「んー、気持ちいい」
「九羅香様、まだ現代にもこのようなところが残っていたのですね」
「紅葉本当にいいの？こんなところで合宿なんかして」
「ええ、予算の方は大丈夫です」
「いや、予算じゃなくて、安全の方」
「それも大丈夫です。ちゃんと地元の消防団の方もここなら
　たとえ一時間当たり１００mmの大雨があっても決して流されることはないと
　おっしゃってました」
「確かに、この高台なら流される心配はなさそうだな」
「近くに川もあるのだな」
「河原で何かやってる人がありますよ」
「どうやら、みねあ様たちのようですね。廉也」
「・・・・なんであんなところで店なんて構えるんだろう」
「ええとなになに？『川の家』だって」
「最初は海に行くって話だったから、そういう方向で準備したのだな」
「あのみねあに限ってそんなミスしないだろ」
「・・・・みたいだ。本当に川遊びに必要な物をいろいろ用意してる」
「弁慶、だけど、今回も練習が主なんだからね。ほら、設営が終わったら
　みんなを集合させる」
「九羅香～その前に設営を手伝ってよ。まず夜寝るところを作らないと大変だよ」
「そだね」

説明しよう。
夏休み、九羅香達は夏合宿のために、人里離れた甲斐の山中を訪れているのだ。
キャンプ場を丸ごと一つ借り切って、すべての合宿場所合同で野宿生活である。
部活をやっていれば無料でこれるとあって、幽霊部員もここぞとばかりに
便乗してこの合宿に参加してきていた。おかげで各部とも、一時的にせよ人数が増えて
合宿様々である。

「山だよ、諸君」
「会長、山がどうしたんですか？」
「山、森、川・・・・わがサバイバル同好会にとって絶好のコンディションではないか」
「ええ、そうですね会長。ここでなら思う存分活動できます」
「そうだろうとも。さあ、今度こそ雪辱戦だ」
「雪辱戦って・・・また剣道部と弓道部と忍者同好会と・・」
「いやいやいやいや、そうではない。
　我々の新入会員の猿渡さゆりくん。作戦を説明してくれたまえ」
「はい、会長殿。
　みなさん、今回の作戦は、前回煮え湯を飲まされた購買部への逆襲を目的としています」
「あの、さゆりさん？」
「なんですか？」
「逆襲って、向こうは襲ってきてませんが」
「向こうがこちらを敵視している以上、先手必勝です」
「うむ、すばらしいぞ猿渡君。攻撃は最大の防御だ。続けたまえ」
「ですけど、毎回毎回向こうの戦力は圧倒的じゃありませんか。
　まるで実戦経験を積んでるような落ち着きぶりです」
「その通りだ。よく気がついた。だが、それについても抜かりはない。
　猿渡君、説明を」
「はい、会長殿。…ですから、みなさんにも、実戦をくぐってもらいます」
「はい？」
「ふっふっふ。何も恐れることはない。この新型エアガンと、スタンナイフを使っての
　同好会活動を今日明日行ってもらおうというわけだ。
　猿渡君の手ほどきを受ければ、最終日には私同様の実力を身につけてることは間違いないぞ」
「会長と同等ですか～」
「・・・よろしい。猿渡君。審判を頼む。
　残りの会員全員と、私一人とで、まずは軽くウォーミングアップと行こうではないか」
「ええ、いいですよ。どれぐらい強化されてるか、みたいですから」

【シナリオ０９】甲斐の豹