「さて、そろそろ説明に入っていいかな」

「ええ、どうぞアデルバート様」

 

ここは、弁慶達が通う高校の生徒会室。

ずっと市民公園で空間の歪みについて調べていた

コオルの父、アデルバート＝リアロが、いまや

関係者の一員となっていた生徒会のメンバー相手に

現状を説明しようとしている。

 

「空間の歪みの向こう側に、巨大な魔力の存在する

　空間があることは確実だ。

　そして、その空間の別な歪みの場所には

　おそらく、リドラスヘイドが存在する」

「つまり、その空間を抜けていけば

　アデルバート様達は、故郷に帰る事が出来るのですね」

「そう簡単ならいいんだがな。

　あの空間から出てきたモンスターを見ただろう。

　あの空間は邪な何かに満ちあふれている。

　空間を抜けようとすれば、何が起きるかわかったものじゃない」

「じゃ、何も打つ手がないってこと？」

「俺を誰だと思っている、１００年に一度の大天才…」

「アデル、自慢はいいから、本題の説明を」

「すまん綾子。…どこまで話したかな？」

「あの空間の中に邪な何かが満ちあふれている、と

　言うところまで」

「ああ、そうか。

　それでだな、我々が単に帰還すればいいというのなら

　あの空間から魔力をある程度受け入れて、リドラスヘイドへの

　ゲートを開くことを考えればいい。

　だが、それでは、遅かれ早かれ、あの邪気に充ちた

　あの空間から、災厄が訪れる可能性がある」

「その可能性はどれくらいあるの」

「源さん…その可能性は、かなり高いな。

　空間の歪みはだんだん激しくなってきている」

「けど、俺達の戦力だって大したものなんだぜ。

　魔物が現れるぐらい、戦車やミサイルで吹き飛ばせる

　んじゃないか？」

「そう簡単に行けばいいんだがな、弁慶くん。

　俺もこの世界の兵器については調べてる。

　確かに、今現れてるモンスター相手なら、なんとか

　対処出来るかもしれない。

　だが、どこから現れるかわからないゲリラみたいな

　モンスター相手だったら、話は違うだろう。

　この世界の兵器は、見える物をやっつけるためのもので

　いつ異空間から現れるかもしれない化け物に対処するものじゃない」

「それじゃ、どうすればいいの？」

「俺にもそれはまだわからん。

　だが、あそこからの魔力を利用可能な状況にすることと

　この世界…そして、おそらくはリドラスヘイドを救う鍵は

　あの邪なエネルギーに充ちている、あの世界の向こう側に

　あるはずだ」

「では、どうすればいい？」

「まずは、あの空間の邪な気の性質をしらべなければならない。

　そのために、意図的に歪みを拡大して、あの世界の中の

　空間をこちら側にひっぱりだす。

　それで何が起きるかは、しょうじきわからん。

　だが、間違いなくひどい災厄の何かがおきる。

　だから、今あなたたちに相談している。

　俺と綾子は、空間の歪みを拡大し、一定のところで歪みを

　封じるので手一杯だ。

　底からわき出る災厄は…コオルと、あなたたちで対処してほしい」

「つまり、何が起きるかわからないけど、とにかくなにか

　災厄が起きるから、それに対応して欲しい、ということですね」

「その通りだ。難しいことだと思う。だが、必要なことだ」

「わかりました。…九羅香様、どうなさいますか？」

「義を見て為さざるは勇なきなり」

「俺も手伝うぜ、出来ることがなにかあるんなら」

「弁慶ばっかりいい格好するんじゃねーよ、あたしも手伝うぜ」

「…私も手伝わねばなるまいな、玲奈」

「はい〜私も〜出来る限り〜お手伝いするべきですね〜与一さ〜ん」

「私もお姉さまのお手伝いをするわよ」

「ありがと、楓」

「…みんな、すまない。お礼はなにも出来ないが、よろしく頼むぜ」

「この世界を守るためだよ、みんながんばろう」

「ですが、私たちだけで大丈夫でしょうか」

「それ、なんだよね。…こう言うとき、みねあやみあは

　助けになってくれるかな、紅葉」

「頼んでみなければわからないと思います、九羅香様」

「コオル達は手助けしてくれるんだろ」

「ああ、コオルには手伝わせる、あいつの召喚獣・・てか

　召喚少女達にも、出来れば手伝って欲しい」

「他にも、うちの生徒には手助け出来る人たちがいますから

　声を掛けてみましょう」

「ああ、頼む。…王国軍や魔族の手も借りられるといいんだが

　まだ、しっくりとはいってないみたいだからな。

　今は、まだ、お互いが争い合わないようにするので

　精一杯だろう、…じゃあ、よろしく頼む」

「ええ、頼まれました、アデルバート様」

 

話はまとまった。

王国軍、三魔将、彼らの手助けなしで

異空間の邪気…おそらくは訪れるであろう

魔物…あるいは、それより恐ろしい何かに

対処するのは、召喚少女達、そして

九羅香達の仕事なのである。

 

そして、生徒会に協力する、生徒達の。