「バロー様、どうやら、我々は、異世界にとばされてしまったようです」
「そうか。…原因はわかるか？」
「…原因は、わかる。だけど、対策、何もない」
「ほーほっほっほ。対策なんて考える必要なし。この世界を征服してしまえば
　リドラスヘイドに戻る方法も、いずれわかるはずですわ」
「そう簡単にいくといいがな、アレクサンドラ。
　我々４人だけで、一体何が出来るというのだ」
「魔族兵の姿が見えないのは、奇妙ですわね」
「それよりエイミィ、原因について、おまえの考えを聞かせてくれ」
「…月。グレートボイド」
「…つまり、ここは、グレートボイドの向こう側の世界だということか？」
「それは違うでしょう、バロー様」
「どういう事だ？」
「グレートボイドからは、魔力が降り注いでいたはず。
　ですが、この世界には、むしろ極端なまでに、魔力が不足しています。
　おそらく、グレートボイドの向こう側というよりは、ボイドの影響で生まれた
　空間の裂け目に吸い込まれてしまったのではないかと」
「それはおかしいですわ。私たちは、確かにボイドに吸い込まれたはず。
　魔力は、ボイドの向こう側にあるのではなく、ボイドの向こう側にはじき出されたと
　考えた方が、自然なのでは」
「…だが、それならば、この世界にも、ボイドが存在するはずだが、何も感じられない」
「二人とも、憶測で話をしていても始まるまい。今必要なことは、この世界についての
　知識を得ること。そして、この世界で生活するための拠点を手に入れることだ」
「なぜ、この世界で生活する必要があるのですか、バロー様。
　生活などせずとも、征服してしまえばよろしいのです」
「だから、どうやって征服するのだ。皆殺しにしたところで、帰る方法がわかるわけではないのだぞ」
「…アレク、征服するにしても、情報が必要。
　私たちに気づかれず、私たちが生活する拠点、手に入れる必要、ある」
「ふむ。…つまり、私の出番のようですね、バロー様」
「そうだな、おまえには、その種の経験が豊富だ。頼むぞ」
「かしこまりました。…ですが、どこへ行くべきか、考えておかなければ」
「…行くあて、ある」
「どこだ、エイミィ」
「…学校。エイミィ、見つけた」
「学校か…学校ならば確かに医者は必要だろう。だが、直ぐに雇ってもらえるものだろうか」
「…雇ってくれなくても、潜り込む先見つける、手がかり、見つかる」
「そうだな。行ってみよう」
「エイミィ、案内する」
「頼んだぞ、二人とも」

「何かすごい表現をされているな」
「されるようなことを普段からしている自覚はないんですか？」
「ないっ」
「言い切らないでください」
「だが、さゆりくん、おかしいとは思わないかね」
「何がですか？」
「なぜ、この時期に、校医が急に変わったのだろう？」
「言われてみれば謎ですね。…すこし、調べてみる必要があるようです」
「うむ、頼んだぞ」
「…会長は、今回はじゃましないんですね」
「馬鹿なことをいうな、私は私で策があるのだ」
「…女生徒に人気があるから…っていう、お約束なパターンじゃ、ないですよね？」
「お約束なパターンではない！原点回帰だ！
　最近存在感がなくなってきたから、ここで再び、サバイバル同好会の旗を高く上げるのだ」
「はいはい、せいぜい怪我しないようにがんばってください…って、私はいいんですか？」
「最近異様な噂が流れているから、君が居ない方が都合がいいのだ」
「………確かに、あれは異様な噂ですね。わかりました、私は私のルートで
　リンクス先生の正体について調べることにしますよ」
「うむ、頼んだぞ…ふふふ・・・ふはは・・・ふあーはっはっは。
　復活だ、部員数２名まで減少した、わがサバイバル同好会復活の日が来たのだぁ！」

【シナリオ３２】赤い眼をした新任先生