ここは、弁慶の通う高校の生徒会室。
今は放課後、そして、生徒会室の中では

京都からもたらされたとんでもない情報の分析の最中である。

 

「紅葉、長野先生達がこっちに向かってきてるって本当？」
「九羅香様、情報として確定ではありませんが、おそらくは事実だと思われます」
「なあ、なんでいままで京都にいたのに、急にこっちに来たんだろうな」
「京都でするべき事を終えたからだろう、玲奈。それぐらいはわかる」
「ですけれど〜京都でするべきことを終えたなら〜普通に〜復活を宣言しても〜いいのでは〜」
「そう簡単にいけばいいんだけどね、静さん。
　今の時代、合戦に勝ったからって、日本の支配者になれるわけじゃないんだよ」
「そうですね。戦に勝てばよいのなら、平安の義仲殿が、すでに日本の王になっていたでしょう。
　支配者になるには、力と名分の双方が備わらなければならないのです」
「観月様。ですが、今はたとえ朝廷を押さえても、名分が備わるわけではありませんよ」
「それ、なんだよね。廉也。
　義仲殿が復活したのならともかく、長野先生が一緒なんだから
　天下取りといっても、本当に日本が支配できるようなやり方をすると思うんだ。
　闇雲に妖魔を湧かせたりしたって、日本の支配者になれるわけじゃないよ」
「…じゃあ、九羅香だったら、どうするんだ？」
「べーんーけーいー。そんなのわたしにわかるわけないじゃないか」
「お姉さまは、戦の名人でも、政治関係は子供同然だものね」
「九羅香様には、私心がないのです」
「なさ過ぎるのも、べつな意味で問題なのだが」
「だからこそ〜私たちが〜ついているのでは〜ないでしょうか〜」
「みんな、なに深刻な顔してるの？」
「美沙様、日本を支配するために、長野先生達がどうするか？ということで
　悩んでるのです」
「そりゃやっぱり悪の秘密結社を作って怪人を送り出すんじゃない」
「それで、幼稚園バスを乗っ取ったりするんだよな」
「そうそう、水源地に洗脳薬を入れたり、放送局から洗脳電波を飛ばしたり」
「お話としては面白いが、長野先生のやることではあるまい」
「与一ってば。冗談が通じないんだから」
「冗談ではないのだぞ」
「…力で支配者になれるような混乱状態が生じれば、力で支配者になれます」
「観月ちゃん。混乱状態っていうけど、今の日本は平安末期とは違うよ。
　藤原道長全盛期よりも安定してそうなのに、とても力で支配者になれる混乱なんて無理じゃない」
「弁慶様。賢い木こりのお話はご存じですか？」
「賢い木こりって？」
「賢い木こりは、木の枝をどこに隠すか？」
「そりゃ、森の中」
「では、森がなかったらどうでしょう」
「それは…森を探すんじゃ？」
「森がなければ〜森を〜作ればいいんですよ〜」
「つまり…混乱状態を作り出す？」
「ですけれど〜混乱状態といっても〜今の時代には〜ものすごく強力な軍隊がありますし〜」
「沖縄では、教経や頼朝様に、さんざんにやられていましたが」
「言われてみれば、そうだね。
　…本当に神機を持っていて、その力を最大限に使えるなら」
「九羅香。そんな力が使えたところで、破壊者にはなれても、支配者にはなれないよ。
　大切なのは、逆らう者を滅ぼす事じゃなくて、みんなを心服させることだろ」
「おじいさまがはまった落とし穴ですね。ですが
　もし、自分で火をつけて、それを消して見せたら？」
「マッチポンプ〜ですね〜」
「そう、それです」
「観月様。ですが、一体どうやって？」
「………それがわかればいいのですが」
「結局、東京で人捜しをするしかないのかな」
「警察に捜索願いを出してるんだし、東京に来れば
　あるいは誰か見つけてくれるかもしれないよ」
「うん、そうだね」

 

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残念ながら、話はそう簡単には進まない。
ところが、全然無関係な方向から、とんでもない情報が入ってきた。

 

そう、ここは購買部。いつものようにみあが店番をしている。

 

「ときにみあ。どないしてん、顔色わるいで」
「…あ、あの……みねあさん……その……べつに……あの……」
「急に全部言おうとしても無理や。ちょっとずつしゃべり。
　全部聞いてから統合して判断するさかい」
「…あ、はい……なんというか……その……あの……
　ええと……地脈が……あります…よね……」
「・・・・」

「……あの……それで……その……あの…ええと…
　簡単…に……言うと…………なにか……その……
　とんでもない……天変地異が……起きる…ような…予感が……します……」
「・・・・天変地異いうても、いろいろあるで。
　一体どんな天変地異やいうて、みあはおもうん？」
「……あの……それはその……私にも……わからない…いいえ……
　……その……あの……なにか…妙な…イメージが……するんですけど……」
「・・・・」
「あの…みねあさん……」
「聞いてるで。妙な予断をいれたないから、黙ってるんよ」
「…は……はい……その……その……イメージ……なんですけど……
　………何か……軍人みたいな…格好して……平将門の…復活とか…
　……言ってる……雰囲気が……あるんです…が……
　……すいません……なんにも……ならない……ですよね……
　…こういう……話…を……しても……」
「・・・・みあ、これで全部なんか？」
「あ、はい……大体……いえ……全部……です……」
「…平将門なあ…なんか、昔の映画みたいな話やな…
　・・・・！せや、関東大震災の再来があった！」
「…あの……みねあ……さん……それは……どういう…こと……なんで…しょう…」
「うかつやったなあ。関東大震災んときは、戒厳令が出てるやないか。
　みあ、すまんけど、そこの校内電話で、生徒会室に連絡とってくれへんか？
　地震が起こせそうな地脈関係なら、観月はんに見つけられるやろ。
　そこへ来るっちゅう確信はあらへんけど、これをやられたら打つ手ないわ」
「…あ……はい……とりあえず…連絡…とり…ます………」