めりかるうぃっしゅ
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん。
「やっとおわったぁ」
「ヴィヴィオちゃん、一緒に帰ろう」
「ごめん、今日はパパが帰ってくる日なんだ」
「ヴィヴィオちゃんのパパって、確か、考古学者だったよね」
「うん。いろんな世界を発掘して回ってるんだよ」
「もしかして、ゴッドハンドって言われてない？」
「全然そんなことないよ。古文書を調べて、ありそうな場所を調べにいくの」
「ふーん。それで、家を空けることが多いんだ」
「うん。…帰ってきても、すぐ出かけちゃうから、なかなかあえなくって」
「それじゃ、急いで帰らないとね」
「うん」
「じゃあ、また明日ね」
「うん、またあしたね。アカリちゃん。」
今話をしてたのが、友達のアカリちゃん。
月光って書いてアカリって読むんだよ。
面白いでしょ。でも、あの名前のせいで結構からかわれたりしたんだって。
私も、目の色が左と右で違うってからかわれてたんだよ。
アカリちゃんをかばって、からかってた子と喧嘩してから、友達になったのかな。
あかりちゃんと一緒なのが当たり前になったから、もう、あんまり覚えてない。
そうそう、今日はパパが帰ってくる日、もしかしたらフェイトママも一緒かも。
早く帰らなきゃ
自己紹介が遅れたね。
私の名前は高町ヴィヴィオ。ヴィヴィオでいいよ。
正しい名前は、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ・ハラウオン。
ヴィヴィオっていうのが、私の知らない、私を産んでくれたママがくれた名前で
スクライアっていうのがパパの姓、高町、っていうのが、なのはママの姓で
テスタロッサ・ハラウオンが、フェイトママの名前。
だから、私にはママが３人にパパが１人。たぶん、ママにはパパがいただろうから
本当はママが３人にパパが二人、になるのかな。
「よう、ヴィヴィオ。さぼりか」
「さぼりじゃないもん」
「うそつきー、帰宅部はみんなさぼりだぜ」
「そういう冬美ちゃんだって、帰宅部でしょ」
「あたしはいいんだよ」
「なんで？」
「なんででも」
「なんでなんでなんで」
「なんででもなんででもなんででも…って、なんであたしがヴィヴィオと
こんな会話しなきゃいけないんだ」
「勝手にしたくせに…」
「なんかいったか？」
「あ、大変、今日はパパが帰ってくる日なんだ。いそがなきゃ」
「あわてるなよ。あわてるとこけるぞ。おまえ、力一杯どんくさいんだから」
「こけないもん」
こけっ。
「自分で自分の足に蹴つまずいてるよ、ほんとどじだな」
「でもこけないもん」
けつまずいてもちゃんと、つんのめるだけでリカバリー完了。
いつまでも５歳児みたいに、転んで泣いてフェイトママに助け起こされるだけじゃないもん。
「おまえ、こけなきゃいいってものじゃないぞ」
「わかってるよ、廊下は走っちゃだめだよね」
「いや、そうじゃなくてさ」
「え？じゃあなに？」
「わかんなきゃいいよ」
「うん、じゃあね、冬美ちゃん」
「ああ、じゃあなヴィヴィオ」
今のが私の友達、冬美ちゃんだよ。
冬美ってかいて、ふゆみって読むから、冬美ちゃんは普通だよね。
普通じゃないのは制服かな？ヴィヴィオ達と違って、改造制服を着てるんだって。
冬美ちゃんが、格闘万能なのに帰宅部なのもいろんな事情があるそうだけど
ヴィヴィオはあんまりつっこんでは聞いたことないんだ。
人間、人には言えない秘密って、いろいろあるよね。
ヴィヴィオにも、秘密はあるよ。
誰が見てもすぐわかるヘテロクロミアじゃないよ。
ママが二人いるとかパパが学者さんってことでもないよ。
もったいつけずに教えてあげる。
実はね、ヴィヴィオって、魔法少女なんだよ。
あれ？反応ないや。そんなののどこがすごいって顔してるでしょ。
うん、実はあんまりすごくないんだよ。なのはママやフェイトママは
すっごい魔法少女なんだけど、ヴィヴィオは出身地のミッドチルダじゃ
普通の才能しかない、普通の魔法少女だったんだ。
だけど、今暮らしている地球じゃ、魔法少女っていうのは秘密の中の秘密。
だって、魔法文化の全くない、管理外世界だもん。
だから、魔法少女だっていうのは、絶対の秘密。
魔法を使うための道具のデバイスだって持ってるけど、これも普段は
携帯電話のストラップに見せかけてるんだよ。
「ね、ライチェントゥークス」
「Ja,main K?nigin」
これが私のデバイス、ライチェントゥークス。
携帯電話をなくさないようにストラップの格好をしてるんだよ。
携帯電話を置き忘れたら、ちゃんと声を出して教えてくれる優れもの。
可愛いでしょ。
他は、まあ、役に立ったら困るよね。
あ、やっとついた、翠屋の看板が見える。
（からんからん）
「ただいま〜」
「おかえりヴィヴィオ」
「おかえり」
「ただいまなのはママ〜」
私はウィンド越しに見えた、ウェイトレス姿の
なのはママの所へ、翠屋の入り口から駆け込んだよ。
この店に時々現れるマスコットのフェレットが
なのはママの肩に乗っかってる。
「おかえり、ヴィヴィオ」
「フェイトママただいま〜。フェイトママも来てたんだ？」
「うん、しばらく休暇をもらえたから」
「フェイトママ、だっこ〜」
「はい、ヴィヴィオは甘えん坊さんね」
「えへへ…」
「フェイト、あんまりヴィヴィオを甘やかさない。
抱き癖がついちゃうよ」
「でも、なのはママだってユーノパパを抱いてるよ」
あっ！
翠屋のお客さんが、きょとん、とした目でこっちを見る。
あー、そうか、ユーノパパのことも、地球じゃ秘密だよね。
「なのはママ〜お腹すいた〜おやつ〜」
「うん。ママの作ったクッキーを食べる？」
「わーい」
「フェイトちゃんも一緒にお茶会にしよ」
「そうだね、なのは」
「なのは、しばらく裏で休んできなさい」
「はーい」
今、休んできなさいって言ったのは、桃子おばあちゃんだよ。
とてもおばあちゃんには見えないけど、なのはママのママだから
ヴィヴィオから見たらおばあちゃん。…で、合ってるよね？
「それで合ってるよ、ヴィヴィオ」
「ありがと、フェイトママ」
「ユーノくんも、そろそろ元に戻っていいかな」
「そうだね。おかえり、ヴィヴィオ」
なのはママが抱きかかえてるフェレットもどきがしゃべると
なのはママが抱きかかえていたフェレットもどきが素早く床に駆け下りる。
それから、光があふれて、フェレットもどきは、人間スタイルの
ユーノパパに早変わり。
「わーい、ユーノパパおかえり〜」
「おかえりヴィヴィオ」
「ねえ、ユーノパパ、高い高いして〜」
「よしよし、ほーらヴィヴィオ高いたか〜い」
「たかいたかーい」
「ユーノくん、ヴィヴィオも大きくなったし、つかれない？」
「ヴィヴィオじゃなかったら、重たくて持ち上がらないかも」
どういう意味なのかなあ。
「可愛くて目に入れても痛くないって意味だよヴィヴィオ」
「フェイトママ、目に入ったら痛いんじゃない？」
「あ、それ意味が違うよヴィヴィオ」
「そうなのなのはママ？」
「山が目に入るっていったら、目に映る、とか、見えるっていう意味もあるよね」
「うん、そうだよ、ユーノパパ」
「じゃあ、そういう意味で、目に入れたくない物もあるよね」
「うん、あるよ」
「逆に、そういう意味で、目に入れたいものもあるよね」
「うん、もちろんあるよ〜」
「で、ちょっとシャレを効かせて、目に入れるっていうのを
文字通りの意味にとって、”目に入れても痛くない”っていうんだよ」
「へー、すごいやユーノパパ、やっぱりユーノパパってえらいんだね」
「さっすがユーノくん、わかりやすい」
「本当は口から出任せなんでしょう」
「フェイトはごまかせないか」
「えー、パパ、ヴィヴィオのことだましたの？」
「だました訳じゃないよ。言葉は生き物だからね。だんだん意味が変わることもあるんだ」
「役不足なんか有名だね」
「役不足じゃ、役の方が足りないって意味なんだよね」
「そうだよヴィヴィオ」
「わーい」
「そうだ、ヴィヴィオ、ちゃんと宿題はやったの？」
「まだだよ」
「宿題をやるまで、遊んじゃだめ」
「えーなのはママぁ。せっかくユーノパパが帰ってきたのに」
「パパはすぐには逃げないよ」
「えーでもでもでも、いろいろお話したいことがあるんだよ」
「じゃあ、ヴィヴィオ。パパと一緒に宿題しようか」
「うん、パパ」
「ユーノくん。ヴィヴィオに全部答えを教えちゃだめだよ」
「わかってるよ、なのは」
「うん、ユーノくんなら、大丈夫だよね」
「あんまり当てにしないほうがいいかもね。ユーノはヴィヴィオに甘いから」
「ユーノくんも、フェイトちゃんには言われたくないんじゃないかな」
「なのはが、一番厳しいかもしれないね」
「ユーノくんまでそんなこと言うんだ」
「ヴィヴィオの将来を心配するから、小言も増えるんだよね」
「うん…心配性なのかな、私って」
「それでいいと思うよ。なのはは、ずっとヴィヴィオと一緒なんだから」
「うん、ありがと、フェイトちゃん」
「パパー。はやくはやくー」
「そうだね。ヴィヴィオの部屋に行こうか」
「わーい」
…
「ヴィヴィオも、すっかりユーノになついてるね」
「うん。ユーノくんをパパだよって紹介するのは、ちょっと勇気がいったけど
すぐになついてくれて良かった」
「こっちの環境にも、早く慣れたしね」
「ミッドチルダも地球も、魔法を使わなければ、そんなに違った世界じゃないからね」
「違わないからこそ、いろんな事があったんじゃないかな」
「うん、それはあったよ。”ママー月が壊れちゃったー”なんて騒いで」
「地球には、月がひとつしかないからね」
「うん。そうだね。魔法使いがいないっていうのも、ヴィヴィオには新鮮だったみたいだし」
「今のところ、変な奴らは、見ない？」
「うん。…聖王の器が、管理外世界にいること自体、管理世界には、絶対に言えないね」
「本局で預かっていても、絶対に安全だと言えないことは、スカリエッティ事件の時に
はっきりしてしまった」
「騎士カリムも、絶対の責任は持てない、っていう話だったね。
聖王教団も、けっして、一枚岩じゃない」
「カルトグループによる、聖王のクローン作成事件は、後を絶たないんだ。
これに、スカリエッティが作り上げた、完全な聖王の器の存在がしれたら…」
「…スカリエッティ事件どころではない、管理世界の大騒動になることは、間違いない」
「ごめん、なのは。私もなのはと一緒にヴィヴィオを守ってあげることが出来なくて」
「ううん。仕方ないよ。それに、私は一度リタイアしてるから
こんどこそ、本当にリタイアしたって言っても、たぶん、みんな信じてくれるよね」
「今までの所、上手くいってるみたいだね」
「全然別の問題は起きてるけどね…ほら、店の方を見て」
「…店がどうかしたの」
「フェイトちゃん、よく見てよ。どう見ても地球人じゃないひと、混じってるでしょ」
「…ああ、そうか。本局だといろんな世界の人がいるのが当たり前で、気がつかなかった」
「翠屋って、なぜか巡礼スポット扱いになってるんだよね。
ミッドチルダからじゃ相当な旅費が掛かると思うんだけど、よく来るなぁ」
「それだけ、なのはは人気者だということだ」
「おかげで、なのはさんも、ウェイトレスのお仕事が出来るんだけど。
さてと、そろそろなのはさんはお仕事にとりかかろうかな。
フェイトちゃん、ユーノくんと一緒に、ヴィヴィオの所に行ってくる？」
「いや、もうすこしここにいるよ。もうすぐ、二人ともこっちに帰ってくるだろう」
「そんなに早く宿題が終わるかなぁ」
「あれぐらいの宿題なら、すぐ終わる」
「そりゃ、フェイトちゃんは９歳で修士号取るぐらいの天才だもん。
普通の小学生だったなのはとは違うよ」
「普通の小学生は、朝四時に起きて魔法の修行などしないぞ」
「そっかな。好きなことの為なら、朝４時が３時でも起きられるよ」
「なのはも、普通の小学生ではなかったんだな」
「そっかなぁ」
「ママー、宿題が終わったよー」
「早かったね、ヴィヴィオ」
「うん、ちょっとパパに手伝ってもらったけど、ちゃんと全部終わったよ」
「ユーノくん、答え教えなかった？」
「そんなことはしてないよ。ちゃんとヴィヴィオが自分で答えをだしたよね」
「うん、パパ答えは絶対に言わなかったよ」
「ほんとうに〜」
「本当にっ！」
なんで、フェイトママも、なのはママも、ユーノパパがずるしたみたいにいうのかな。
「ヴィヴィオがそこまで言うのなら、信じてあげるね」
なのはママが、ユーノパパにウィンクする。
ユーノパパもなのはママにウィンク。
何の暗号だか、ヴィヴィオにはわからない。
「じゃあ、ヴィヴィオ、どこか遊びに行ってくる？」
「ううん。フェイトママやユーノパパと一緒にお出かけがいい。
なのはママも一緒にいこ」
「ごめんね、ヴィヴィオ、なのはママはこれからお仕事なの。
ユーノパパやフェイトママと一緒にお出かけしたら？」
「ごめん、なのは。私は海鳴市を離れて長いから、どこへ行けばいいか
よくわからないんだ」
「だったら、ヴィヴィオが案内してあげるね。
ユーノパパも一緒に行こうよ」
「ヴィヴィオはどこに行きたい？」
「えっとね…遊園地」
「さすがに遊園地は遠すぎるよ」
「だったら公園に行こうよ」
「どこの公園？」
「ユーノパパと、なのはママが最初に出会ったとこの公園」
「それならわかるよ。じゃあ、行ってくるね、なのは」
「うん、行ってらっしゃいユーノくん。ヴィヴィオ」
「はーい、行ってきまーす」
なのはママは、翠屋のウェイトレスさんだから
ヴィヴィオと一緒に出かけてくれることはあんまり多くないんだよ。
いつもは、ヴィヴィオは１人で宿題を片付けてから、アカリちゃんや
冬美ちゃんと一緒に遊ぶんだけど、今日はママやパパと一緒に公園をお散歩するんだ。
前にユーノパパやフェイトママとお話してからのこと、お話しなきゃ。
「あのねあのねあのね…」
「うんうんうん…」
「・・・・・」
今日は、フェイトママとユーノパパがヴィヴィオに会いに来てくれました。
いつも笑顔のなのはママも、今日は特別の笑顔を見せてくれました。
ずっとこんな日が続きますように。