんですか」
「ほら、試合が始まるぞ」

試合開始のゴングが鳴るの。
コロナは落ち着いて創成呪文の詠唱に入るの。
対するリオは、構えたままじっと詠唱が終わるのを待ってるの。

「ノーヴェの見立てとは逆になったね」
「ゴライアスができてからが勝負とみたか、それとも……」

ゴライアスが創成されるの。
コロナはゴライアスの上にいるから、リオの手が届く範囲じゃ無いの。

「行くよ、リオちゃん」
「やっぱり何度見てもかっこいいな、ゴライアス。
　けど、試合は勝たせてもらうからな」

ゴライアスがリオを上から殴り飛ばそうとするの。
しかし、リオはそれを正面から両手で受け止めるの。

「え、うそっ。ゴライアスのパンチを正面から受け止めた？」
「これが特訓の成果。思ったより重かったけど、これならなんとかなる」

そう言うと、リオはゴライアスの腕をつかんでゴライアスを投げるの。

「でえぇい」
「きゃあ」

コロナは場外に投げ出され、ゴライアスも頭からリングに落ちたの。
レフリーのカウントが始まるの。

「ちょっときつかったけど、ゴライアスがこの程度なら……」
「まだ、試合は始まったばかりだよ、リオちゃん」

コロナがリングに戻るの。
リングに戻ったコロナは、ゴライアスを動かそうとはしないの。

「ゴライアスを動かさないのか？」

コロナは頭を振って構えるの。
リオはそれを見て、一気に間合いを詰めていくの。

「カウンターっ！」

間合いを詰めたリオを、コロナのカウンターがきれいに迎撃するの。
でも、コロナはそれに追い打ちを掛けようとはしないの。

「ん、こうでないと面白くない」

リオは今度は慎重に間合いを詰めていくの。
それを見たコロナは、リオの間合いに飛び込んでいくの。

「あの動きは？」
「アインハルトさん、どうしたの？」
「あれは……」

全部聞かなくても、コロナの次の動きでアインハルトさんが何を言おうとしたのかは分かったの。

「断空拳だね」
「ええ、まだ完全じゃありませんが」

とはいえ、リオも黙って殴られては無いの。意図的にクロスカウンターを狙ってコロナにダメージを与えてるの。

「コロナ、ゴライアスはもう終わり？」
「ゴライアスが通用しないなら、通用することをやるよ、リオちゃん」

コロナとリオは、再び間合いを取り直すの。
この間合いだと……

「飛び道具のあるリオさんの間合いですね」
「そうだね、ミウラさん。でも、それはコロナも分かってるんじゃないかな」

でも、リオは魔法に頼らず、間合いを詰めていくの。

「コロナが格闘でっていうなら、あたしも格闘でいく」

コロナはそれにカウンターを掛けようとするの。
でも、リオはその動きが分かってたかの様にかわすと……

「絶紹！　炎雷砲！」

まともにリオの必殺技が入るの。
コロナは再び場外にたたき出されるの。
レフリーはカウントを始めるの。

「コロナお嬢様！　立って下さい、まだお嬢様はやれるはずです！」

セコンドのオットーが声を上げるの。
だけど、コロナはふらふらとしか立てないの。
それでも、カウント18でコロナはリングに戻ってくるの。

「読まれた？」
「大体分かった。トリガーになる間合いで自動的にカウンタが発動する魔法なんだ。
　そのトリガーになる間合いが分かれば、かわすのは難しくない」
「その間合いは一定じゃない……けど、最適な間合いはあるね、リオちゃん」
「そういうこと」
「なら……」
「間合いを開くならっ！」

次は炎熱魔法がコロナに襲いかかるの。
砲撃番長に勝るとも劣らない破壊力がありそうな魔法がコロナに向かって行くの。

「創成！」

ゴライアスではなく、ただの土壁が炎熱魔法を防ぐの。
そして……

「爆砕！」

生まれた土壁をコロナが殴り飛ばすと、土壁が破片になってリオに襲いかかるの。

「な、前が見えない」
「断空拳！」

顔をガードしてたリオにみぞおちへの一撃が入るの。
これでリオは吹き飛ばされて場外へ出るの。

カウントが始まるの。

「あと第1ラウンドは30秒……」
「そういう手があったかぁ。なんか十八番を奪われたような気がする」
「行くよ、リオちゃん」
「間合いを開いちゃこっちが不利か……なーんてね。
　雷光召喚！」

高くリオは飛び上がると、そこから雷を放つの。
こちらは土壁で防ぐわけにはいかないの。
コロナはそれから逃げるしかないの。

リオは、そのまま着地で間合いを詰める積もりみたいなの。

「跳んだのは、リオちゃんらしくない失敗だね。
　創主コロナの名において、再び立ち上がれ、ゴライアス！」

立ち上がるゴライアスの頭が、リオを直撃するの。
そして、そのまま場外へ。

ここで、第1ラウンド終了のゴングが鳴るの。

「お互い手の内をさらし合ったな」
「……」
「どうしたの、アインハルトさん。難しい顔をしてるよ」
「あ、いえ、気のせいならいいのですが」
「何か気になることでもあったの？」
「ええ、コロナさんが使ってた技が気になって」
「ゴーレム召喚の事？」
「いえ、それではなく、ネクロノフィストのことなんです」
「ネクロノフィストって？」
「自分の体を、ゴーレムを操るように自分で操る術です。
　理論的には、自分の体がたとえボロボロになったとしても、魔法力さえあれば
　自在に自分の体を動かすことができます」
「それって、普通にあぶなくない？」
「ええ、危険です。限界を超えて体を酷使できてしまいますから」
「そんな無茶をしてるんだ、コロナ」
「まあ、DSAAのルールなら、体への打撃が一定量を超えたら、その時点でK.O.になる。
　だから、限界を超えることはないはずなんだがな」
「しかし、体に無理が加わることに変わりはありません」
「それは分かる。むやみに頼るなとは言ってあるし、それは今のところコロナも守ってるみたいだ」

ここで、第2ラウンド開始のゴングが鳴るの。
お互い体力を回復して、それから何をするかなの。

「やっぱりゴライアスは作らないの？
「時と場合によりけりだよ、リオちゃん」
「そっか」

そう言うと、リオは一気に間合いを詰めるの。
コロナはカウンターを放たないの。
まるで、リオはそれを知ってたかのように殴りかかるの。
それに合わせてコロナはパンチを繰り出すの。

「一瞬だけ先にコロナのパンチがあたった、その分リオの一撃は減殺されたな」
「でも、LPの消耗は同じぐらいみたいなの」
「そうだな、けど、お互いもう間合いは開かないつもりみたいだな」

リオは力任せにラッシュを掛けるの。
対するコロナも足を止めての殴り合いに応じてるの。

「普通なら一撃の重いリオが有利なはずなんだが、コロナはうまく威力を逃がしてる。
　LPの減り方は同じぐらいを維持してる」
「でも、このままだと……」
「ああ、五分五分のギャンブルだ、それはお互い望むところじゃないだろう」
「言ってるうちからリオのパンチが炎を雷をまとったよ」
「これがリオの切り札か、これじゃコロナが威力を減殺してもまにあわない」
「コロナはどう……」

どうするかはすぐに分かったの。
威力を逃がすんじゃなくて、まともに受けながら渾身の一撃を放つの。

「コロナのLPはほとんど無いが、リオは突き飛ばされて間合いを離された。
　次で勝負がつく」
「創主コロナの名において、よみがえれ、巨人、ゴライアス！」

ゴライアスの上に再びコロナは陣取るの。

「ドリルアーム！」

ゴライアスの腕が回転しながらパンチを繰り出すの。
これはかわさないとリオも受け止めるわけにはいかないの。
リオは引きつけてから逃げるの。

その逃げた先に、反対側の腕からドリルアームがリオに襲いかかるの。

「よし、足を捕まえた、あとは……」
「そこまでが想定の範囲！」
「へ？」

ドリルアームを繰り出してる最中に、コロナはゴライアスの足の影に隠れてたの。

「爆砕！」

ゴライアスの足を吹き飛ばして、コロナはリオへ一撃を入れるの。

「わっ」
「ゴライアス、ドリルアーム！」

片足を失ったゴライアスが、体重をのせたドリルアームをリオに打ち下ろすの。
リオはこれをなんとかかわすけど、コロナがその先に先回りしてたの。

「これで決まりっ！」

コロナの回し蹴りがリオにきれいに入ったの。
リオのLPはこれで0になったの。

「勝者、コロナ・ティミル！」

こうして、準々決勝の4試合がすべて終わったの。
勝ち残ったのは、ヴィヴィオ、エレミアさん、ファビアさん、そしてコロナなの。

私と泪はベスト8止まり。
これからは、応援する側に回るのかな。

 

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