「そういうわけで、今おまえさんが持ってる、魔道機の起動キーを

　貸してもらいたいんだ。神機が使えない今とはっては、グレートボイドの

　向こうにいく魔力を供給してくれそうなあてといったら、あれぐらいしか

　ないからな」

「あれ使うんか？」

「神機と違って、こっちは自己責任の枠内のはずだぜ。

　元々、俺達の世界の道具でもある」

 

相変わらずの会話を繰り広げているのは、アデルバートにみねあである。

神機を借り受けられなかったアデルバートが、リドラスヘイド帰還への

鍵として、こんどは、サバイバルゲーム同好会会長が見つけてきた

魔道機の起動キーを、魔力源として使って、グレートボイドへの

潜入を行おうとしているのだ。

 

「それは認めるしかないわ。確かに、あれはリドラスヘイドのアイテムや。

　うちが預かってるのも、王国軍と三魔将が喧嘩をはじめそうやったから

　にすぎんからな。

　その危険が無い、今の段階やったら、うちが預かる必然も、あんまない。

　けど、うちに言わせたら、リドラスヘイド帰還そのものを

　あきらめる方が、絶対安全やで」

「俺は、そうかんたんにあきらめる気はないぜ。

　召喚に依らない、世界間の転移を、一度は実現したんだ。

　一度出来たことなら、もう一度出来ても、おかしくはない」

「目指すのは勝手や。自己責任の範囲でやるのはな。

　けど、一歩間違えたら危険なのは、間違いないで。

　それでも、やるんか？」

「当然だ」

「そう断言するんなら、無理には引き留めへん。

　けど、安全性には最大限配慮してもらわへんとな」

「それについては、ちゃんと考えてある。

　一旦俺達だけで突入した後、召喚術でボイドの中に

　探査隊を送り込む。召喚でなら、最悪の事態が起きても

　召喚解除されるだけだからな。危険にさらされるのは

　俺だけってことだ」

「・・・万が一、アデルはんが帰れへんかったら

　リドラスヘイド帰還計画は、完全に頓挫やで。

　それでも、あえてやるんか？」

「ああ、危険は俺がかぶる。そうするのが当然だろ」

「そうか、覚悟出来てるんなら、もはやとめへん。

　これが、魔道機の起動キーや。

　腕のいい魔導師なら、魔道機を起動出来るだけの力はある」

「けど、俺は魔道機として使うつもりはないぜ。

　・・・・ここに、ビルギエッタがいりゃな」

「さすがに贅沢や。それに、頼りになる連中なら

　ここにも揃ってるやろ」

「そうだな」

 

こうして、グレートボイド探索計画は、開始の運びとなった。

とはいえ、召喚される人たちをどこで募るつもりなのか?

 

「ん、この世界の人間でないと、召喚には適応しないだろ」

 

はい、そういうことなんですか、アデルバートさん。