「やっと完成したぜ」

「なんやアデルバートはん。最近姿みんおもうたら、急に現れて」

「人を化け物みたいにいうなよ」

「１００年に一度の天才なら、一種の化け物やおもうけどな。

　それで、何が完成したっちゅうんや」

「セルディアーシュと、こっちの世界とを移動出来る魔法がやっと完成した。

　今までボイドの悪影響で遮られていたゲートが、ボイドの悪影響が無くなった

　おかげで、再び開くことが出来るようになったんだよ」

「それはよかったなぁ。これで、コオル達だけやのうて、アデルはんも

　リドラスヘイドに帰還することが出来るようになった訳や」

「ただそれだけのことならいいんだけどな。このゲートを維持する魔力が問題なんだ。

　今まではボイドの魔力が十分過ぎるほどあったから、こっちの問題は無かったんだが

　今や、ボイドからの魔力は、こっちの世界じゃ皆無になってしまったからな」

「神機はかさへんで」

「そんなことは言ってないだろ。セルディアーシュ側からゲートを開く必要があるってだけなんだよ」

「それなら簡単やろ、ケータイデンワで連絡して、向こうの魔導師をつこうて、ゲートを

　開いてもらえばええんや」

「そんな怪しげな魔法、誰が使うんだよ」

「自分であやしげやいうあたり、自信はないんやな」

「予備実験すらしてないからな。理論上開ける、いうだけで、ほんまにゲートが開くかどうかは

　出たとこ勝負になる。正直、魔法学園の連中だって、本気でやってくれるかどうかは

　怪しいもんだ。それに……このゲートが開けば、また三魔将と将軍が帰還することになる。

　そしたら戦争がどうなるかは、なってみなければわからない」

「けど、双方とも、和解することで合意したんちゃうんか？」

「１５年も殺し合ってきたんだ。恨みがそう簡単に解けるともおもってない」

「……アデルはん、たぶん、逆やろな。三魔将と将軍がもどって、なんとかせな

　恨みを解くわけにもいかんやろ。ゲートを開く仕事は、向こうの誰かに頼むしかないな」

「やっぱそうか……さて、誰に頼むかな。ビルギエッタが引き受けてくれるといいんだが

　あいつは俺の魔法を嫌ってたからなぁ。オジジイは年だし……」

「一人いるやろ、間違いなく引き受けてくれそうな人が」

「誰だ？」

「コオルにやらせればええやないか」

「コオルかぁ？　あいつはまだ未熟だろ」

「親の欲目で、自分並みを要求してるだけや。１００年に１度の天才、ちゅうわけには

　いかんけど、あれでも１０年に１人の逸材じゃあるんよ。まあ、魔法式を送って

　向こうでゲートを開いてもらえばええんちゃう？」

「そうか……けど、開いたゲートの踏破はどうすればいいかな。

　いろんな意味での安全性確認が必要だぜ」

「それについては、……生徒会に頼めばええんちゃう？」

「生徒会を巻き込んでいいのかよ」

「自信、ないんか？」

「自信はあるぜ。けど、ボイドが完全に安全になったかどうか、確信は持てないからな」

「それについては、アデルはんがしっかりとみんなを守れば済む話や」

「……そうだな。今までいろんな面で世話になったんだ。向こうの世界の案内ぐらい

　しても、罰はあたらないだろう」

「そういうことや。踏破の安全性確認第１波に、アデルはんががんばって、

　第２波以降の踏破を頼めばええんよ。どの程度の安全性かは

　やってみなわからんこともあるやろ」

「それもそうだな。受け口を作るのはおれだしな」

「そういうことや」

 

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「と、そういうわけで、生徒会の手を借りたいんだ」

「ですが、私たちがわざわざ踏破しなくても、アデルバートさんと

　王国軍のみなさんと、三魔将の方々が元の世界に戻られれば

　それで話が解決するでしょう。なにも、私たちが

　行く必要はないのではありませんか」

「１つには、俺たちの世界をお礼に案内したいっていうのがある。

　けど、もっと切実な問題もあるんだ」

「それはいったいなんですか、アデルバートさん」

「紅葉さん。俺はまだ、魔族と人間がうまくやっていけるかどうか疑ってるんだ。

　踏破の最中に、何かもめ事が起きないように押さえるには、第三者がいた方が

　いいように思うんだ」

「それで、私たちがいた方が安心できるということなのですね」

「そういうこと。ゲート自体は、いったん開かれたら向こう側で俺が

　補強するから安心してほしい」

「わかりました、そういうことでしたら、有志を募りましょう」

「ありがとう。わかってくれて助かったよ」

 

こうして、生徒会は、ホートウィッシュへと向かうことになったのだった。

その道中、そして向こうで出会う物はなんだろうか。

それは、行ってみなければわからない。