「よーし、みんなそろってるな、今日は転校生を紹介するぞ」
「転校生ですってよ真尋さん」
「いいから黙ってろよニャル子」
「八坂クトゥグワです、よろしく」
「なんであんたがここにいるですか。ていうかなんで八坂なんて名乗ってるですか。
　3行で説明するですよ」
「宇宙警察機構にコネで入った。
　コネで地球に配属してもらった。
　少年の家を活動拠点にすることは課長の許可をもらってる。
　ニャル子一緒に暮らそ」
「最後の一行余計なんですよ。ていうかコネってなんですかコネって」
「おじさんが宇宙警察機構のえらい人」
「それじゃまじめに試験受けて入った私が馬鹿みたいじゃないですか」
「つーか僕の意思は無視して居候が増えるのかよ……」
「それ以前におまえらホームルーム中だぞ、私語は慎め」

そういうわけで、僕の家には居候が増えた。
やっかいごとの種が一つ増えたとも言う。
まあ、ニャル子の攻撃が少しでも収まればいいんだけど。

昼休憩。

「はい、真尋さんあーん」
「いや、普通にお弁当を作ってきたから、ほら、ニャル子の分もあるぞ」
「なんで私の分も作ってあるですか？　はっ、もしかしてこれは真尋さんからの私への愛情？
　ニャル子、うれしい」
「自分の分だけ作っておまえの分を作っておかないと、結局おまえの弁当を食わされそうだからな」
「もう、真尋さんったらツンデレさんなんだからあ」
「ニャル子、じゃあ、あまったお弁当は是非私に……」
「おまえに食わせるお弁当はねぇでがすよ」
「そう……」
「そういって広げたそのケーキは」
「翠屋特製の限定ケーキ」
「うう、なんでクー子がそんなの持ってるです」
「ネトゲでの知り合いに買ってもらった」
「なんでネトゲで地球の知り合いが出来るですか」
「ほしい？」
「……わ、私には真尋さんのお弁当があるから……」
「おいしい」
「う、うぅ……」
「ニャル子、無理しなくていいぞ」
「む、無理をしてるわけじゃないですけど」
「顔は十分無理してるぞ」
「そ、そんなこと言わなくたっていいじゃないですか」
「この甘さを抑えた上品な味わい……さすがは地球でも屈指の……」
「うう、私にも一口……」
「等価交換」
「何がほしいでげすか」
「あーん」
「な」
「あーん」
「は、はいあーん」

ほほえましい午後のひとときであった。

「さて、そろそろ昼休憩も終わりか、午後の授業だな」

というわけで、部活も終わって家に帰る。

「ただいま」
「お帰りなさい、真尋さん」
「ニャル子の方が後に帰ってるだろ」
「お帰り、少年」
「だからクー子の方が後に帰ってるって。鍵を開けてるのは僕なんだから」
「細かいことは気にしない。合い鍵は持ってる」
「なんで合い鍵持ってるんだよ」
「課長からもらった」
「なんで課長が合い鍵持ってるんだ」
「少年の母から許可はもらってると聞いてる」
「……母さんが？　なんで母さんが課長と知り合いなんだ」
「知らない」
「まあいいや、とりあえず晩ご飯作るぞ。3人分用意すればいいんだな」
「お願いするですよ」
「ありがと」
「どういたしまして」

……なんでこうなるんだ。
まあ、ニャル子の料理から想定して、クー子に料理を任せるのも不安だし
僕が作るしかないんだろうけどさ。

30分後。

「出来たぞ」
「待ってました」
「いただきます」

中略

「ごちそうさま」
「あークー子、着替えとかはちゃんと持ってきてるだろうな」
「持ってきてる。それから、部屋はにゃることいっしょでいい」
「そういうわけにいかないから、ちゃんと別の部屋を用意するよ」
「真尋さんそういうところは気が利きますねえ。じゃあ私はさっそく真尋さんの部屋にお引っ越しを」
「せんでいい。この家は無駄に部屋数が多いからクー子が来ても問題ないよ」
「別にニャル子の部屋でいいのに」
「私が困るって言ってるですよ」
「女同士だから問題ないじゃない」
「あんたの場合は問題あり」
「じゃあ、そういうことで、お風呂は沸かしておくから」

翌日、学校。

「どうした八坂、眠そうにしてるぞ」
「あ、部長、ちょっといろいろありまして」
「体調管理はちゃんとしておけよ」
「はい」
「八坂、美少女二人に囲まれた生活はどうだ？」
「なんだ典泰か、一人ぐらいならひきとってくれよ」
「真尋さん、二人きりの生活をお望みなんですね、いやー、照れちゃいますね〜」
「なんでそういう解釈をするんだおまえは」
「だって、二人ともって言わなかったじゃないですか真尋さんはぁ」
「二人とも出て行ってくれてもかまわないんだぞ僕としては」
「ニャル子、お邪魔虫は無視して二人で愛の世界を築こ」
「お邪魔虫はあんたでしょうが」

そのころ、その光景を見つめる一人の男がいた。

「見つけたぞニャル子……両手に花とは、許せん、許せんな」
「そうだな、許せんな、わかる、わかるぞその気持ち」
「うわっ、だ、だれだ私の背後に立つ奴は」
「ふっ、その全身からたぎる嫉妬のオーラに同情する男」
「わ、わたしは別に嫉妬などしているわけではない、ただニャル子に復讐したいだけなのだ。
　小さい頃からずっと優秀な妹と比較され続けた私の気持ちがおまえにわかってたまるか」
「その気持ちはたしかにわからんが、要するにニャル子に復讐したいのだろう。
　ならばわたしにまかせておけ、カップルを引き裂けば復讐は完璧に果たされるではないか」
「それは名案、だが、どうやってそれを達成するつもりだ」
「それは私に作戦があるのだよ。はっはっは」
「なんだか不安がよぎるのだが、気のせいかね」
「気のせいだ」

というわけで放課後。
部活が終わった後のニャル子達。

「やー疲れましたね真尋さん」
「ニャル子、弓なんか使わなくてもビットで的を打ち抜けばいいのに」
「精神修養が目的なんです」
「まあね……って、なんだあの古代エジプトのファラオのコスプレみたいなことをしてる変態は」
「あんな変人なんて、うちの出来損ないの兄のニャル男兄さんぐらいのものですけど」
「出来損ないで悪かったな、その本人だ」
「あ、ニャル子のお兄さんですか、初めまして」
「君か、ニャル子を傷物にしたというのは」
「はあ？」
「ニャル子とのつきあいは本気なんだろうね」
「もちのろんですよね、真尋さん」
「ちょ、ニャル子はただの居候でつきあうとかそういう関係では……」
「あそびでつきあうんだったら兄さんは許さないぞニャル子」
「もちろん結婚を前提としたおつきあいですよニャル男にいさん」
「結婚前提なのはニャル子と私のつきあい……」
「なんでいきなりそういう話になる〜」

いきなり兄の乱入で修羅場になった八坂真尋。兄に穏便なお引き取りはお願い出来るのだろうか。