かくして、インターミッド準々決勝の日が来るの。
これに勝たないと、全国大会へは絶対に出られないの。

「よう、霧子、ちゃんと仕上げてきたか」
「バッチリなの。ヴィヴィオは仕上げてきたの？」
「こっちも万全の備えはした積もりだよ。いい試合しようね、霧子ちゃん」
「ヴィヴィオ、こんどはこちらが勝つつもりなの」
「そう簡単には負けられないかな」
「済まないが、あたしはヴィヴィオの方のセコンドに付く。
　霧子のセコンドはミカヤに頼んであるからな」
「はい」
「よし、じゃあ第一試合だから先陣切って、だね、霧子ちゃん」
「うん、ヴィヴィオ、そろそろ取りかかるの」

こうして、第一試合の準備が始まります。

「なんだか、強豪選手が潰し合ってくれて勝ち上がった気もするの」
「潰し合い、というほどかぶってもないし、ちゃんと強豪と当たって勝ち上がってるのは霧子も同じだ。
　もっと自信を持て」
「分かったの。でも、強豪に勝ってる点、ヴィヴィオも同じなの」
「そうだな、今までで最強の敵と思っていけ。相手は格下と思って油断はしてくれないぞ」
「うん、そのつもりなの」

ヴィヴィオの取り柄は、相手の動きを的確に捉える目と、相手の攻撃にひるまない勇気。
そして、遠距離の魔法戦に近距離の格闘戦能力の双方を備えるオールレンジな戦い。
欠点らしい欠点は一発の軽さぐらいだけど、手数で補う素早さがあるの。

私の取り柄は早さぐらいなの。
一撃の威力はヴィヴィオを上回っても、その一撃にチャージが必要な分ヴィヴィオに劣るの。

「相手は強敵だといっても、ひるむな。
　ここまで勝ち上がってくる途中で負かせた相手のためにもな」
「はい」

ここまで来たら、やるしかないの。
全力を出すことに専念して、勝敗は考えないようにするの。

「よし、試合の時間だ。行くぞ」
「はい」

こうして、インターミッド本戦第1試合、準々決勝の始まりなの。
緊張してももう始まらないの。今までの試合とおなじように戦うだけなの。

「あ、そうそう、観客に飲まれるな。今までの予選より数段注目度が高い試合だ。
　観客の熱狂もそれに比例している」
「はい」

そう答えたものの、今までの試合に毛が生えた程度だと思ってたの。
そうじゃなかったの。

試合会場は超満員。とても地区予選の準々決勝とは思えない盛り上がりかたなの。
地響きがするかと思える歓声、本戦からは一試合一会場で、同じ会場を使ってるから
この声援は、全部ヴィヴィオと私の試合に向けられたものなの。

「足がすくんでるぞ。平常心だ」
「は、はい……でも、これは想像以上なの」
「格闘はミッドチルダで一番人気のスポーツだ。
　そして、インターミッドは10台選手にとってその頂点にある。
　これくらいの注目度は当然ある。
　どうした、ひるんだか？」
「うん、ちょっと。でも、だんだん慣れてきたの」
「それならよし。外野は気にするな、試合相手はリングの向こうだ」
「はい」

ヴィヴィオもちょっと緊張してるみたいなの。
ノーヴェもミカヤさんと同じような注意をしてるのかな。
そう思うと、少しリラックスできるの。
だけど、アナウンサーの呼び出し声は耳に入らないの。
ただひたすら、精神を試合に集中するの。

「今日は勝たせてもらうの」
「負けてあげないからね」

リングの上で声を掛け合うの。
そして、レフェリーの指示に従ってコーナーに戻るの。

「よし、作戦は一週間みっちり仕込んだとおり。練習通りにやれば勝てない相手じゃない」
「はい」

ミカヤさんと、アインハルトさん相手に一週間練習した作戦。
それは、相手にとってどの距離も同じように得意なレンジなので、自分の間合いである
ロンギヌス・スピアの間合いで戦う事なの。
そして、チャージ後の攻撃を確実に当てる。
私にはそれしかない。問題は、セイクリッド・ディフェイスの上からそれを打ち込んで効くかどうかなの。
だけど、他に作戦は無いの。

試合のゴングが響くの。
私は間合いを詰めるために前に出る。
ロンギヌス・スピアが届く距離に入らないと勝負にならないの。

ヴィヴィオはそれを知っていて、間合いを開きながら魔法弾で応戦してくるの。
私はそれを魔法学校で覚えたシールドで受け流すの。
受け流しながら、私は間合いを詰めていく。
でも、決して急がない。
急いで間合いを詰めたら、逆に踏み込まれる恐れがあるの。

だから、踏み込みを避ける早さで、じっくりと攻め込むの。

だけど、その早さじゃヴィヴィオさん相手に間合いを詰め切れない。
ヴィヴィオさんは落ち着いて魔法弾を様々な方向から放ってくるの。

「慌てるんじゃない、霧子！」

分かってるの。これは私達の想定内。
チャージが終われば、ロンギヌス・スピアのレンジは一気に広がる。
それを待つのも作戦のうち。
チャージさせないようにヴィヴィオは動くのか、それとも……

 

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