「ティロ・フィナーレ」
「これで魔女退治完了ですね、マミさん」
「そうね、まどかさん」
「あの……グリーフシードを拾っておきました」
「ありがとう、ほむらさん」
「それにしても、グリーフシードって十分には集まらないですね」
「そうね、使い魔ま持ってないことが多いし、魔女でも必ず持ってるとは限らないわ。
　だけど、持ってない使い魔や魔女も、きちんと退治しておくことは大切なのよ。
　ほっとくと、人を襲って魔女に成長してしまうわ」
「そうなんですか、なら、そうなる前に退治するのも大切なんですね」
「そうよ、まどかさん」
「はい、マミさん」

弁慶が通う学校の中等部に所属する、魔法少女3人組の会話であった。
彼女たちがグリーフシードに不自由しない程度には、魔女がいる地域であるようであった。
だが、それだけ魔女が多い地域であれば、縄張り争いも自然と発生してくる。

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「ふーん、マミの奴、新しい魔法少女まで手に入れて、楽しそうじゃねーか」
「それで、杏子、何しに来たんだい」
「何をしに、っていうか、あたしの縄張りじゃ、魔女を狩尽くしちまったからさ、新しい狩り場が必要かと思ってね。
　ここなんかよさそうじゃないか、キュゥべえ」
「だけど、ここはマミの縄張りだよ。割って入れば争いになるんじゃないかな。特に、マミと杏子じゃ、使い魔に対する
　考え方は違いすぎるからね」
「使い魔を温存してさえ、あたしは狩尽くしちまったんだぜ。あいつらみたいなことをやってたら、グリーフシードが足りなくなるか
　さもなければ、魔女を狩尽くして自分たちの首を絞めるか、どっちかになっちまうのが目に見えてる。
　なんとか、共存共栄でやってく方法をみつけねーとな」
「どうするんだい？」
「ま、話し合いで解決できりゃ、それに越したことはないんだがね」
「話し合いがうまくいくと思うかい」
「やってみなけりゃわからないさ。お膳立ては頼むぜ、キュゥべえ」
「やれやれ、人使いが荒いなあ」
「仕事のうちだろ」
「わかったよ、まあ、やってみるさ」

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だが、出会いはすぐにやってきた、彼女たちの偵察に来た杏子が、恭介が入院している病院で、グリーフシードを見つけたのだ。

「ふーん、あいつらはまだすぐには来ない、か。じゃ、あたしの得物にしてもバチは当たらない、ってことになりそうだね」

杏子は、さっと魔女の結界の中に姿を消す。
その後、しばらくして、さやかとまどかが恭介の見舞いにやってきた。

「……グリーフシードだよ、さやかちゃん」
「まどか、どうするの？」
「どうするって……さやかちゃんは、ここでマミさんに電話して。わたしは、いったん中に入って様子を調べるから」
「わかった、まどか、気をつけてね」
「うん、気をつけるよ」

さやかは、まどかから電話番号を聞いて、マミの携帯電話に電話する。
まどかは、ほむらにメールを入れると、結界の中にと姿を消した。

やがて、ほむらが姿を現す。

「あ、あの……まどかさんは……どちらへ……」
「まどかなら、結界の中にもう入ってる。マミさんはまだだけど」
「で、でしたら、私もすぐに結界の中に入ります。まどかさんを一人にはしておけません」
「ん、わかった、私はここでマミさんを待つから。
　でも、気をつけていってね」
「は、はい、……気をつけます」

ほむらも、結界の中へと姿を消した。

やがて、押っ取り刀のマミが姿を現す。

「さやかさん、大丈夫だった？」
「ええ、あたしは大丈夫です、だけど、まどかとほむらはもう結界の中に」
「そうなの、じゃあ、早く私も行かないとね」
「あの……マミさん、あたしも中に行ってかまいませんか？」
「どうしたの？　中は危険よ、普通の人が入っていい空間じゃないわ」
「危険なのはわかってます、だけど、まどかやほむらのことが、心配なんです」
「だめよ、まどかさんの友達を、不用意に危険にはさらせないわ」
「どうしてもだめですか」
「私たちを信じてちょうだい。かならず、無事に帰ってくるわ。まどかさんたちと、一緒にね」
「はい……わかりました」

そういうと、マミも結界の中へと姿を消した。
再び、さやかはひとりぼっちで結界の外に待ちぼうけである。

「あたしが魔法少女になったら、みんなと一緒に行けるのかな……」

ふと、そんなことを思ってみる。だけど、それは周り中から否定された考え方だった。
……そういえば、まどかやほむらは、なんのために魔法少女になったんだろう。
今度、聞いてみよう。

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結界の中は、薬とお菓子のオンパレードだった、長くいると頭がおかしくなりそうになるのは
結界ではいつも通りの状況なので、魔法少女達は特に気にしていないようである。

「マミさん、来てくれたんですね」
「まどかさん、状況は？」
「えと……マミさんを待ってたんで、あまり先には進んでないんです。
　ほむらちゃんが来てくれたんで、身を隠して使い魔をさけてただけですね。
　ほむらちゃんは？」
「私も……まどかを見つけたら、まどかと一緒に姿を隠してました」
「そう、なら、3人で、使い魔に見つからないよう、そっと本体を探しましょ。
　本体をたたけば、自然とこの結界も消えるはずよ」
「はい」

何度もやったことのある、魔女退治である。
使い魔相手に魔力を消耗しないよう、使い魔を避けられるところは、避けて通る。
そして、最深部にいるはずの、魔女を全力で葬る。運がよければ、最後にグリーフシードが手にはいるはず。
これが何度も繰り返してきた魔女退治の手順だ。きっと今回もそうなるはず。

だが、今回はそうはならなかった。
なぜなら、最深部にいる魔女は、すでにほかの魔法少女によって退治されてたからだ。

赤い髪の魔法少女が、リンゴをほおばりながら最深部で待っていた。

「食うかい？」
「いえ、今はやめておくわ」
「そっか、そりゃ残念だな、あたしの名前は佐倉杏子っていうんだ」
「私は巴マミ」
「私は鹿目まどか」
「……私は……」
「暁美ほむらだろ、調べはつけてあるんだよ。なあ、あんたら、使い魔まで狩ってるそうじゃねーか。
　そんな調子じゃ、いまにこの地区の魔女だって全部狩尽くしてしまうぜ。そしたら、この先どうするつもりなんだ」
「そうなったら、別の地区の魔女を狩るだけよ」
「ほかの魔法少女の縄張りを荒らしてかよ。
　なあ、あたしの言うことも少しは聞きなよ。あたしはさ、使い魔は殺さない方針で、ずっとやってきたんだ。
　グリーフシードをためた魔女だけ襲ってさ。それでもあたしの地区の魔女は絶滅しちまったよ。
　そんな間違い、あんたらが繰り返す必要はないんだぜ。ここはまだ豊かな狩り場だ。あんたらには才能もある。
　使い魔なんて狩るのを止めて、魔女だけきっちり狩っていけば、もう一人魔法少女を抱えたって
　ずっとやってけるはずなんだよ」
「……あなた、それが何を意味するかわかってるの？」
「グリーフシードがなくなったら、魔法少女がどうなるかわかってるか？」
「……知らないわ」
「あたしもしらねえ。けど、どうせろくなことにならねえのは想像がつく。
　こういうのは食物連鎖だ。学校で習ったろ。あたしらがやられたくなければ、弱い人間が魔女に食われてもらわなきゃしょうがないんだよ」
「そうと決まった訳じゃないはずよ」
「そうに決まってるんだよ。世の中ってのはそういう風にできてるものさ。
　まあ、信用できないなら、キュゥべえにでも聞いてみるといいさ。
　ま、あたしの提案を真剣に考えてみてくれよ。じゃあな」「

言いたいことを言うと、杏子は姿を消した。
後に残されるのは、魔法少女3人と、結界外で待っていたさやかである。

「何？　何があったの？」
「なんでもないわ。とりあえず、私たちでない魔法少女が、あの結界を作っていた魔女を退治してくれたから、とりあえずは無事よ」
「よかった。でも、マミさん達でない魔法少女って、誰のことなの？」
「佐倉杏子よ。名前は聞いたことがあるわ。一匹狼のベテラン魔法少女で、腕は確かよ。隣町を縄張りにしてたはずなんだけど
　こっちに縄張りを移してきてたみたいね」
「マミさん、縄張りの中の魔女を、狩尽くしたって言ってましたよね、そんなことができるんですか？」
「理論的にはもちろん可能よ。だけど、本当にそれができるほどの力があるなんて……」
「すごい、魔法少女なんですね……」

佐倉杏子、恐るべき魔法少女、彼女の提案を受けるにせよ、断るにせよ、しっかりとした地盤が必要なのはたしかであった。