「それで、アデルバートさん。僕に協力してくれるわけにいきませんか」
「神機の調査ってやつか。確かに、俺も神機ってやつには興味があるな。
　けど、あれは二つとも、監視が厳重でおいそれとは盗み出せるものじゃないだろう」
「だから、盗み出すんじゃなくて、お願いして貸してもらうんですって。
　あれはもしかしたらロストロギアかもしれないんです。
　だったら、管理局で管理することが必要かもしれない」
「管理局なあ。そんなこと言い出したら、なおさら貸してくれるものも貸してくれなくなるぜ」
「けど、危険なものを放置しておくわけにもいきませんよ。それが危険か、危険じゃないかを
　知るためにだけでも、調べることは調べてみないと」
「おまいさんの言い分もわかるぜ、ユーノ」
「でしょう。アデルバートさん、是非とも、神機を調査して、その安全性とか、性能とか、可能性について調べなければ」
「そうだな。けど、それを納得させるのは、一筋縄ではいかねぇぜ」
「わかってます。みねあさんには話をしたんですが、門前払いされてしまいました」
「そりゃそうだろうな。もう一つの方の神機はどうなった？」
「それも、観月さんに話をしたんですけど、のらりくらりで結局だめでしたね」
「そっか。……で、俺を頼ってきたわけだ」
「ええ、そうです。アデルバートさんなら、力になってくれるんじゃないかと思って」
「力になりたいのは山々だが、説得しろといわれたって俺もたいした助力はできねえぜ。
　なにせ、あいつらの言い分もわからないわけじゃないからな。
　今まで、悪用しようって奴らから、命がけで守ってきたアイテムだ。
　それを、危険かもしれないからって理由で、おいそれとよそ者に渡せるものかよ。
　第一、管理局は、この間の騒動のときでも、あいつらからは信用されてないみたいだったしな」
「それは感じます。……けど、ロストロギアが暴走したなら、世界の一つや二つ、簡単に崩壊してしまいますから……」
「ロストロギアってのは、そんな危険なものなのか？」
「そんな危険なものを、ロストロギアって呼んでるんです」
「そっか。定義の問題か」
「ええ、そうです」
「ふーむ。難しいところだな」
「助けると思ってお願いします。実際、調査してみないとわからないことはたくさんあるんです」
「おまえさん、調査したいっていうのが本音じゃないのか」
「それは否定しきれないですけどね」
「否定しないのかよ」
「嘘をついてもはじまらないですから」
「ははは、俺も神機には興味あるからな。確かに、あれだけの力のあるアイテムなんて
　セルディアーシュでも滅多にお目にかからない」
「そうでしょうね。プレシアが、ジュエルシードの代わりにねらったほどのアイテムなんですから」
「ジュエルシードか。それも俺にはよくわからん」
「ある種の魔力の結晶体です。管理局で解析した結果ですね。人工的に、似たようなものは作り出すことも可能だそうですよ」
「そっか。だが、神機は誰がいつ作ったものかもわかってないみたいだな」
「ですね。……無限書庫を調べてみたら、わかるかもしれませんけど」
「無限書庫？　なんだそりゃ」
「管理局の本局にある情報センターですよ。古今東西のあらゆる情報が蓄積されているんです。
　管理世界、管理外世界のあらゆる情報が集まっていますから、神機だって現物と照らし合わせて検索すれば
　何らかの手がかりがつかめる可能性はあると思いますよ」
「ふーん、そういう方向からせめて見たらどうなんだ」
「やってみましたよ。別に神機の起源なんて興味ないっていわれました」
「使い方さえわかれば問題ないってことか」
「使わないから使い方を知る必要もないっていわれました」
「使わないねぇ……使わざるをえない事態ってのは、かならず起きるものだと思うがな。
　力には責任が伴うものだぜ」
「僕もそう思うんですけどね。力を持つからには、そのちからについて知る義務があるんじゃないかって」
「よし、わかった、俺もなんとか神機を調べられるように力を貸してやろう」
「お願いします、アデルバートさん」

善意は悪意より時として迷惑な場合もある。
神機をねらうのは、悪意ある存在ばかりではないのだ。
今、善意の研究者二人が、神機の調査のために立ち上がった。

みねあにとっても、義経ちゃん達にとっても、迷惑な話なのだが。