クリスマスの日に旧校舎にある伝説の鐘の祝福を受けたカップルは永遠に幸せになれるという伝説がある。

「……え、えと……そもそもこの学校に……旧校舎なんて……ないと……思い……ます……」
「そっか、なら中等部校舎に設定変更やな」
「みねあさん……いいんですか……中等部……巻き込んで……」
「まあ、細かいことはええやろ。高等部も中等部も一緒に盛り上がった方が絶対楽しいし」
「楽しい……のは……楽しいと……思い……ます……けど……」
「けど？」
「……そんな……伝説……この学校に……ありました……？……」
「ない。今から伝説を作るんや」
「……伝説が……できるような……カップル……できると……いい……ですね……」

ここは、高等部にある、みねあが仕切ってる購買部である。
例によってみねあが今年の出し物を考え中なのだ。
どうやら、今年の出し物は、伝説の鐘に決まったらしい。

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「ということらしいぞ、さゆりくん。これはやはりサバイバル同好会として妨害せねばなるまい」
「サバゲーとカップルの妨害となんの関係があるんですか」
「サバゲーとはなんの関係もないが、裏の顔のしっと団としてはやはり妨害する必要があるだろう」
「団というほど人数集まってないじゃないですか。会長一人でやってくださいね」
「そういうなさゆりくん、一人では人手が足りないのだ。せめて人手集めぐらい手伝ってくれたまえ」
「なんで上から目線なんですか。ていうか、当初いたメンバーはどこへ消えたんですか」
「わからん。気がついたらみんないなくなった。なぜだ、彼女ができたわけでもないのにいなくなるとは、不思議な」
「そもそも、全員彼女がほしいと思っている、という想定に無理があるんじゃありませんか」
「そういうこともないだろう、いないよりはいたほうがいいにきまっている」
「そういう会長はどうなんです？」
「私はいいのだ、半額弁当を前日にスーパーで買い置きして昼食に当てているからな」
「会長の言う彼女って、お弁当を作ってきてくれる便利屋さんでしかないんですね……」
「最近は逆のパターンもあり得るみたいだな。何がうれしいのかよくわからんが」
「会長は食い気しかないんですか」
「ほかにもいろいろあるのだろうが、そもそも彼女なぞできた試しがないのでよくわからん」
「わからないものにしっとしてるんですか」
「彼女ができたらしっとする必要がないではないか」
「そりゃそうですけど」
「そういうさゆりくんは彼氏がいるのかね」
「いませんけど」
「なら問題ない、カップルがどういうものか知らないのなら立派なしっと団員だ」
「そういう問題なんですか」
「そういう問題だ。よいことをしてるなら堂々と見せてもよいはずだ、隠してるからにはよからぬことを企んでるのだろう。
　なら成敗しても問題ない」
「よからぬことでなくても、人前でやるようなことじゃないことだってあるでしょう」
「まあ、それもそうだが、なら汚いことをしてるとでもいうのか」
「知りませんよ」
「まあいい、なにはともあれ、妨害だ」
「具体的になにをするつもりなんですか」
「無効の出方次第だな。どんなイベントをやるかによって、妨害の手段も変わる」
「それもそうでしょうね。でも、妨害といっても、笑って済ませられるものにしてくださいよ」
「まかせておけ、けが人は出さないのが私の主義だ」
「……この前集めてたスティンガーはなんのために使う予定だったんですか……」

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「みねあ様、クリスマスの出し物はおきまりでしょうか」
「決まったわ。それより生徒会の方は大丈夫なんか？」
「ええ、今年は中等部と合同でのクリスマスパーティになりました。ケーキも潤沢に用意させていただきます」
「ケーキの手配、今年はうちんとこじゃなくて、翠屋になったんやな、まあ、仕方ないか、こっちは
　うちの出し物に力を注ぐことにするわ」
「ええ、お願いしますね、それでどんな出し物になるんですか」
「カップルで伝説の鐘を鳴らすんや」
「カップルで鐘を鳴らす……だけですか？」
「せや、ひもを引けば鐘が鳴る……ようになってるんやけど、その鐘のろいがかかっててな。
　その呪いを壊すには、”幸せな恋”が必要なんよ」
「その”幸せな恋”を持ってるカップルだけが、鐘を鳴らせる、ということなんですね」
「せや、そういう設定や」
「設定って……」
「そんな都合のええのろいなんてあるかいな。はじめから鐘は壊れてて、誰がやっても鳴らへんねん。
　まあ、かねの故障を直せば鳴るやろうけど……魔法を使うかキュゥべえにでも頼むか、それとも
　鐘のあるところまで登って故障を直すかせな無理やろな」
「そんなイベントでいいんですか？」
「ま、そこは案配するさかい心配せんでええよ、遊び半分のカップルやったらならさへんっちゅうこっちゃ」
「わかりました、私はみねあ様を信じます」
「まかせてや」

こうして、泥縄式にイベントは始まることが決まったのであった。
さてさて、どうなることやら。