時の氏神のごとくアデルバートと綾子が現れてから数日経った。
コオルとルテジアは、リアロ家で暮らすことになり、まどかの家の
居候ではなくなった。

 

そして、ここ、生徒会室では、アデルバードと綾子
生徒会メンバーに王国軍と三魔将に族長バローの会議が開かれていた。

 

「…全く気に入らん、魔族と手を組むとは、アデル殿は気が違ったのか」

「ここでこのままいがみ合ってどうすんだ。まさか、魔族を滅ぼすためなら

　王国が無くなってもかまわない、なんて無茶を言うつもりじゃないだろうな。

　それなら、はっきり言っておくが、王国にとって有害だぜ」

「アデル殿の言葉は間違ってないと思われます」

「むぅ…」

「それで、アデルバート殿、帰還するためにはどのような計画が」

「かんたんにいうと、グレートボイドにつながる歪みを見つけて

　そこを通ってリドラスヘイドに帰還する。

　言葉で言えばかんたんだが、実行はそう容易ではない」

「中にある邪気のことですね」

「そういうこと。…冷静になって考えてもらいたいんだが、あんた達が

　飲み込まれた数と、こっちの世界に到着した人数とを考えて欲しいんだ。

　いいたかないけど、かなりの確率でボイドの中に閉じ込められてるか、

　あるいは完全に飲み込まれてしまったか、あるいはさらに別の世界に

　行ってしまったか…いずれにせよ、ろくな結果にならないのはわかるだろう。

　だから、慎重に事を進める必要がある。」

「それで、私たちの手を借りたい、というのですね、アデル様」

「そういうことだ紅葉さん。手を貸して欲しい。」

「具体的にはどのような手助けが必要なのですか」

「まずは、歪みだ。俺の予測だと、例の魔道兵器のカケラとは無関係に
　グレートボイド内部の歪みが、こっちの世界に現れる。
　そこから、何らかの探索魔法をボイドの中に打ち込んで、ボイドの様子を探る」

「歪みはどうやればわかるんですか？」

「そいつは、優秀な召喚術師なら楽勝だ、だよな、コオル」

「空間の歪みから気配を呼んで呼び出すのは召喚術師の基本だよ。

　だけど…」

「そっちは心配すんな。この１００年に一度の天才、アデルバート様が

　おまえをみっちりと講義してやるからよ」

「お手柔らかにお願いします」

「そんな余裕があったらな」

「それで、我々も手分けして、歪みを探せばいいのだな」

「ああ、だが、いくつか危険がある。」

「歪みから現れる魔物ぐらい、この私の敵ではありません事よ」

「アレクサンドラの心配もあるんだが、それ以上に心配なのは

　歪みを探してる俺たちが、不審者だと思われないかってことだ」

「それに対して何かよいアイディアでもあるのですか」

「そりゃあるさ。俺がこっちの世界でも普通に暮らせてるのは

　綾子と一緒だからだ。それと同じで、歪みを探すみんなも

　同じように、こっちの世界の住人と一緒に行動してもらいたい。

　そうすれば、こちらの世界で不審者扱いされても、なんとか

　切り抜けられるはずだ」

 

こうして、王国軍、魔族、そしてアデルバート達のリドラスヘイド帰還の第一歩

歪み探しが始まった。