「真尋さん真尋さん。こんどの日曜日暇ですか？」
「別に用事はないけど、どうしたんだ？ ニャル子」
「用事がないなら私と一緒にでかけませんか？」
「出かけませんかって、笑顔が怖いけど、何かあるのか」
「笑顔が怖いって、別にSAN値下げるようなことじゃありませんよ。
いや、あれから弁慶の妹さんや黒猫ちゃんや沙織さんとメル友になったんですよ」
「そりゃよかったな。で、今度の日曜また一緒にOFF会でもやるのか？」
「いや、そうじゃなくて、今度の日曜日同人誌即売会があるんですよ」
「コミケなら夏と冬だろ。3月になんかあるのか」
「別に同人誌即売会はコミケだけじゃないですよ真尋さん。
シスカリプス専門の同人誌即売会があるんですよ。
せっかくだから真尋さんも行きましょうよぉ」
「いや、別に興味ないし……」
「そんなぁ。ほら、公式から追加ディスクキャラディスクも発売になるんですよ。
使って対戦も出来るんですから」
「対戦も出来るの。なら行く……」
「誰もクー子は誘ってないでゲスよ」
「つれない態度も、いい」
「一人で行きたくないならクー子連れて行けよ」
「真尋さんと一緒がいいんですぅ」
「真尋くんはああいうゲームとか興味ないの？」
「興味ないのって……ハス太はどうなんだ？」
「どうなんだって、僕は真尋くんのほうがいいな」
「そういう切り返しをしてくるとは思わなかったよ。ええと……同人誌即売会って、誰が来るんだ」
「だから、弁慶の妹さんとか黒猫ちゃんとか、沙織さんですよ」
「それだけ大人数なら僕が行く必要ないんじゃないか」
「真尋さんもせっかくだから行きましょうよ。旅は道連れっていうじゃないですか」
「どちらかというと地獄の道連れにされてる気がする」
「シスカリプスはシナリオも格闘もゲーム性が高いって評判なんですよ」
「っていっても、妹攻略ものだろ」
「真尋さんは一人っ子だから別に妹ものやっててもかまわないじゃないですか。
実の妹がいたって、理想の妹がって理由で妹ものにはまる人とかいるんですよ」
「なんで力説するんだよ」
「って、弁慶の妹さんが言ってました」
「あー、あの人妹もの集めてたよな」
「でしょ。だから真尋さんも是非この機会に妹ものから初めてこの世界に目覚めるべきなんです」
「なんでそうなる。ていうか目覚めてなんか人間的に成長するのか？」
「しますよ。私が保証します」
「ニャル子が保証してもなあ……成長したらどんな人間になるんだよ」
「それはもちろんニャル子みたいになる……」
「……明るくはなるだろうが、責任感はなくなりそうな気がするな」
「どんな評価ですかそれ」
「聞いたとおり裏も表もないだろ」
「裏も表もないって、それじゃまるで私が軽薄なみたいじゃないですかぁ。
私だって毎日真尋さんのことをお守りしてるというのにぃ」
「そもそも脅威自体最近存在しないぞ」
「それは私が毎日守ってるからです」
「……そういう問題なのか？」
「そういう問題です。そういうわけで一生私が真尋さんをお守りする契約を是非とも」
「と、朝っぱらからこんな話をしてると遅刻してしまう。ハス太、クー子、ニャル子、学校に行くぞ」
「あ、真尋さん、待ってくださいよ〜」
そんな話をニャル子が切り出したのが月曜日だった。
僕は、昼休みにもう少し詳しい話を聞くことになる。
「それでですね真尋さん。その即売会の場所というのが……」
「今朝でその話は終わりじゃなかったのかよ」
「終わりじゃないですよ真尋さん。まだ会場の場所も言ってないじゃないですか」
「そりゃ聞かなかったもんな。ていうか行くともまだ言ってないぞ」
「行かないんですか真尋さん。楽しいこと請け合いですよ。ほらほら、こんなものまで売ってるんですよ〜」
そう言ってニャル子が取り出したのは、シスカリプスのキャラのイラストが入った、クリアファイルだった。
「へえ、可愛いね」
「でしょ」
「分かる人が見たらわかるけど、ちょっと目には普通のキャラクタークリアファイル……」
「エロゲのキャラのクリアファイルって、さすがにまずくないか？」
「クー子の言うとおり、分かる人が見れば分かるけど、見た目は普通のキャラクタークリアファイルだから
問題ないですよ真尋さん。こんな風に実用性あるものもあるんだから行ってそんはないですよ」
「いや、実用性ないだろ……っていうか、版権大丈夫なのか？」
「大丈夫ですよ、ほら、ここに著作権者の許諾を受けてますって書いてありますし」
「……まあ、版権は大丈夫なのか。けど、分かる人が見たらいろんな意味でやばいと思う」
「分かる人なら同志だとおもうだけですよ真尋さん」
「ニャル子は楽観的だなあ……」
「ますます広がるシスカリワールドですよ真尋さん」
「それは分かったから。楽しんでこいよ」
「真尋さんもいくですよ〜せっかくの即売会なんですよ〜」
「だからなんで僕も巻き込むんだよ」
「その方が楽しいからに決まってるじゃないですか」
「楽しいに決まってるって……僕は留守番してるよ、クー子が行くんだろ」
「うん、ニャル子、一緒にいこ」
「だからなんで私がクー子のおもりをしなきゃならないですか」
「シスカリは楽しみなんだろ」
「真尋さんも一緒にいくです〜ほらほら〜ハス太も一緒にお願いするですよ」
「え？」
「ハス太を巻き込むなよ……っていうか、ハス太は日曜日予定入ってるか？」
「別になにも予定は入ってないけど……真尋くんと一緒に過ごしたいな」
「ほらほら、ハス太もそういってることですし、一緒にイベントに行くですよ」
「なんでそうなる。っていうか、まあ、別にどこに行く用事もないし、する事もないんだけどさ」
「ならイベントに行ったっていいじゃないですか。エキシビションでシスカリ対戦もあるんですよ」
「格ゲーは弱いから対戦見たって楽しくない」
「対戦があるんだ……」
「ほら、ハス太ものりきになった」
「あー、分かった分かった、行けばいいんだろ」
「そうですよ真尋さん。それで、場所は」
「場所は……この近所なんですけど……」
「なんだ、すぐそばじゃないか。そこなら電車でちょっと行けばたどり着くな」
「でしょう」
「ニャル子と一緒……」
こうして、今度の日曜日、同人誌即売会に出かけることになった真尋たちであった。
シスカリプス専門の同人誌即売会、そこで何が起きるか、まだそれは分からない。