「あなたから〜メリクリスマス。わたしっから〜メリクリスマス。サンタクロースイズカミーングトゥタウーン♪」
「ご機嫌だなにゃる子」
「もう〜いーくつねーるとーくりすますー」
「いや、それはお正月の歌だから」
「クリスマスがそんなに楽しみなのかにゃる子」
「うちの学校は、クリスマスパーティで恋人達のためのイベントをやるそうじゃないですか」
「ああ、なんか毎年出し物をやるみたいだね」
「楽しみですね、真尋さん」
「ああ、カップルは楽しみかもしれないね。毎年どこかの会長さんは張り切ってるよ」
「……あの会長さんですか」
「一番楽しみにしてるんじゃないかな」
「あの人と、さゆりさんとは、どういう関係なんですかね」
「どういう関係なのかよくわからない。つきあってる訳でもないらしいんだけどね。
仕事上のつきあいっていう説明になってる」
「どんな仕事なんですかね」
「わかんない」
「まあ、それはともかく、クリスマスパーティですよ真尋さん。盛大に楽しみましょうよぉ」
「にゃる子、盛大にたのしも」
「あんたは一人で飲み食いしてればいいでげすよ」
「真尋君、楽しみだね、クリスマスパーティ」
「ああ、そうだなハス太」
「あんたらは人の恋路を邪魔せずに勝手に相手を探してればいいじゃないですか。
私は真尋さんとデートですから」
「そんな邪険にしなくてもいいだろにゃる子、パーティの内容もしらないのに」
「どうせカップル限定ですよ」
「まあ、そうだろうけど」
「というわけで、私は真尋さんと組むんです」
「にゃる子、、私と一緒に……」
「真尋くん、僕と一緒がいいよね」
「男女ペアでないと、生徒会は認めてくれないでげすよ」
「……ん、これはにゃる子が正しいんだよね、残念だけど」
「少年、それ本当？」
「不本意だけど本当だよ」
「真尋くん……」
「ハス太、悲しそうな顔をされても本当のことなんだってば。生徒会はそのへん古風だからね」
「はあ……残念だなあ」
「そういうわけで私と真尋さんが組むことは確定ですって」
「別に少年と私が組んでも問題ないはず」
「はあ？ なんでクー子が真尋さんと組むですか。真尋さんは私の専有物なんですぅ」
「少年をものにすれば自然とにゃる子も私のもの……」
「……クー子とはここで決着つける必要がありそうですね」
「望むところ……」
「けんかするな二人とも、学校行くぞ」
「あ、まってよ真尋くん」
「待ってください真尋さん〜」
「にゃる子まって〜」
そんなわけで、学校に向かう真尋達であった。
さて、こちらは弁慶達が通う学校。同時に真尋達が通う学校でもあり
あのサバゲー同好会の会長にしてしっと団の団長のいる学校でもある。
「さて、さゆりくん、今年もクリスマスがやってくるな」
「そうですね」
「乗り気でない返事だな。今年もカップルに天誅をくらわせねばならない、一年で最も重要な日がやってくるのだよ」
「一人でやっててください。今年こそ私を巻き込まないでください」
「そうはいかないのだよさゆりくん。今年もやっぱり男女ペアでないと参加できないイベントを
生徒会は開催するつもりのようだからな。そこでカップルに天誅をくらわすには、こちらも男女ペアを組まねばならないではないか」
「なんでそう血道を上げてカップルを目の敵にするんですか、関係ないでしょう。第一しっと団なんて
もう会長しかのこってないじゃないですか」
「気にするな、私一人になったとしても、いずれ後に続くものは出る」
「出なくていいです、そんなもの。ていうか出ない方がましです。第一その情熱をもっと別な方向に向けようとか思ったことはないんですか」
「ない」
「きっぱり言い切りましたね」
「当たり前だ。私の情熱のすべては、しっと団のために向けられてるのだよ」
「しょうもないことに情熱燃やさないでください」
「安心したまえ。義務感は別なことに使っている」
「それはどうも。で、義務感と情熱の割合はどうなってるんですか？」
「それは特定秘密なのだよ」
「そうですか。公表すると現在の交渉に不都合でもあると解釈しときますよ。
で、今年のクリスマスの出し物はなんですか」
「今年の漢字とは何の関係もなく潜水艦ゲームなのだよ」
「本当になんの関係もないですね。で、潜水艦ゲームってなんですか？」
「男女ペアで生徒会が作った潜水艦シミュレーターに乗って、サバイバルゲームをやるというものらしい」
「じっとして無音でいれば勝てるじゃないですか。っていうかみんな無音でいるでしょ、ばかばかしい」
「そこはいろんなイベントが起きるようにしかけがしてあるそうだ」
「なんかひたすら爆雷攻撃に耐えるイベントになりそうですね」
「ああ、大事なことを言い忘れていた」
「まだなんかあるんですか」
「艦がダメージを受けると、女性の服が溶けるという設定がはいるそうな。で、女性は全員水着着用のこと、と注意書きがあった」
「生徒会は何考えてるんですかっ！」
「元ネタ準拠らしい。私にも何を考えてるのかはよくわからん。男性側はそこらへんもよく考えてがんばれ、ということだそうな」
「何をどうがんばれって意味なんですかね」
「さあ？ だが、カップルが熱くなるイベントにすると生徒会は意気込んでたぞ。
これは妨害しなければなるまい」
「勝手に盛り上がっててください。ていうか私が参加することに何のメリットがあるんですか」
「カップルが熱くなるイベントを妨害するんだぞ。情熱が燃え上がらないか」
「燃え上がりませんよ。カップルなんて勝手に燃え上がればいいじゃないですか」
「おかしいな、妨害しようとか邪魔しようとかそういう感情はないのか？」
「ありませんよ」
「それは人間として普通の感情に欠けるのではないのか？」
「うらやましいと思ったら自分も彼女つくればいいじゃないですか、なんで妨害しようという方向に発想が向くんですか」
「別にうらやましいわけではない、カップルなどと言うのは健全な中高校生には不要なだけだ。
大学生になってから思う存分恋愛を楽しめばよいのだよ」
「そういう問題ですか」
「ほかにどういう問題があるというのだ」
「それ、しっとっていうんですか？」
「それはそれ、これはこれだ、しっと団の目的は学園恋愛の破壊一本。
目的のためには手段を選ばないのだよ」
「わけわかんないですよ」
「安心しろ、私もわけがわからん」
「ならやめたらどうです」
「私がこれをやめたらレゾンデートルがなくなってしまうではないか」
「別に退役してもいいじゃないですか」
「そうはいくか、何がどうあろうともクリスマスにはサンタクロースとしっと団はなくてはならないのだよ」
「サンタクロースは待ってる人がいてもしっと団なんてだれも待ってませんって」
「光あるところ影有り。サンタクロースが光なら、しっと団は影なのだよ」
「はあ……まあいいです。私が寒い役を引き受ければいいんでしょう」
「そうだな、今年は特に冷えるというからな」
「そういう意味じゃなくてですね」
そんなわけで、今年もしっと団は活動することになったのだった。
そして、カップルで参加の生徒会イベントも、パーティもクリスマス・イヴに行われることは決定事項なのであった。