ここは、藍仙高校の生徒会室。
毎回毎回生徒会室で始まっているような気がするが、たぶん気のせいではない。

 

今、生徒会室には、神機の力を完全に引き出せるらしい、巴御前達に対する
最終決戦の、最後の打ち合わせを行うために、九羅香達が集まっている。

 

「それで、静。作戦ってどういうものなの？」
「はい〜九羅香さん〜。作戦自体は〜単純なものです〜。
　転送魔法を使われないように〜みあさんには全力でがんばってもらって〜
　巴御前達を〜みあさん奪取のために〜おびきよせて〜撃破するだけですよ〜」
「簡単な話じゃねーか。罠はってまっとけばいいんだよな」
「そう簡単には〜いかないです〜」
「そりゃまたどうしてなんだ？」
「弁慶さ〜ん。巴御前達だって〜負けるために〜のこのこ出かけてくれは〜しませんよ〜。
　勝てると思うから〜やってくるんで〜負けると思えば〜出かける理由〜ないです〜」
「それはわかります。ですが、負けたら、私たちはそれで終わりです」
「そうですね〜紅葉さ〜ん。ですから〜、さじ加減が〜大切なんです〜」
「さじ加減とは、どういうことだ？」
「はい〜。与一さん〜。簡単に言うと〜”罠だとわかっていても食いついてくる”〜
　さじ加減ですよ〜」
「静先輩、罠だとわかっていたらこないんじゃないの？」
「うふふ〜。美沙さん〜。罠だとわかっていても〜やってみる価値があるリスクだと思えば〜
　とびこんでくる〜ものですよ〜」
「…けど、やってみる価値がある罠ってことは、こっちにも負ける可能性がある作戦ってことでしょ。
　そんなんで大丈夫なの？」
「大丈夫では〜ないかもしれないですね〜」
「んな無責任な…それじゃ作戦っていわねーだろ」
「玲奈さ〜ん。いい砦は〜かならず弱点が〜あるものですよ〜。
　負けない作戦も〜たてられますけど〜その作戦だと〜無関係な人たちを〜巻き込んでしまうんです〜。
　最良の結果を期待する〜作戦を立てるとすれば〜一定の危険は〜引き受けなければ〜なりませんよ〜」
「つまり、わざと負ける可能性を作ることで、巴御前達に、”虎穴に入らずんば虎児を得ず”って
　そうおもわせようってことだね」
「はい〜九羅香さ〜ん。そういうことです〜
　足りない分は〜勇気で補ってください〜」
「どっかの勇者王かよ」
「弁慶さ〜ん。弁慶さんが〜弁慶さんの薙刀を持って〜清盛さんに〜つっこんだとき〜
　成功する〜絶対の自信とか〜間違いのない勝算とか〜ありましたか〜」
「…確かに、結果はよかったよ。けど、幸運は何度も続かないだろ」
「幸運ではありません、弁慶様。勇気とは、おじいさまが計算に入れていなかった、いえ
　むしろ、誰にも計算に入れることが出来ない要素です。
　幸運とは、未来を切り開く意志を持つ人にだけ訪れるのだと、私はそう思います」
「観月様。観月様は、幸運を信じるのですか？」
「私は、みなさんを信じます。…廉也、もちろんあなたも」
「はい…」
「けど〜。私たちがいては〜、巴御前達は〜好機だとは〜思ってくれないでしょう〜」
「静様、ですが、それではあまりに危険です」
「ですから〜どこかの〜山本勘助さんの〜作戦を〜お借りしましょう〜」
「勘助さん？」
「きつつき戦法を使います〜。強力な別働隊を編成して〜敵の本陣に向かい〜
　本陣は〜必要最小限まで〜手薄にするんです〜」
「そんなことをすれば、本陣を落とされるのではありませんか、静様」
「そうですね〜紅葉さん〜。ですけど〜敵を捕捉することは〜出来ますよ〜。
　そして〜敵が食いついてきたら〜別働隊が〜背後から〜敵に襲いかかるんです〜」
「…ねえ、静。その、山本勘助の作戦は、上手くいったの？」
「第四次川中島の合戦では〜上手く行きました〜合戦は〜勝利でしたよ〜」
「けど、勘助は川中島で戦死したんじゃなかったっけ？」
「ええ〜武田軍の名だたる武将４人が討ち取られ〜信玄自身も〜身に危険が及んだ〜みたいですね〜」
「そりゃあぶなすぎるだろ。他になにか手はないのかよ」
「これが〜一番〜安全な〜作戦ですよ〜。…私たち以外の人に〜とっては〜」
「…静が、戦う理由にこだわる理由がわかったよ。
　私たちが、巴御前のいる場所へ向かうと見せかけて、巴御前達を引き込むんだね。
　ほかの…平成の人たちの守る、この学校に」

「はい〜そういうことです〜。できるだけ〜早く戻れるよう布陣するつもりですが〜
　それでも〜。みなさんが〜、全力を出したとして〜、３割から４割は〜
　負けるものと〜覚悟してくださるように〜お願いします〜」
「おれたちが待ち受けたんじゃ、だめなのか？」
「…１人２人ぐらいなら〜なんとか〜残れるかもしれませんけど〜
　私たちが〜巴御前の所へ向かわなければ〜巴御前達は〜来てくれません〜」
「…わかった。けど、この作戦で行くかどうかは、みんなの意見を聞いてからだ。
　本当に命がけなのは、残るみんなだし、それに、他の人には、また別な作戦があるかもしれない」
「そうですね〜。私たちの内〜誰がここに残るのか決めるのも〜ここに残る人の判断に〜
　私は〜任せるべきだと〜思いますから〜。けど〜、弁慶さんか、観月さん、どちらかは〜
　かならず〜ここを〜離れる必要が〜ありますよ〜」
「どうして？」
「神機に対抗できる可能性があるのが〜、弁慶さんの薙刀と〜観月さんの〜能力だけですから〜」
「みあがここに残るんだったら、その通りだね」
「それでよろしいでしょうか〜紅葉さ〜ん」
「…はい、では、掲示板に書いておきましょう。これが本当の、最終決戦になるのですね」